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サービス紹介⑨ 知的財産の棚卸し ライセンス戦略の一環として

知的財産部がコストセンター化しないように、ライセンスを計画的に進めることが考えられることを先日はご紹介しました。今回は知的財産維持費用を削減する、一見ライセンスと関係のない「特許の棚卸し」についてご説明します。

川瀬知的財産情報サービス、および、Parintek Innovationsは、特許の棚卸は、ライセンス戦略の一環としても有用だと考えております。

知的財産という用語は実はあまり適切に対象を示していない用語です。技術そのものも、知的財産です。経験も、慣れも、知的財産です。通常は「ノウハウ」と呼ばれるため、忘れがちですが、「知的財産」にはあらゆるものが含まれるという前提にたって「知的財産権」となっている、「特許」を考えなおしてみます。

改めて考えてみると、「特許」には特殊な点がいくつかあります。

第一に、「出願し、審査し、登録されるという手続きがなければ存在しないのと同じにあ扱われる財産権」である点。

第二に、「現在は、おおむねどの国でも20年間という期間で、必ず消滅する権利である」点。

第三に、「財産権として効力発生するためには、費用がかかり、かつ、財産権として存続するためにも、費用がかかる権利である」点です。

今回の話は最後の点にかかわってきます。

持っているだけで費用が掛かるという点では固定資産税とにたところがあり、不要な特許は手放す必要があります。しかし、費用対効果の点から知的財産部門が常にそのトレーシングを行うのは困難です。

様々な知的財産マネジメントソフトウェアがありますので、徐々にそうした作業は容易になってきているとはいえ、自社だけでは補いきれない企業が多いのが現実かと思われます。

そこで、特許の維持費(メンテナンス費用と通常呼びます)を削減するために、数年に一回、特許の棚卸しを行います。この時に自社だけで賄えない部分を知的財産調査会社に外注するということが多いようです。

実は、この時ライセンス戦略にたつための、重要な一歩が隠れています。

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知的財産の棚卸は、上の図右上の部分にあたる、「自社の事業と関連のない特許」をくくりだすだけの作業だと考えられがちです。

あるいは、お客様によっては、一定の基準で、重要度を判定するということをお願いされる場合もいらっしゃいますが、今回のポイントはそこではありません。

この時、お気づきになりませんか?特許は出願するときには最大20年後のことを考えて出願していたはずなのです。世界の市場が急速に変化している今、知的財産の棚卸を行う際には出願時とは異なった世界が見えており、当時は存在しなかった市場が当たり前のように存在している、ということがありえまるのです。

つまりは、下の図のように整理をすることができるということです。

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もしかすると、例えば、通信機能付きのバッテリを10年前に出願していたかもしれません。あるいは経年劣化を起こすと特定の波長域の色のみ吸収するようになる材料が15年前に出願されていたかもしれません。

IoTやバッテリのセキュリティが問題になっているのは、ここ数年で、LEDがここまで廉価になったのも、ここ10年のことです。

ここで大切なのは、特許の棚卸というのは、単なる維持費用の削減だけではなく、出願時ではなく現在の技術のレベルで自社が持っている強みを再確認し、仮に自社が実行しなくても、ライセンス戦略がとれる技術領域を特定する非常に良い機会であるということです。

知的財産権を「ライセンス」することを検討するのであれば、常にそのことを念頭において知的財産部を運営することが大切になるかと存じます。

次回は情報のバイアスについて検討したいと思います。

どこかでお役に立てればと存じます。

2021年1月7日

川瀬知的財産情報サービス 川瀬健人

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