殺して。No.1

時間は進んでいく。僕はその中で身動きが取れない。そこで声高に叫ぶ夢。眼だけが見えるのが幸か不幸か。(2021/01/11〜)

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1

会えない時間を呪った。時空と法則が一致した時、時間は距離になる。思考は既にそれだけの価値を持つ。私達は何かが離れているんだろうな。そう強く痛感した。ここには専ら、なんの手段も無い。目的が達成される保証もない。世界は道具に満ちているが、ここには何も無い。全てが不確かな事だけが、確実なんだ。

距離が産むのは時間だから、距離がある以上は、時間があるという事である。終わらせたいと願っていた。それはきっと諦めで、応援で、エゴを捨てた、きっと良い精神だった。苦しいなんて、結局は、見つけるもの。あなたを尊重したから、得られるもの。もっと自由に生きなよと、神様の声が聞こえる。でもそれって、神様だけでしょ?私たちにはそんな権利というか、可能性がない。週末の近づく足跡、もう消えてしまってもいいよねってくちづけ。圧から逃れて速度でぐちゃぐちゃな朝。ねぇ、最高の苦しさで終焉を迎えれば、もう苦しくなくなるって、そんなの絶対嘘だよ。神の声が聞こえる。神だって言葉が下手なのね。私は笑う。永久が怖いのかな?永久が怖いのかな?

ううん。私達の生だって、永久よ。

私はいくら神と対話したのだろう。時計を見ると、3時間経っていた。ほんの僅かのやり取りに3時間。非常に病的だが、確実に死に近づいた。そう。こういうのが病的。死に確実に向かいながら、死を迎えるのを求めてはいけないっていう矛盾。医学だって、反神様の壮大な自我のひとつ。概念も人も変わらない。私はこうやって、死に近づいて行った。触れた感触を味わえない死へ。ゾンビの皮膚の謎のように。

生を体験したいだなんて、まるで哲学的に死んでいるだけで、私たちは日頃、生きているとは何か?と、本気でそれを満たそうとしている。しかしもしかしたら死んでいるかもしれない。宇宙がある自我の所有物なら、その自我と交点を持たない私達は、死人だ。

死人だ死人だ死人だ死人だ。

死人であることを認めるしかない。生への憧憬を捨てる。しかし、宇宙に存在している一つの肉体を持つ以上、私達は宇宙の一部で、私達は、私達自身を除く世界しか見られないのだから、恐れずに、他人に形容されるしかない。

とても大切なことなのだが、生きているという感覚には、善悪なんて倫理観はあまり関係ない。あぁ故に、生の承認に犯罪や堕落があるのか。

自身の探求とは無価値だと思える。

私は、布団を被る。暗闇を作る。頭のどこかに他人を探る。ええ、声が聞こえる限り、それは他人かもしれません。あるいは。

私達は形容した見返りに形容される事でしか暮らしていない。

あなたが宇宙そのものならまだしもそうでないならあなたなんて虚構なの。私はそれが酷く悔しくて。

永遠に虚構で法則に縛られる一つの粒子。

何もかもが怖くて、何もかもが怖くない。それは感情と理解の折衝。

だからそれらを操ろうと、私達は必死になる。でもね。神様が言う。滑稽だね、それは。

もう雨は降らない事を伝える最後の雨。それを見て止まないうちに自殺をするような悪意。

一つ一つ、世界の常識を殺すように、どんどん偽物になっていく、最初から偽物の私。夕闇の中、孵化する蝶のように舞う。求める蜜は、異性だった。

「ねえ、君。ちょっといいかな。」

「なんですの?」

「ええ、怪しい人には注意してください。こんな時間に、どうしたのですか?」

「そうですね。あなたみたいな人に興味がありました。」

相手方は、口をあんぐり開けた猿だろうと。私もあんぐり開けたら去るだろうと。

「面白いですね。あなた。口が空いてますよ。」と、相手。

「あなたこそ。」

しばらく私はその人と消えゆく灯りを気にもとめず、探検していた。

「僕達には暗黙の了解があると思うのだけれど、それが違うと不安だから一応聞く。ここ行きたくない?」

「ええ、どうでもいいのです。私は死んでますから。でも、あなたと同じようなことをきっと考えていました。」

虫ならば 光に集まるのに 僕達は光を無視した。ねえ、闇の中に光を探す事を、今更しないよね?そんなに愚かじゃないよね?

僕らは狂った光を求めているわけじゃないよ。闇が好きなわけでも無い。もっとこう自然に人間なんだよね。

「ところでここはどんなところなんですの?」と、私は聞いた。

ええ、ここは、闇の中の光。恵まれない誰かが作った下らない世界。私には、何かを飲み込んだような音が聞こえた。

「ホテルだよ。大切な人と将来について考えたりする。」

「そう、ではあなたは出ていって頂けます?」

「どうしてだい?」

「集中したいんです。世界の全てを忘れてしまうくらい。」

「分かった。帰る。」

男は帰っていき、私は3つ目の自宅ができたような気がした。自宅では生きている気がする。自宅では生きている気がする。

ぼんやりと、窓の外を眺めていた。点滅するライトが意味深く聞こえた。きっとそこには新しい死があったと思う。

2

私は普段こんな調子だから、他人から中々理解されない。大切な物を失っているのか、新しい何かを産んでいるのか、自分だけでは何も分からなかった。そしてそれは、諦めて全てを自分のペースで語る根拠でもあった。一度何かを文字にしてみた時、それはとても明白になった。

ふと、深く考えてしまった"私"から、抜け出せる瞬間がある。今もきっと、そんな瞬間で私は私の思考の多くを忘れてしまう。まるで二重人格のようだが、誰もそれは知らないし、私には小さな事しか出来なかったから、何も見つかりはしなかった。

友達と約束のあった土曜日、電車に乗って、中心部のカフェに向かった。私の住む都市は、とても複雑だった。網目状の都市なのだけど、部分的に道が無い。広い家と狭い家が混在していて、広い家は、道路を挟むように立っているからである。カフェまでの道のりは、難しくない。駅前から目印の建物へたどり着いたら、西に向かって歩いて、それぞれ最初の通りを3度右へ曲がるだけである。私が辿り着くと、綺麗な花柄のワンピースを着た、友達が、手を振っていた。

「会いたかった〜。」

「さ、入ろ!」

席について、私たちは同じコーヒーを頼んだ。

「同じコーヒーとかウケる。」

「今日はこれが飲みたくて。」

「ところで、私たちって何日ぶりに会ってる?」

「しばらくぶりだね〜。2ヶ月くらいかな?」

「その間どうしてた?」

「私は家に居ることが多かったかも。てか、孤独だったからかなんかちょっと病んでおかしくなってた。」

「大丈夫? え、どんな感じに?」

「難しい事を考えて、少し背伸びする感じ。」

「あ〜分かる。夜とかに陥るやつ!」

「そうかも!」

「あたしはね〜、マッチングアプリをしてた!」

そして友達は長々と話をしてくれた。私は適当に聞いていたし、その内容は覚えていない。

「あ、服買いに行こ!ちょっと選んでもらいたくて。」と、友達。

「いいよ〜。でも、あんまり長引かないようにね〜。」

その日の私たちはきっと蛍の如くいつまでも水辺に居た。私たちはいつの間にか、光になっていた。

3

世界が鮮明に見えることはむしろ求めている事だった。でもそれは突き詰めれば私の主観であった。でもどうせみんな偽物を見ている。私は少し病気なのだと思う。

病人に才能が無いか?と言うと、それはまた別だ。色んな世界がある。私は私が見る世界が、誰かに教えてもらう世界より美しいと感じ、その高揚感は中々捨てられない。とても無意味な事をしている。もしかしたら、どんどん病んでいく。

さぁ、答えは最後に分かる。

他者には分かりもしなくて主観にとってあまりに自明すぎる話であれこれ言っても意味が無い。故に、そう、故に、距離の遠い所で私は私を知る。

私は新しい自殺のやり方を覚えた。それは、誰かが教えてくれた、私の行為への死という意味付けである。最も、生きながら自然に行っている私の行為はむしろ生きている証なのだけれど。 

可哀想な私、誰も殺してくれない。

身体(しんたい)はあまりに具体的すぎる。具体的すぎて、それが穢される重みには耐えられない。

多分きっと、そういう事。だから、独特な意味付けさえあれば良いんだ。"可愛い"とかじゃなく、人間違えでした!とか。(続く)

❋❋❋

文章の連なりは、主人公の個性です。心は抽象的で難しく、国語のテストのように読み解くと間違えます。作者も、主人公のように色んな事が曖昧なまま書いてます。それも良し。

このお話は続ける予定なので、良かったら楽しみに待っていてください。

皆様、良き生を!

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