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第8回トレニックワールド100mile & 100km in 彩の国

画像引用元:トレニックワールド100mile & 100km in 彩の国 公式Webページ

去る2023年5月20日(土)~21日(日)に、埼玉県の越生町・ときがわ町・飯能市ほか一帯を舞台にトレイルランニングレースが開催された。

もう7月になってしまった。完全に書き忘れていたのだが完走Tシャツが届いたので、薄れた記憶を辿って備忘録としてレポートを残しておこうと思う。

彩の国とは

このレースは、トレイルランナーの間では通称「彩の国」と呼ばれ、100mile(160km)部門と100km部門の2つが用意されている。

100mile部門は、第1回の完走者が0人という伝説を残していることから国内最難関レースのひとつに挙げられ、コースプロファイルの厳しさだけでなく、関門時間の絶妙な短さから、完走者は「サイラー」と呼ばれ、羨望の眼差しを送られる。完走者は「サイラー」の文字が刻まれたTシャツを着ることを許される絶対的強者なのである。

かくいう私は、100mileではなく、100km部門に2022年より出走し、続けて2度無事に完走を果たすことができた。ちなみに、100km部門の完走者は「サイ100」と呼ばれる。100kmクラスのレースとしては厳しいコースではあるが、制限時間に余裕があるので完走はそれほど難しくはない。

コースは、ニューサンピア埼玉おごせをスタート・ゴールとし、Northと呼ばれる北側のコース約55kmを1周、South1と呼ばれる南側のコース約54kmを1周。これらが100mile・100kmの共通コースとなり、100mile部門のみ更にSouth1と一部ルートが異なるSouth2の約54kmを1周する。

試走

彩の国に向けた練習はこれまでのレース前の練習よりもハードだった。100mile部門完走を目指す友人の試走に同行させてもらい、試走を重ねたのだ。行く度に、NorthもしくはSouthを1周する。確か5回くらい行った。1回目は一緒に走ったが、ペースの速い友人たちを度々待たせてしまうので、1本早い電車で行き、先にスタートして出来るだけ逃げて、追い越された後もなるべく離されないようにがんばるという練習だった。

練習を普段あまりしない私にしてはよくやった。これは大幅に前回の記録を更新できるに違いない、と期待していたのだが、蓋を開けてみると20分しか縮まらなかった。あれ?

おすすめポイント

私はこのレースに毎年参加したいと考えている。理由は以下のとおりだ。理由がありすぎる。

  • 近い(JR八高線/東武越生線 越生駅)
    100km部門であれば9時スタートなので東京からなら宿泊なしで当日参加できる

  • 安い(100mile22,000円、100km18,000円)
    私の考える「どうでもいいこと」にはお金をかけていないアットホームな小規模運営

  • 高トレイル率(80%)
    舗装路をできるだけ走りたくない

  • 高ホスピタリティ
    他のレースよりも運営やボランティアのみなさんが「いい人」率高めな気がするのは気のせいかも

  • エイド充実
    ずっとエイドにいたくなるレベル、豪華な補給食、山でドリンクバー

  • 温泉併設
    すぐに風呂、これ天国。汚すと翌年から使えなくなる可能性大だからみんなきれいに使おう。泥はちゃんと外で落としてから脱衣所へ。

North

さて、レース中の出来事を書いておこう。ほとんど忘れてしまっているが。

いや、スタート前だ。トイレにスマホを落としてしまった。汚物への直撃は免れたものの気分は急降下だ。ケースを外し、水洗いし、あちこちに設置されていたアルコールで消毒した。コロナの残影に初めて感謝した。

気を取り直してNorthだ。

去年は雨で滑り台だらけだったが、今年はそんなことはなかった。今年のほうが気温や湿度が高かったが、毎日のようにサウナに入っている私は特に気にはならなかった。ノースは淡々と進み、これといったトラブルもなかった。

覚えているのはエイドのことばかり。

刈場坂峠エイド(かばさかとうげ)

刈場坂峠エイドでは「一口パン」を欲張ってポケットに入れて、歩きながら食べようと思っていたら忘れて手で潰してしまったり指を突っ込んでしまったりした。ハプニングだ。

堂平エイド

堂平エイドのスープパスタは塩好きの私には去年は味つけが物足りなかったことを教訓に今年は持参の塩を足し3杯ほど堪能した。満足だ。

慈光寺エイド

慈光寺エイドのいなり寿司、偶然かもしれないのだが去年ご飯がなぜかやたら固かったので今年は敬遠し、米がこの辺で食べたいので代わりにおにぎりを1個持参した。しかし、これが思いもよらぬ後悔につながる。

長い下り

あと覚えているのは、後半の長い下り、何度かハイカーや応援の人とすれ違うことがあり挨拶をすると自分のすぐ後ろにいた女性ランナーも続いて挨拶をした。その声がすばらしく自分好みであったためにこの前後関係を崩さぬよう、追い抜かれないよう、しばらく頑張って走った。我ながら気持ち悪い。そして少し足を使いすぎてしまった。反省だ。

そうこうしているうちに、1週目Northの旅55kmはあっさりと終わった。

ニューサンピア

預けておいたドロップバッグの中身を体育館で広げていると、ほかのランナーのサポーターがたくさんの準備物をズラリと並べ、ランナーの帰りを今か今かと待ちながら立ち話をしている光景が目に入った。自覚はあまりなかったがそれなりに疲れていた私は、「ずいぶん大掛かりな準備をしているようだが、100マイル組は2時間も早くスタートしているのにまだ来ていないようじゃあ100マイルは到底完走できないだろうね」などと思いながらカップラーメンをすすっていた。しばらく聞き耳を立てていると自分の間違いに気づき恥ずかしくなった。彼らは国内屈指のトップ選手である小原選手のサポーターたちであった。もう2周目から戻って来るのを待っているのだ。次元が違いすぎるね、テヘ。

South

さて、気を取り直して2周目Southへ出発だ。まずはトレイルまでしばらくロードを走るのだが、途中きれいな公衆トイレの横を通る。ここはおすすめだ。毎年立ち寄りたい。

試走ではほとんどSouthばかりだったので、ここからは勝手知ったるなんとやら、と安心していたのだが、試走は昼間であったため夜間は雰囲気が全然違っていたり、すでに55km走った疲れもあり思うようには進まない。

桂木観音エイド

そして、次の桂木観音エイドで私の心は折れかける。楽しみに楽しみにしていた大好物のフルーツポンチがない。愕然とした。何事も期待をするとそのとおりにならなかったときのダメージが半端ないということを改めて実感した。期待、だめ、絶対。

桂木観音は行きと帰りの両方で通るエイドだ。帰りにはフルーツポンチを準備しておいてくれると約束してくれたボランティアスタッフさんの言葉を信じ、気持ちを切り替え出発。しばらく行くと、例の小原選手と偶然すれ違った「いやぁ、ロストしちゃいましたよぉ〜」と言いながらすごいスピードで引き返して行った。分岐から結構な距離来ていたので、このコースロストがなければもっともっと早いのかと、開いた口が塞がらない。やはり次元が違いすぎる。

この辺からだんだんとさらにペースが遅くなってきた。元気なときには「ここまで来れば次のポイントまでもうすぐだ」と思っていた距離がいつまで経ってもなかなか辿り着かない。狐につままれたような気分である。コーン。

kinocaエイド

kinocaエイドでは、ごちそうをたくさん食べさせていただいた。温かいチキンクリームシチューに、スモークチキンとチーズのサンドイッチ。最高すぎる。去年はシチューはひとり1杯だったのだが、今年はおかわりをすすめていただいた。進化している!

kinocaエイドから次の竹寺エイドの間は、人によってはこのレースの核心部とも呼ぶ厳しい区間だ。私の場合はちょうど深夜の時間帯で気分が下がり、足裏が痛く、足が全然動かない時間帯だった。下りがよちよち歩きになってしまった。

奇妙なランナーたち

私はレース中にちょっと変わった人々と居合わせることがちょくちょくある。喘ぎ声かと疑うような声を大声でずーっと出し続ける人や、アニソンや懐メロを結構な音量で流し続ける人などだ。私は夜間は前後に人気がなく静かに走るのが好きなのだが、こういった方々と近いペースで居合わせてしまうとなかなか離れることができず結構ストレスだったりするのだ。

竹寺エイド

そんなこんなで次の竹寺エイド。豚汁!稲荷!甘酒!最高!そして稲荷寿司を食べながら気づいた。そういえば今回Northの慈光寺エイドで敬遠した稲荷もこれと同じ形で去年のものとは違っていた、こんなに美味しい稲荷だったなんて、なんで私は進化する彩の国エイドを信じることができなかったんだ。おにぎりも担いで走らなくてよかったのに。後悔。

子の権現 茶屋(子の山売店)

竹寺エイドから40分ほどで子の権現に着く。レースとは直接関係はないのだが、ここの茶屋さんが当日はなんと24時間営業してくださっている。店内では仮眠をさせてもらえるようにもなっているらしい。去年はこの茶屋であたたかいそばを1人前しっかり食べさせてもらえたことが本当に嬉しかった。私のペースだと去年はエイドの食べ物が今年ほど充分には残っておらずカロリーは足りていたがお腹が空いていたのだ。「今年も必ずここでそばを!」と誓ってここまで来た。試走の際にも一度お世話になった。レースが近づくにつれ試走ランナーが増えることでコース上にある自動販売機が売り切れたり釣り銭切れになったりすることで充分に補給できずに茶屋まで来たことがあった。コーラを買って座らせてもらうと、おばちゃんがスナップえんどうに酢味噌をつけたものを食べさせてくれた。これも本当においしかった。

スナップエンドウに酢味噌

夜明け

このあたりで夜が明けて気分も軽くなってきた。夜間パートも好きなのだが、やはり日が昇ってくると身体が元気になってくる気がするから不思議だ。

高山不動尊上の旧茶屋エイド

子の権現を後にすると、一旦西吾野駅まで下り、もうひとつの核心部とも呼ばれる関八州見晴台までの長い登りに向かう。この区間は私は個人的には結構好きな区間だ。雰囲気に陰湿さがあまりないので気が軽い区間なのだ。エイドに着くと肉うどんをご馳走になった。去年は「茶屋でさっきそばを食べたから」とスルーしたのだが、今年はこの肉うどんの存在も織り込み済みである。食べられる。3杯ほどいただいた。おもしろいおばちゃんがいた。このおばちゃんはレース後に送迎車を待っていたらお菓子をくれた人とおそらく同一人物だ。満腹で少し登り、見晴台に到着。これで大きな登りは終わりである。残り14kmほど。

2度目の桂木観音エイド

試走では、見晴台から下り切った後の緩やかな里山エリアでペースダウンしてしまうことが課題だった。レース中も改めて気を引き締めて走った。補給は充分できていたので、しっかり進むことができた。そして、桂木観音エイドのフルーツポンチについに辿り着いた。12時間前に食べ損ねたフルーツポンチの味は格別だ。完走祈願の名物ピコピコハンマーで尻を叩いてもらい最後のエイドを後にした。

ゴール

少し登って、後はもう何も考えず下りを爆走するだけだ。ロードに出ると真夏のような日差しと気温だった。去年はゴールで待ってくれていた友人と電話で話しながらほとんど歩いていたように思うが、今年は最後まで遅いながらもしっかり走ってゴールができた。

ゴール後のエイド

彩の国はゴールした後もエイドで食事やドリンクをいただくことができる。レース直後にしっかりとエネルギー補給をできるのは本当に助かる。直後の補給の有無で回復の進みが全然違うと感じる。

風呂

移動なしで風呂に入れるなんて、最高!もう言葉はいらない、という感じである。

それぞれの彩の国

100kmに出た人も、100mileに出た人も、完走した人も、出走できなかった人も、途中棄権した人も、それぞれにドラマがある。誰に聞いても同じストーリーはなく、レースに向けてそれぞれの最善を尽くしてきたランナーたちはみな気持ちよくかっこいい。彩の国は飾りっ気がない分、良くも悪くも必要以上に感傷的になることもなく、淡々としていて、でも愛情に満ちていて大好きな大会である。また来年が楽しみだ。

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