見出し画像

信越五岳トレイルランニングレース2022

画像引用元:信越五岳トレイルランニングレース 公式HP

去る2022年9月17日から19日の3日間、日本を代表するトレイルランニングレースのひとつである「信越五岳トレイルランニングレース2022」が信越高原にて開催された。

トレイルランニングとは、舗装道路を走るだけでなく、山中も含む未舗装路を走るスポーツである。「ランニング」とは言うものの、急な登り下りや危険な場所、疲れたときには歩くこともある。歩く速さも重要だ。

「信越五岳トレイルランニングレース」には2つのカテゴリがある。100mile(約160km)と110kmの2つだ。制限時間はそれぞれ33時間と22時間。多くの方々にはあまり理解してもらえない志向の総勢約1300名の熱い男女が出走した。

トレイルランニングレースにも20km程度のものからこのような100mile、さらに長距離のまた少し別のジャンルのレースもある。明確な定義があるわけではないが、数十キロのレースは「ショート」と呼ばれ、70〜80km程度のレースは「ミドル」、100km超えあたりからやっと「ロング」と呼ばれることが多いようだ。このように距離感に関して麻痺していると思われるところも万人にすんなり受け入れられないひとつの要因であろう。ランニングの世界では、フルマラソンの距離である42.195kmを超える道のりの競技には「ウルトラ」の文字が冠され、舗装路なら「ウルトラマラソン」、トレイルなら「ウルトラトレイル」などと呼ばれる。私の趣味はランニングであると初投稿時に書いたのだが、それはウルトラトレイルランニングレースに出るためのトレーニングのひとつなのだ。

なぜレースから2ヶ月も経った今この話題について書いているかと言うと、今日届いたのだ、完走者に贈られる盾が。

信越五岳トレイルランニングレース2022 完走盾

私は100mileカテゴリに出走し完走を果たした。記録は32時間23分、制限時間の37分前。ギリギリである。盾には名前とタイムも刻んでくれている。この心遣いが嬉しい。このレースでは3日目の朝に表彰式が行われるのだが、そこでは上位入賞者の表彰はもちろんのこと、完走者全員を壇上へ上げてくれるのである。選手たち自身も含め、大会に関わったみんなで完走者全員をたたえてくれる暖かい大会なのだ。

今年の100mileの完走者は223人、完走率は38.8%。台風の影響で湿度と気温が高く、レース前半からリタイヤが続出し例年に比べて完走率の低い結果となった。当然私も苦しめられたのだが、なんとしても完走したい理由が2つあり、それらが心を支えてくれた。1つ目はバックルだ。

信越五岳トレイルランニングレース 100mile完走バックル

これをなんとしても手に入れたかった。途中棄権してまたチャレンジするなんてまっぴらだ、絶対に完走してやる、という意地だ。この完走証、よくあるメダルではなくなぜバックルなのか。世界最古と言われるアメリカの100mileトレイルランニングレース「ウェスタンステイツ(The Western States Endurance Run)」の歴史は、馬で走る100mile耐久レース中に馬が走ろうとしないために降りて自分で走り24時間以内に完走した人がいたことから1977年に始まったそうだ。この元となったレースの名残からウェスタン風のベルトバックルを贈る風習が受け継がれているのだ。アメリカの100mileレースではバックルが完走証となっているレースはたくさんあっても日本国内では本当にごく僅か。これを逃す手はない。

そしてもう1つこのレースを完走したかった理由がある。私が100mileレース出場を目指すきっかけになったレースだったからだ。私のランニング歴は2019年はじめに「K氏」に出会ったことで始まる。彼の帰宅ランにかこつけてみんなで走ってビールを飲むというちょっとした仲間内のイベントがあったのだ。普段全く走っていなかった私も参加し、いきなり30kmを走り(たくさん歩き)、膝を故障し、完治するまでに何ヶ月もかかったという苦い経験からのスタートだ。徐々に走れるようになり、「ショート」のトレイルランニングレースにもいくつか出た頃、信越五岳トレイルランニングレース 2019の100mileカテゴリにK氏が出場することになった。ウルトラトレイルレースでは、伴走をするペーサーや、エイドステーションでの補給作業などを手伝うサポートスタッフをつけることがレースによっては許されている。私はK氏のサポートスタッフとして大会に参加させてもらい、顔を合わす時間は僅かとはいえ、スタートからゴールまでの約29時間を見届けた。ゴール前に現れた彼が光に包まれてゲートに軽やかに入っていく様を見て、これが160km寝ずに山の中を走って来た人なのかという理解が追いつかない部分とともに、彼の強さに強烈な憧れを抱いた。

信越五岳トレイルランニングレース 2019 ゴールゲート

残念ながら今年はゴールの場所やゲートの作りが2019年とは異なったこともあり、憧れのゴールシーンを再現することはできなかったのだが、あのゴールに辿り着きたいという想いが私を最後まで走らせてくれたのだと思う。ここまで来るきっかけを与えてもらい、トレーニングにもいつも付き合ってくれるK氏には感謝しっぱなしである。
今晩は受け取った完走盾を眺めながら美味しいお酒を飲もうと思う。ワールドカップも見ようかな。では、また。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?