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昔々‥。

以前、土星の象徴として「蜘蛛」を出しました。
その時に女神アテナとアラクネの機織り対決に
少しふれまして、今回は昔話を書こうと思います。

暫しの間、お眼汚しにお付き合い頂きたく思います。

昔々、オリンポスの神々が人間と共に地上で暮らしていた頃のお話です。

アラクネという、とても機織りの上手な娘がおりました。彼女の織物はとても素晴らしく、またその機織りの所作も美しく、森や泉のニンフ(精霊)たちも毎日、機織りを観にくるほどでした。

人々はアラクネの機織りの腕前を、「まるで女神アテナ様の弟子のようだ」と褒め称えます。

しかし、アラクネはその評判を嬉しく思ってはいませんでした。そして、つい口に出してしまうのです。

「アタシはアテナの弟子じゃない!アタシの方が機織りの腕前は上。絶対負けるもんですか!」

その言葉は女神アテナに届いてしまいます。怒りを覚えたアテナでしたが、まずは老婆に変身し、
アラクネと会う事にします。

いつもと同じように機織りをしていたアラクネ。
周りには大勢のニンフ達。気がつくと、戸口に一人の老婆が立っている事に気が付きます。

老婆はアラクネに話しかけます。「娘さん、あなたがアラクネかね?機織りが大層上手だそうだね。」
アラクネは答えます。「えぇお婆さん。アタシがアラクネ。世界一の機織り名人よ!女神アテナだって、アタシの織物を見たらその素晴らしさに驚くでしょうね!アラクネの方が上手いって!」

老婆は忠告します。「娘さん、アテナ様に対してそんな口を聞くもんじゃ無い。年寄りの忠告は聞くものだよ。」そして続けます。「女神アテナ様は大変慈悲深いお方。すぐ神殿に向かい、自分の非礼をお詫びすれば、きっと許して下さる。過ちを許して下さる。」

アラクネは老婆の忠告に腹を立て、口走ります。
「ホントの事を言って何が悪いの?お婆さん。たとえアテナが目の前に現れたって、アタシは一歩も引かない。機織り勝負してあげるわ!」「だって勝つのはアタシだもの!」

その時、老婆の口調が変わり、こう言います。
「娘よ、アテナはここにいます」変身を解き、
女神の姿に戻ったアテナを見て、ニンフ達は驚き、平伏します。アラクネも一瞬どきっとしましたが、平伏する事なく、アテナを睨み返します。

アテナは言います。「では、娘よ、ワタシと機織り勝負を致しましょう。」
アラクネは言い返します。「望むところよ!どっちの機織りの腕が上か、見せつけてやるわ!」

かくして女神アテナと人の子アラクネ、互いの機織りの腕を競い、機織りを始まりました。
周りにいるニンフ達も勝利の行方を見守っています。

機織りの女神アテナは丁寧に、しかし物凄い速さで機織りを始めます。それと同じ速さでアラクネも機織りをしています。タペストリーが完成したのは同じ速さでした。

アテナが織り上げたタペストリーのテーマは
海神ポセイドンと女神アテナの対決を描いた物でした。見ていたニンフ達もその出来栄えに圧倒されています。

対して、アラクネが選んだテーマは大神ゼウスが様々な美女と浮気をする姿でした。傲慢な娘は、かなり挑発的なタペストリーを織りました。アラクネのタペストリーは、本人が言うだけの事もあり、仕上がりはとでも素晴らしいものでした。

しかし、場の空気が凍ります。アテナはアラクネのタペストリーを見て、激怒します。そして出来上がったアラクネのタペストリーを八裂きにし、

「娘よ。己が犯した罪、しかとその心に刻め。」
と言いながらアラクネに触れました。

アテナに触れられたアラクネは、己の傲慢さに気付き、そしてそれに耐えきれず、首を吊ってしまいます。

首を吊ったアラクネを見てアテナは、「アラクネよ、お前の犯した罪、子々孫々まで背負って行け。」そう言うと、トリカブトの汁をアラクネに注ぎました。見る見るうちにアラクネの髪は抜け、手足は細く長くなり、一匹の小さな蜘蛛に生まれ変わりました。

こうしてアラクネとその子孫達は毎日ずっと糸を紡ぎ、巣を織り続けるようになったとの事です。

ご拝読ありがとうございました🕸🕷🕸

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