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音楽療法を行うNPOの方々とのSTO活動について振り返り

この記事はCivicTech & GovTech Advent Calendar 2021 の19日目の記事です。

僕がCode for JapanのSTO(ソーシャルテクノロジーオフィサー)として、NPOの方々と1年間伴走した内容について記載したいと思います。

STOとは?

Social Technology Officer(STO)は、NPO(非営利組織)版のChief Technology Officer(CTO:最高技術責任者)です。
NPOの方々と伴走しながら、技術的な箇所の支援をもってNPOの活動に貢献していく人々のことを言います。
詳しくはこちらをご覧ください!

今回伴走させていただいたNPOさん

心のおしゃべり音楽工房さん(略称:KooK)です。
KooKさんは障がい者や乳幼児のために音楽療法を行うNPO法人でして、2021年11月より認定NPO法人となりました。
詳しくは下記の公式Webページをご覧ください。

2020年12月〜2021年3月

伴走させていただくことになった後最初に取り組んだことは、「音楽療法ライブのオンライン配信をいかにして行うか」という課題です。
KooKでは基本的に対面での音楽療法ライブを行なってきましたが、コロナの影響で対面でのライブが難しくなってしまった、という課題をお持ちでした。
そこで、音楽療法ライブをいかにしてオンラインで行うことができるかを考えていくことになりました。

今はYouTubeLiveや他のサービスなどでライブ配信を手軽に行うことができ、ライブ配信の知見自体は調べれば色々と出てきます。
ただ、KooKさんとオンライン音楽療法ライブを進める上で一番のハードルとなったのは、「いかにして演奏する側・ライブを聴く側でリアルタイムなコミュニケーションを行えるか」という点でした。

この記事をご覧になっている皆様は、音楽療法というものを見たこと、または受けたことがありますでしょうか。
僕は音楽自体好きではありますが、音楽療法については全然知りませんでした。

こちらのYouTube動画はKooKさんが行なっている音楽療法ライブの様子や、取り組まれていることのインタビューが載った動画です。ご覧になっていただければ、音楽療法とはどういうものなのか雰囲気が伝わるかもしれません。

この動画の中で音楽療法の様子が映されていますが、参加者の様子や表情を細かくチェックしながら、時には一緒に歌ったり楽器を弾いてもらいながら、その時々の参加者の感情の機微を見ます。
参加者の様子に応じてその場の対応方法を変える必要があるため、オンライン会議など以上にリアルに近いコミュニケーションのテンポが必要となります。

また単純に、演奏している音楽をラグなく参加者に聴いてもらう、また参加者が歌ったり演奏したりした音楽を演奏者であるKooKさんたちが聴いて次の演奏に生かす、といった音楽ライブとしてのクオリティを上げる必要があったという側面ももちろんあります。

上記のような背景があるため音楽療法ライブはリアルな場で対面で行われることが一番ベストな体験なのですが、クオリティをキープしつつどれだけオンライン環境で実行できるかというところに取り組むこととなりました。
ただ、技術的なところは少しずつ検討していこうということになり、最初はYouTubeLiveを用いたライブの配信を行いました。

演奏機材や配信機材の構成の整理を行い、何回かリハを重ねて本番に臨みまして、無事に配信を行うことができました。

2021年4月〜2021年6月

前回YouTubeLive配信の形式で音楽療法ライブを行いましたが、いかに双方向のコミュニケーションを成り立たせることができるかを本格的に検討していきました。
さまざまなオンライン会議システムやライブ配信のシステムを調査し、最もラグがないものは何か、などの調査から始めました。

ただ結論から言いますと、音楽ライブにて双方向のコミュニケーションをほぼラグなく成り立たせるようなサービスは現状なく、Zoomのスペックでいかにオンラインでの音楽療法ライブを行えるかという方向性で進めることとなりました。
ラグの無さで言いますとYAMAHAから出されているSYNCROOMが一番でしたが、参加側でラグのない環境を作るには、有線LANやオーディオインターフェースなど周辺機器が必要となり、それらを用意するハードルの高さから、最終的な導入は断念しています。

Zoomで行う場合、どうしても演奏側・参加側のやりとりに数秒のラグは発生してしまうため、ラグを想定した音楽療法プログラムを組むこととなりました。例えば、

  • 数秒反応が遅れても大丈夫なようにゆっくりめな曲を使いつつ、ゆっくり演奏する

  • 「〇〇くんこんにちは!」などのように参加者に声かけをする際、反応があるまで少し待つ

  • ある程度参加者とのコミュニケーションが少ない、演奏主体の演目を取り入れる

などを行いながら、オンラインでの音楽療法ライブ体験が成り立つかどうか、ライブの回数を重ねながら、ある意味実験的に進めました。

また、「YouTube配信のみに参加する人たち」「Zoomの双方向コミュニケーションライブに参加する人たち」「オフラインな場で参加する人たち」の受講者セグメントを分け、それぞれどのような価値提供を行うかの整理もこの時期から行なっていきました。

2021年7月〜2021年9月

YouTube配信単体、Zoomを使ったライブ、オフラインでの対面ライブそれぞれを行いましたが、全てをを同時に行う取り組みをこの時期から行い、配信機材構成を見直したり、何回かリハを重ねながら方法を確立していきました。
オンライン向けとオフライン向け双方の参加者が想定されるため、両方の参加者が満足する演目はどのようなものになるかという点も探っていく必要があります。
2021年12月現在も、良いやり方を模索しているところです。

またこの頃からKooKさんを「認定NPO法人」とすべく、自治体への申請も開始しました。(KooKさんとしてはもっと前から動かれていますが、伴走としてはこの頃からという意味です。)

個人的にこのあたりの知見が全くなくあまり貢献できてなかったというのが正直なところです。申請自体も難航し、少し辛い時期となりました。

2021年10月〜現在

KooKさんのご尽力の甲斐あって、先日認定NPO法人として東京都より認定を受けることができました。

認定後にどういった取り組みを行なっていくべきか現在も議論を続けており、引き続き進めてまいります。

そんな中KooKは、Syncableというクラウドファンディングサイトにて継続支援を行なっていただける方々の募集を開始しました。

https://syncable.biz/campaign/2133/

音楽と社会支援に興味がある人かつ、この記事を読んで音楽療法に興味を持った人、ぜひご支援いただけるとありがたいです。

以上、僕が1年間STO活動を行なった内容の振り返りでした。
ここまで読んでいただきありがとうございました。


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