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レッツゴー!! ライターショップ 〜脱・使い捨て&これぞな出会い

 困ったことに、喫煙者だ。

 マーク・トゥエインだったかバーナード・ショーだったかの言葉に、
「禁煙なんて簡単だ。私はもう何回(何千回)もしている」
 というのがあるが、そんな類《たぐい》の情けないニンゲンだと思っていただいてよろしい。

 なにせTV1stシリーズの「ルパン三世」から始まり、工藤ちゃん版の『探偵物語』、映画『スティング』や『カサブランカ』など〝オトナのかっちょいい小道具としてのタバコ〟にどっぷりと浸かった世代だ。成人してずいぶんと経ってから観た「ダイ・ハード」シリーズの主人公ジョン・マクレーンもことあるごとにタバコを吸っていることにも、シンパシイを感じていたりする。
 まあこれらはしょせんは言い訳でしかなく今の時代に喫煙者であることはむしろかっちょ悪いことは重々承知の介で嫌煙者であるところの女房にもほとんどあきらめられているところなのだが、その女房が数日前にこんなことを言いだした。

 曰く、
「タニザワのダレスバッグを使っていたり本パナマの帽子をかぶっているような人が、使い捨てライターなのはおかしい」
 と。

 深夜、自分が寝ようとしているタイミングでまだ台所の換気扇の下で俺がnoteか何かを綴っていて、その際に使い捨て——いわゆる100円ライター——がうまく着火せず難儀している音を聞いて、あらためてそう思ったらしいのだな。

 なるほど、そりゃもっともだなと。

 実は100円ライターにはかの『ルパン三世 カリオストロの城』での絶妙な演出もあって俺の中でそれなりの理由もなきにしもあらずではあったのだけれども、まあそれはこちとらのハナシであって、たしかに還暦目前のオッサンの「全体の見た目」としてはバランスが悪い。
 もちろん、いわゆるエコな問題もある。

 そんなわけであらためて「使い捨てではないライターへの道」を模索することになったのだが、これがまたいろいろと、ことにネットだけでは難しいのよ。
 で、ちゃんとした喫煙具のリアル店舗に足を運んだがよろしかろうと心決めたのだが、これが大正解。

 すでに日付も変わったが、いみじくも昨日。
 西新宿で俺の定期健康診断があり、そのあと女房と『紀伊國屋書店本店』で待ち合わせをしたのだけど、その1階に有名な『kagaya』という喫煙具専門店がある。
 で、見つけましたよ素敵な製品を。

 それが、こちら。

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 知る人ぞ知る「プリンス」という国産ブランドで、これは『ドルフィン』という名のフリントロック(火打ち石)式のガスライター。

 あとでいろいろと調べて知ったのだが、1964年に発売され人気を博し、2003年に復刻されたらしい。
 なんでも同社は日本で初めてガスライターを作り、またその品質の高さからこのドルフィンとは別モデルながら先の東京五輪(1964)でも記念モデルが関係者に配布されたらしいのだな。

 いわゆる俺の大好きな「国産の老舗」だ。

 とまれその時代っぽい——ことに第一次ウルトラ・ブームのメカに通じるような——「レトロフューチャー」っぽさと、一見するとジェームズ・ボンドが使っていそうな「スパイ用ミニチュアカメラ」かと思わせる特徴的なデザインに、一発で心を鷲掴みにされた次第。
 ちなみにこの丸い穴はガスの残量を示すプリンスが世界で初めて採用した独自の「ドルフィンアイ」と呼ばれるもので、ここが白くなるとガス切れと分かるらしいのだな。

 価格も下記Amazonのリンクのようにお手軽で、これならばかのジッポー以外で初めて持つライターとして相応しかろうと、女房の強い賛同も得た上で購入した次第。
 化粧箱も美しいでしょ。

 そしてそれだけでもご満悦だったのだが、そのあと新宿でいろいろとウインドウ・ショッピングをしてからの休憩に女房も俺もおおよそ30年以上ぶりに有名なジャズバー&カフェ『DUG』に寄って下の写真を撮っていたところ、現在のマスターと思しき方から、
「かっこいいですね。ロンソンですか?」
 と声がけをしていただいたこと。

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 ご存知の方はご存知のように「ロンソン」とはジッポーよりも歴史が古い米国のライターの老舗中の老舗、名門中の名門メーカーで、
「いえ、かくかくしかじかで……」
 と説明し実際に手にしてもいただいたのだが、そうした声がけを〝かの〟DUGのマスターからまだ入手してから2時間程度しか経っていないにも関わらず「見る人から見ればちょっとしたモノ」だという印象を与えるんだなあと、感慨深く思った次第だ。

 俺は間違いなく低所得者層だし、世間一般でも今この現在は某ユニクロに代表される低価格のものが広く購買される傾向にある。

 だけれども先のエコの問題も含め、それぞれの〝身の丈に合った〟ところで「ホンモノ」に目を向ける、手にするといったことがちょっとずつでも広がればいいなあと、またぞろ考える。

「ドルフィンちゃん」を使いはじめてまだ1日足らずだが、メカニカルな着火の感じも素晴らしいし、何より佳きモノを使っているという〝心の感触〟をタバコに火を点けるたびに思う。
 それは一部やはり、かつて憧れた「オトナの男の小道具」としての回帰でもあるのかな。

 あ、ちなみに健康診断では、食道も胃ももちろん肺も、正常だと診断されましたです。はい。


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