‥こんな話を聞いたよ。④
これは前回の、‥こんな話を聞いたよ。③の続きです。気になる方は前回もお読み頂けますと幸いです。
いや、しないっスよ。ようは作業室の照明消さなけれりゃ何も起きないんスよね?なら続けます。
お化けが怖いなんて言ってたら、病院で働けないっスよ!
そう言いながらマキトはコーヒーを飲んでいる。
私は感心しながら聞いてみた。マキトってさぁ、お化けとか幽霊とか怖くないの?
怖くないって言ったらウソっスね。と、マキト。
ただ、昔住んでたアパート、結構色々あったんで少しだけ慣れてる?みたいな感じっスかね。
この時、私の目はキラキラしていたに違いない。
私は平静を装いながら聞いてみた。
それってアパートにお化けとか出たって事?
えぇ、多分そういう事っスね。今思えば。
熊田さん、そういう話好きなんスか?と逆に聞かれる。
ちょっとは興味あるなぁ。どんな体験したの?
マキトはスーツの胸ポケットから煙草を取り出し、幾つかありますけど、どーしょっかな?と言いながら火をつけ、煙草を燻らせた。
とりあえず思い出したのから、話しますね。
マキトのアパートその1
マキトが高校を卒業して、初めて就職したのが倉庫会社だった。働き始めたら、一人暮らしをしたいと思っていたマキト、会社が用意してくれた寮代わりのアパートに入る事にした。
アパートは築30年、古い二階建てだったが、光熱費・上下水道代を自己負担すれば、家賃は出してくれるという。かなり良い条件だと思い、住む事にした。
マキトからすれば、自炊はしないし、夜は寝に帰るだけなので、構わない。1kの6畳間に満足していた。なによりも会社から徒歩5分。出社時間ギリギリまで寝ていられるのが最高だった。
仕事にも慣れてきた頃、繁忙期になりアパートへ帰る時間もかなり遅くなった。マキトの部屋はベッドとテレビ、冷蔵庫があるだけで、クローゼットは備え付け。
気絶する様にベッドに倒れ込みそのまま寝てしまった。ふと、夜中に目が覚めた。とりあえずシャワーを浴びて着替えようと思い、ふとテレビに目をやった。つけた覚えが無いのに、入力切り替え画面になっている。
ぼんやりとテレビを眺めていると、黒い画面がおかしい。画面中央に楕円形の物が浮かび上がってきた。少しずつではあるが、画面から浮き出してくる、どうやら人の「顔」らしい。男とも女とも判断がつかない。虚な目をしたお面のような「顔」。それがテレビから出てくる様にゆっくりと動いている。
浮き上がってきている「顔」を見ながら、マキトは、あぁ俺疲れてるんだと思いながらテレビのリモコンを取り、電源ボタンを押した。
電源が切れたと同時に、虚な目をした「顔」も消えた。シャワーは明日の朝浴びよう、そのまま寝てしまった。
翌日、目が覚めてから、夜中の「顔」は何だったんだろう?と考えたが、特に思い当たる事もなく
とりあえずテレビには布をかけて置く事にした。
その後もアパートで普通に暮らしていたが、テレビにはずっと布をかけて置いたという。
まぁ、こんな感じっス。紫煙を吐きながらマキトは語った。
マキト!それだけなの?なんかリアクション薄くない?私は思わずツッコんだ。マキトはこともなげに、いや〜とりあえずテレビ画面見なきゃ「顔」も出て来ないだろうと思って。なんか危害を加えて来ないし、いいかなぁって事で。
‥なんか変な奴だな、マキト。アパートのエピソードはまだ続きますが、今回はこれまで。
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