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上海市行号路図録 1947年 (民国三十六年) その1

上海は現在でもなお戦前の建築が現役で活躍しており、何の注意も払わずにいつも通り過ぎていたあの薄汚れた建物には実は思いがけない歴史が秘められていた、ということがよくある。そんな街歩きを更に楽しむための材料を紹介したいと思う。

上海歴史ガイドマップ

1999年に初版発行された街ガイド。上海の昔の地図と現代の地図を重ね合わせた意欲作。90年代にこれを作り上げた筆者の労力には本当に頭が下がる。しかし難点は、上海の発展が早すぎて「現代の地図」のアップデートが追い付かず、没入感が薄まってしまうことである。

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残念な再開発

上海歴史ガイドマップで紹介されているのは比較的大規模で、知名度のある建物が多い。90年代になって上海の経済に余裕が生まれ、歴史的物件はカネになると気付いたデベロッパーたちによって格好の再開発ターゲットとなってしまったこれらは、新天地に代表されるように、外壁こそ昔のままだが、内装はまっさらにされてしまい、中に入ると味も素っ気もないというパターンが残念ながら多い。しかし縁があって自分自身が「老房子」に住むことになってから、室内の床板、床タイル、手すり、ドアノブ、電気スイッチなどが本当に1930年代からそのまま使われていることに驚愕し、古い建物の本当の魅力は現役の住宅地、いわゆる「小区」にあるのかもしれないと思うようになった。

老房子 (ラオファンズ)

上海には数多くの「老房子」「老洋房」と呼ばれる戦前の住宅がそのまま現役で使われている。上記と同じように外国人向けのキラキラの内装を施されてしまった物件も少なくないが、建国以来ずっと上海人が住み続けている、時間の止まってしまったような物件も数多く残っている。WeChatチャンネルの「上海新里洋房」はそんな物件を多く紹介しているサイトである。

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表向きは不動産仲介のような見出しであるが、内容を読んでいくと管理人は深刻な老房子マニアであり、老房子を紹介すること自体が目的であるような気がする。

昔の地図

このサイトを読んでいる中で、ずいぶん詳細な昔の地図が引用されていることに興味をひかれた。有名な物件のみならず、全ての「小区」の全ての情報が詰まっている。

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とても気になり、この地図はいったい何だろうと調べていったところ、どうやら「上海市行号路図録」と呼ばれる古い書籍であるらしいことがわかってきた。

つづく


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