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【 子供はわかってあげない 】 感想vol.048 @テアトル梅田② 21/9/12

20/日/ビスタ/監督:沖田修一/脚本:ふじきみつ彦、沖田修一/撮影:芦澤明子

沖田監督作品は、『ジ、エキストリーム、スキヤキ』以来観賞していなかったので、随分と久々になる。『キツツキと雨』には泣かされたし、『横道世之介』には魂を揺さぶられたものだわ。上白石姉妹が苦手ではあるのだが、予告篇に写る夏空と、ラジオCMにやられて観賞に至る。原作は漫画であるらしいが未読にご座る。

撮影は芦澤明子さん。この人の対応の幅広さには舌を巻く。黒沢清作品で魅せる、不穏な気持ち悪さ。この印象が非常に強いのだけれども、その他の監督作品では毎回違う色合いと構図を観せてくれる。今作もまた然り。自分の撮りたいもの、描きたい世界を主張するのではなく、監督の観せたいもの、表したい情景を映し出すことのできる、稀代のカメラマンだと思う。作品に寄り添うことができるって素晴らしい。心底尊敬するし、今後も彼女の撮影作品を観続けていきたいと本当にそう思う。

ストーリーについて。高校2年生の美波。水泳部に所属している彼女は、プールの掃除の途中、屋上に人影を見つける。そこに居たのは書道部のもじ君。描いていたのは、大好きなアニメ『魔法左官少女バッファローKOTEKO』のキャラクターであった。この運命的な出会いによって意気投合した二人。幻のONAIR版を観るために、美波はもじ君の家に遊びに行く。もじ君の家は書道家をしており、居間で彼女はとあるお札を見つける。どうにも見覚えがある。それは、幼き頃に別れた父が送ってくる新興宗教のお札であった。居所の分からぬ父に、会いたくなる美波。探偵をやっているというもじ君の兄に父親捜索の依頼をすると、いともあっさりと現在の住所と仕事が判明する。夏休みの合宿を理由に父に会いに行く美波。小さな冒険と淡い恋が、ひと夏の青い空と海の中に弾ける。

どうして夏ってだけで画になるのでしょう。現実に生きていても暑いだけで、これといって楽しい想い出もないのは、私がつまらない人間だからでしょうけれども、映画の中に納まる夏というものは、無性に心を搔きむしる。空が青く雲が沸き立つだけでOKなのだ。陽光に眩しく輝く制服と流れ落ちる汗が写っているだけでお腹いっぱいになるのは何故なのだろか。きっと満足していなかったからなんだろうなぁと、今にしてみればそう思う。青春はほろ苦いぜ。

美波は、緊張すると笑いが止まらなくなるという設定なのだが、ラストのもじ君への笑いながらの告白シーンは強く胸を打った。秀抜なり。豊川悦司のビキニパンツ姿を拝める映画はそうそうないので、トヨエツ好きには是非ともお勧めしたい。良い映画じゃないか。

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