見出し画像

天井の景色

お盆も今日で終わりですね。

そう言えばこんな話を聞いたのを思い出したので
書き留めておこうと思います。

私が高校生ぐらいに同級生から聞いた話。

Nちゃんの母方の祖父母は東北地方に住んでいる。

毎年お盆の時期には泊まりに行っていた。
祖父母の家でいつも寝るのはかつて母が独身の頃に使っていた部屋。

蒸し暑い夜の事だったと言う。

なかなか寝付けずにいたNちゃんは何となくぼんやりと常夜灯が照らす、無垢の杉板の天井を見つめていた。

祖父母の家は築60年は経過している古い家屋。
補修はしているが所々雨漏りのシミがみえる。

Nちゃんは、天井のシミを見ながら

あ、これは横を向いている猫だとか
これは正面を向いて伏せている犬に見えるとか想像しながら蒸し暑い夜の暇つぶしをしていた。

やがてそれも飽きてきて、ウトウトとしてきた頃

天井全体の雰囲気が変わった。

天井が砂漠に見える。 それは熱風が吹いているように見える砂漠の景色。風に巻き上げられるように砂が宙に舞っている。

え?と思いながらNちゃんは天井に現れた砂漠を見つめていた。

音は聞こえないはずなのに砂漠の強い風がビュービュー吹いているのを感じる。やがてその砂漠は嵐になってきた。

その砂嵐の吹く砂漠の中に人影が見えてきた。

大きさにして鉛筆ぐらいの人影。その人影がどんどん増えてきた。どうやらラクダも連れているようだ。

まるで砂漠のキャラバン(隊商)だ。

ラクダに沢山の荷物を乗せて砂嵐の中を進む隊商。風が強くなかなか先に進めないようだった。

天井にプロジェクターで映された動画の様な風景を暫く見つめていたNちゃん。

いつのまにか眠っていた。

気づくと朝になっていた。天井はいつもと変わらない雨漏りのシミがある無垢の杉板だった。

Nちゃんは両親や祖父母にその話をしたが、Nちゃんが寝ぼけただけだろ、と笑われてしまった。

天井に砂漠を見たのはそれ一回切りで、Nちゃんは祖父母の家に何度も泊まりに行ったが、その風景を見ることはもうなかった。


Nちゃんは私に、あれは夢なんかじゃなかった
確かに天井は砂漠の風景を映してしたんだよ!
と言っていた。

そして部屋の隅に何故か砂埃が薄っすらと積もっていたそうだ。

‥それが砂漠の砂なのかは不明。

Nちゃんの祖父母の家は砂地のある海沿いではなく、田んぼに囲まれた緑あふれる山間の村だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?