#5 旅路の果てに


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そこは、まるで夢のような光景だった。
透き通るような碧い海が一面に広がって、水平線の彼方に白い波が浮き立っているのが見える。
空は海より濃い青で、突然視界の中を一羽の鳥が音も立てずに右から左に遮っていく。
周りには僕と奥さん以外、誰も居ない。
しばらくして、近所のおっちゃんが頼んでおいたビールを持って走って来た。
僕たちが海の家(といっても簡易テント一つあるだけ)で暇そうにしていたおっちゃんにビールを頼んだのだが、どうやら家の冷蔵庫まで取りに行っていたらしい。
ビールと引き換えに千円札を手渡すと、今度はお釣りを取りに行くと言って、また家の方に戻っていく。
ただ静かで優しい時間だけが流れていく。そして、誰も急いでいない。

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