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涙腺

私の涙腺は強い


昔から強かったわけではない

鍛えられたのだ


まだ子どものころ

家族で乗っていた車内で

運転していた父親と

助手席に座っていた母親が

夫婦喧嘩をはじめ

怒った父親が物凄いスピードで

堤防の壁をカーアクションさながらに車を走らせた


両親が喧嘩を始めた悲しさ

そんな車に乗っている恐怖

子どもの自分にはどうすることもできない状況で

涙がこぼれた


そんな私に母親は言ったんだ

「あんた、何泣いとんの!」


それ以来

この人の前では絶対泣かない

と心に決めた


大人になり恋をして

のちに伴侶となり

他人となった人と喧嘩した時

涙が出た


そして彼は言った

「泣くのはズルい。卑怯だ!」


それ以来

この人の前では泣かない

と決心した


そして

滅多なことでは泣かなくなった

泣けなくなった


泣かなきゃいけない状況でも

泣けなくなってしまった


そんな私にも最近

転機が訪れ

ある映画で泣いて

その映画の主題歌を聴いただけで

ほろっとするようになった


そして今朝

出勤のお供に読んでいる

星野源のエッセイ本で

満員の通勤電車の中

涙が零れそうになるのを

我慢しなきゃいけない状況になった


それは

「いのちの車窓から」というエッセイ本の中にある

『武道館とおじさん』という

読めばわかるが

恐らくどこにも泣ける要素のない

見た目100%日本人なのに「ボンジュール」と言って出迎える

店員さんのいる中華料理屋さんの話なのだ


けど

このボンジュールおじさんと客である源さんとのやり取りに

込み上げてくる熱いものを抑えられなかった


きっと

何気ない会話に感じる気づかいや優しさ

今のこの世の中に必要なものが詰まっていて

私の凝り固まった大事な部分に触れたのだと思う


人肌を感じたのだと思う


涙を流すことは

自身を癒す効果もあるそうだ


ありがとう

源さんとボンジュールおじさん

私の涙腺を柔らかくしてくれて

癒してくれて


こんなところで伝えても

本人には一ミリも届かないだろうけど

いつか届け!

と祈りを込めて書きます


本当にありがとう


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