MIDI のピッチ表記問題

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MIDI ノートの 60 番の「中央のド」の音をどう表記するか、という古くからの問題。実は MIDI 規格として規定がないのです。これが諸悪の根源。これからも苦しむことになります。

昭和の時代から、ヤマハとローランドで違うんだよな、とは思っていながら、どっちがどっちだっけ、とすぐに答えられる人は少ないわけです。自分もそうです。

というわけで、DAW 目線ではありますが、いろいろ調べたので、自分の覚え書きとしてまとめておきます。同じことで悩んでる人も参考になれば幸いです。2021 年初頭の情報です。何か分かったら勝手に追記します。
(2023/8 に Dorico, Sibelius の情報を追記、侘美さんありがとうございます)

起源の話はあまりしません。
あと、ハードウェア系も調べてません。誰かまとめてください。リンク張ります。


C3 派

いわゆるヤマハ系と呼ばれるのは 60 = C3 です。

ですので、昔懐かしい XG Works などから脈々と C3 です。

偶然かもしれませんが、ヤマハが 2005 年に買収した Steinberg 社も C3 派閥です。あと、そこからスピンアウトして作られた PreSonus 社の Studio One も同様。

昔は Emagic、買収後は Apple 派閥となった Logic Pro、そこから初心者向けに作られた Garage Band も C3 です(確認していませんが MainStage もおそらくそうでしょう)。
なお、Logic Pro は C4 にもスイッチできる能力を持っています。さすがですね。

MOTU Digital Performer。こちらも既定値は C3 派でありながら、C4 にも変更できます。Emagic も MOTU も、古参なりの柔軟性が垣間見られます (Cubase の悪口はそこまでだ!)。

Pro Tools。昔がどうだったのか分かりませんが、2020.12 で確認する限りは、標準ピッチを C3、代用ピッチとして C4 と表記して、既定値は C3。あと、曖昧性をなくすため、MIDI ノートナンバー (60) で表記できるモードもあります。

毛色の違う DAW と言われて 20 年近く経つ Ableton Live もこちら側です。また、Live の影響を色濃く受けた BigWig も同じであるのは面白いですね。

自分は使っていないのですが、Propellerhead Software の Reason もこちらとのこと。へぇ。

C4 派

古くはローランド系、あとは国際系などとも呼ばれるのが 60 = C4 のこちら。

ちなみに、国際系と呼ばれる元は SPN が出どころのようですが、これもこれとてよく分かりません。ISO になっているらしい、という話もありますが、どれ?

海外では人気の高い Reaper が C4 派閥です。

日本ではマイナーだけど優秀な Tracktion もこちら側です。Tracktion Waveform は既定値が C4 で、C3 も C5 も選択できます!さすがです。

さすがといえば楽譜作成ソフトの Finale。こちらも Waveform 同様に C4 を既定値として、C3 と C5 を選択できます。また、そもそも標準では MIDI ノート番号だけを表示するようになっていて、自ら選ばないとピッチ名表記を出しません。大人な対応です。(もっとも五線譜メインでしょうから目にする機会はあまりないでしょう)

楽譜作成つながりでいえば、Sibelius は C4 勢とのこと。
そして Dorico、なんと Steinberg 勢でありながら既定では C4 。元 Siberius 開発者が合流して作ったとはいえ、なかなかなカオスっぷり。C3, C5 を選択可能というあたりが彼らなりの落としどころでしょうか。

KORG も C4 の古株です。現代の DAW で言うと Gadget がこれにあたります。ちょっとした用途には面白い DAW ですね。

そしてもちろんローランド系と言われるだけのことはあり、かつての主力 DAW である SONAR、および現在は BandLab という神によって生き延びている Cakewalk。これらは C4 派です。(ちなみに Zenbeats はどっちだ?)

Cakewalk は既定値 C4 ですが、いつからか分かりませんがなんと±10 オクターブ分も表記を変えられます。ヤケっぱちもいいところです。「できること」と「やらなくていいこと」の違いを考えさせられます。

C5 派

え?第三勢力!?

というわけで、FL Studio がこの派閥の主です。

一説には、最低音である 0 = C0 として、オクターブを自然数で表したかったらしい、というものがありますが、真偽はよく分かりません。

他には、古式ゆかしき ACID がこの派閥です。実は、個人的には結構長いこと ACID 使っていましたが、まったく気づきませんでした。音を切り貼りすることの方が多いですからね。

もう他にはおらんやろうと思いますが、見つけたら教えてください。

世界は広いので、ほかにも C5 派がいるかもしれませんし、Finale や Waveform 使いの人たちが C5 の世界にやってくるかもしれません。ひとまず今は、その存在だけでも覚えておきたいところです。

まとめ

・SONAR 亡きあと、コンシュマー系 DAW はだいたい C3 中心の世の中
・楽譜作成系は C4 だが、Finale, Dorico は C3, C5 にも変更可能で大人な対応 
・Cakewalk, FL 使いの人は「おれは他人とは違う」ことを覚えておく
・話が噛み合わない時は、自分が既定値から変更してしまっている可能性
・宗教論争になるので C3 であれ C4 であれ「こっちが標準」とか言わない

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