気配

相方の魚座君の話。

魚座君のが実家に私物を取りに帰った時の事。
自分の部屋に向かう途中、ふっと男物の香水の匂いがした。

あ、親父の付けてたオーデコロンの匂い‥

魚座君はそう感じた。彼のお父さんは彼が20代で鬼籍に入っている。生前のお父さんの職業はアパレル関係で、家にいる時もきちんとした格好をしていたそうです。髪型はオールバックで、オーデコロンをつけていたとの事。

魚座君が自室でクローゼットの中にある私物を探していると背後に気配を感じる。同時に、オーデコロンの香りもする。

あ、いま親父が後ろにいるな‥そんな事を考えながら私物を探した。

お目当ての物を見つけた魚座君、ふと窓の外を見ると誰かの頭が見える‥後頭部だ。しかもオールバックの髪型。魚座君がじっと見つめると‥後頭部は空中にスッと消えていった。

あ、親父！今度は庭にいるのか。俺の事が気になるのか。

魚座君はお父さん子で、生前はかなり可愛がってもらったそうです。どこに行くにもお父さんの後を追いかけていた魚座君。彼が医療関係に進むと決めた時も迷わず魚座君の背中を押してくれたそうです。

で、窓の外から魚座君の事見てたのお父さん？
と私は聞いた。

魚座君はそれがさ、ちょっとだけ可笑しいと言うかウケる事があって、

俺の身長より高い位置から俺のこと見下ろしていたわけ。

俺の身長181センチなんだけど、親父は168センチなんだよ。普通は俺の方が見下ろす形になるでしょ？

親父のやつ、見栄張って高い所から俺の事見てたんだなぁって。高校生の時にもう俺は親父の背を追い越してたからさ。身長に関しては親父、悔しがってたよ。

と笑いながら話してくれた。

今でも実家に帰ると、お父さんの気配とオーデコロンの香りが少しするらしい。