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『ODD ZINE』の今後(2021年以降)のこと

 思いつきや衝動で動く場合も多いため、確定事項ではないのですが、2019年の『vol.2』を刊行したころに口にしていた「半年ごとに次号のZINEを刊行する」という構想を保留にしようと思っています。
 そもそもなぜ半年ごとに刊行しようと決めていたのかといえば、東京で行われる文学フリマを基準にしていたからです。毎回そこでブースを出し、新しい号を販売しようと考えていました。
 ただ、昨今の社会的混乱状況により、昨年(2020年)のGWに開催予定だった東京での文学フリマは中止になり、そこに合わせて作業を進めていた『vol.4』は宙ぶらりんになりかけました。そのあたりの経緯に関しては、『vol.5』の巻頭に載せた鼎談で語っているので繰り返しませんが、文学フリマとは別のルートを開拓し、様々な人たちのお力を借りることで、結果的には新たにおもしろい動きをすることもできました。
 でもそれもあくまで突発的事象への変則的対応であって、恒久的なものにはなりにくい面も多々ありました。
 まず大きな懸念は販売価格のことです。このZINEは税込1000円か、それ以下の値段で販売していますが、それはあくまで直接販売の場においてある程度の売り上げを想定した値付けです。
 直接販売の場がほぼ無くなったことにより、必然的に本屋さんへの卸しが中心になりましたが、卸した際の金額を基準にした価格設定ではないので、単に利益が減少するというだけでなく、次号への制作資金に大きく影響が生じました。
 また、このZINEはコードをとっておらず、直接お店に行って飛び込み営業するというやり方だったため、疫病の蔓延に対する不安感が高まる中、新規開拓もかなり難しい状況でした。
 解決策があるとすれば、コードを取得し、流通は取次の方に依頼するなどの対応をとり、販売価格をその形に合わせて調整する方法です。でもそれは今現在、あまり乗り気がしません。
 もちろん、そうしたからといって確実に利益が確保できるとは限りません。うまく流通させられないかもしれませんし、価格が上がることで、販売数が落ちる可能性もあります。そういった懸念もひとつの理由ではあるのですが、それよりもこのZINEにふさわしいやり方をイメージした時、しっくりきませんでした。
 僕自身、ZINEの制作を通して強く実感したのは、「ZINE」とは、企画編集して刊行する事物としての冊子のことだけではなく、それを携えて営業したり、誰かと交流したり、イベントを企画したりするなど、すべての「動き」そのものも「ZINE」に含まれるのだということです。
 もちろん原稿依頼を断られることや、置いてほしいと思った本屋さんに諸事情で置けないことなど、すべてがイメージ通りとはいきません。でもこれほどまでに、自分の想いを複合的に表現できる手段はなかなかないのではないでしょうか。
 誰に原稿を依頼するのか、どのようなデザインにするのか、どのような値段で販売するのか、どこで販売するのかなど、考えられることはいくらでもありますし、自分の思惑と実行力ひとつでどうにでも変えることができます。そのどれもが刺激的でおもしろい活動です。
 このZINEに関しては、「半年ごとに刊行する」という決まりより、「刺激的でおもしろい活動」の方を重要視しています。そうしないと僕自身が楽しめません。楽しくなければ、続けることはできません。
 そのため、昨年(2020年)は神楽坂のかもめブックスで「ODD ZINE」展を開催して、原稿は公募するというスタイルをとり、展示そのものがZINEの最新号『vol.6』であると謳いました。それは、「半年ごとに刊行する」という決まりのせいで社会的混乱の影響を受け、否応なしにやきもきする状況よりもずっと、僕にとって「刺激的でおもしろい活動」でした。
 かもめブックスでの「ODD ZINE」展を経て、さらに「刺激的でおもしろい活動」にしたいという欲望が芽生えましたし、その方がこのZINEに合っていると確信しました。
 それゆえ、今後は普通に次号を刊行するというスタイルとは異なるかもしれませんが、「新しい思考の角度を模索し合う奇妙なコミュニケーション」のキャッチコピーにふさわしい、「刺激的でおもしろい活動」そのものは続けていきます。

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