【連載】『雪乃みづきの Originals & Covers』 #特別編 『まちぶせ』
『まちぶせ』
作詞・作曲:荒井由実 編曲:松任谷正隆
この楽曲は石川ひとみ版が有名ですが、もともとは荒井由実が1976年に三木聖子に提供したものです。1981年に石川ひとみがカバーして、彼女の最大のヒット曲となりました。
今回は三木聖子、石川ひとみ、そして作詞・作曲をしたユーミン本人の歌唱を聴き比べてみました。
三木聖子版と石川ひとみ版はほぼ同じようなアレンジになっていて、石川ひとみ版の方が三木聖子版よりやや研ぎ澄まされたような感じの音です。私はこの曲のイントロが昔から大好きで、この甘い夢のような旋律には女の子が好きな人を思う気持ちが溢れていて、イントロだけですでに気持ちが高まりドキドキします。これから何かが始まりそうなドラマチックなイントロです。
三木聖子の歌唱は品のいいお嬢さんという雰囲気で、これはこれで良いのですが、私が以前から気になっていたのは、「これでは男は振り向かないのでは?」ということです。好きな人を自分のものにしたかったら、もっともっと心の底からたくらんで欲しい! たくらみ方が中途半端です。この程度では彼に気づいてもらえません。
その点、石川ひとみの歌唱は、たくらんだことを一つ一つ確実に実行して着々と意中の彼の心を自分に惹きつけて行く過程がリアルに描かれています。前から好きだったあの人を何としても自分のものにしたい!という情熱を心に秘め、あくまでもそれを表面には出さず冷静に計画を実行する女の子。たくらみは成功し、彼は振り向くと思います!
石川ひとみ版がヒットしたのは、彼女の可愛さ+女の子のしたたかさ+コケティッシュな雰囲気を秘めているのを上手に表現したからではないかと思いました。
そして最後にユーミンが1996年に、敢えて「荒井由実」名義でシングルを出した『まちぶせ』ですが、三木聖子版、石川ひとみ版とは違う軽快なレゲエ風なリズムのアレンジ。余裕たっぷりに歌うユーミン版は、まちぶせなどしなくてもストレートに「あなたが好きなの。わたしと付き合って」って堂々と言っても大丈夫だって本人が一番わかってる気がします(この曲の本来の方向とは違ってしまいますが……)。
こちらの三曲は浪漫社(ろまんしゃ)で聴き比べることができますよ。ご興味のある方は、是非リクエストしてくださいね♪
本連載「Originals & Covers」は私がマスター業を営む阿佐ヶ谷のバー『浪漫社』でかつて発行していたフリーペーパー『ろまんしゃ通信』に「本郷隼人」名義で連載していたものですが、この回(2017年10月16日発刊 通巻4号)のみ、同店のママが執筆しました。
本記事は、それをそのまま引用しました。
※連載ひとつ前はこちら
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