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残高上位の投信は成績もリッパ、それでもやっぱりS&P500!

残高上位の投信は成績もリッパ、それでもやっぱりS&P500!

■好成績ミューチュアルファンド


『バロンズ拾い読み』(11月18日号)の記事5番「好成績のミューチュアルファンド3本に見る「市場に打ち勝つ方法」」が興味深かった。

米国のアクティブ投信の運用資産上位20本のうち、S&P500指数の年初来リターン23.2%を上回っているのは3本だけ。そして、これら3本は過去1年間と5年間の成績で見てもS&P500を上回っているという。

深刻なのは資金流出で、優れた運用成績を上げていても、大型ファンドやアクティブ運用株式ファンドからの資金流出が止まらない。多くの投資家が低手数料のインデックス・ファンドや上場投資信託(ETF)を好むようになってきたからだという。アクティブ投信上位20本のうち、今年と過去3年間で資金が純流入だったのはわずか5本だった。

■テーブルを見て私なりに思うところ


残高上位の投信のパフォーマンスはリッパだと思う。20本中5本は運用残高が10兆円を超えているし最低でも3兆円はある。これらの大型ファンドの10年のパフォーマンスがS&P500に負けているファンドでもそれなりの結果だ。自分で運用をやれば分かるが、他人のお金を運用するのには徹底したリサーチ能力、洞察力そして規律が必要で、個人の資産運用と根本的に違うゲームだ。その中でこれだけの成績を収める運用チームがいることに敬意を表する。ちなみに日本の公募株式投信(除くETF)の残高は約65兆円。つまり米国の大型投信の運用者が数チームもいれば事足りることになる。

■10年間で年率14%?これはもう達人の領域


S&P500の上昇率は歴史的平均で約7%(配当込なら約9.7%)だが、金融危機以降の株価上昇率は13.7%とさらに大きい。その上昇相場の中で指数を上回るのはさらにハードルが高いので傑出した成績だ。代表格がテーブル3番目のフィデリティのコントラファンド。運用者はウイル・ダノフという当代きっての名手で、日本の朝のテレビ番組広告でも見かける(https://www.youtube.com/watch?v=RcT742euKds)。また『バロンズ拾い読み』でも時々取り上げられる達人列伝の一人だ。動画や説明書を見てもらえば、ファンドの実績を物語るような眼光鋭い眼差しや柔和な面持ちは多くの投資家を魅了することだろう。。また『バロンズ拾い読み』でも時々取り上げられる達人列伝の一人だ。動画や説明書を見てもらえば、ファンドの実績を物語るような眼光鋭い眼差しや柔和な面持ちは多くの投資家を魅了することだろう。

■日本でもこのファンドが買えるがS&P500のETFにはかなわない


コントラファンドと同じ運用担当者、投資哲学、運用戦略に基づき運用されているのが「フィデリティ・米国株式ファンド(https://info.monex.co.jp/news/pdf/2019/20190627_01/201906.pdf)」だ。このファンドの説明資料を見るとコントラファンドの運用概要が多角的そして立体的に説明してあり、本当に納得して買いたくなる。ところでコントラファンドの経費率は年間0.82%だが、日本で販売されている「フィデリティ・米国株式ファンド」の運用管理料は1.65%なのでコントラファンドの約2倍。そしてその差の0.83%を差し引くと日本でのファンドはS&P500のパフォーマンスを下回ってしまう。

もちろん運用成績はリスクとの見合いで語られるべきだし、名手に資金を託している安心感はあるかもしれない。それでも実際のパフォーマンスはS&PのETFの買い持ちに及ばないという事実は指摘しておきたい。またダノフ氏は1982年ハーバード大学卒なので現在60歳ぐらいか。今後も長くこのファンドの運用を続けてくれるのか?運用者個人の事情が変化することによって生ずるいわゆる「キーマン・リスク」もチェックポイントだ。

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■「市場の神様」S&P500のファンになることが資産運用の要諦


芸能人やスポーツ選手を思い浮かべれば、ある特定の個人や組織のファンになり応援したい気持ちが芽生えるのは自然なことで誰でも理解できる。しかし、こと投資に関する限り、どんな個人や組織も及ばない神羅万象を包含する「Mr.マーケット」の存在をもっと尊重した方がいい、とりわけ米国では。そしてS&P500こそがその「Mr.マーケット」だと言ってよい。

ウォーレン・バフェットやダノフの師匠格のピーター・リンチ、そしてダノフのようにマーケットを打ち負かし続ける人は少ない。しかもそれが誰で、いつまで優位を保てるのかは事前には分からない。だからこそ個々人の能力や思惑を超え、万人の意識を超えた“無意識”の意思が反映されているS&P500なのだ。S&P500は米国の国是やあるべき姿そしてそれらを実現しようとする強い意志によって上昇軌道を辿るようにプログラムされている(ちょっと言い過ぎ?私は本当にそう信じている)。したがってここは特定の個人や組織へのファン心理や神頼みをぐっとこらえて「市場の神様S&P500」にその思いを託すのが資産形成に必要な心構えだと強調したい。


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