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好きで着ていたはずなのに

 黒いタートルネックのニットと赤いチェックのスカートが気に入って、昨年の秋よく着ていたけれど、ふとこの前気づいた。「もしかしてモーニング娘。初期メンバーの服の感じに似てる?」と同時に、「そんなこと意識しちゃったら、今度の秋はもう着にくいじゃないのよう!」と強い気持ちがわいた。まあでもスカートはロングだし、と思って調べたら、赤チェックのロングスカート着ているモーニング娘。初期メンバーの写真が出てきちゃった。
 でも私、モーニング娘。じゃないし。
 ……ショックだ。気づいてしまったことにも、そしてそれに気づかずに40代後半のおばさんが気に入って嬉しそうに着ていたことにも。
 色の組み合わせがキレイだから、また多分着るけど。でも機会は減るだろう。


 服を買って、気に入ってしばらく着ているのに、「あれ。なんか違った」って思う瞬間がある。それは突然やってくる。

 好きで買ったはずなのに、翌年は全然着ないなんてこともある。
 粘ってさらにその翌年、気分が変わるのを待つ。
 2年着なければ、それはもう二度と着ないから捨てた方が良いとか聞くけど、そんなに私は思いきれない。仕方ないから普段着として「イマイチだな~」と思いながら、ほそぼそと着続ける。もう二度と着ないと決意するまで、或いは生地が傷むまで。結果、すごく長く何年も着ていたりする。

 夫は、基本的に私のファッションに興味はない。でもごく稀に、気になったら何かしら言ってはくれる。

 オレンジ色のギンガムチェックのブラウスを気に入って買い、何度も着ていた時期がある。襟はボタンダウンになっていて、袖が少しだけふっくらしている。可愛いなと思っていたのだが、ある日夫が「ファミレスの店員みたいだね」とにこやかに言った。

 なっ。……なんですって!

 鏡の前に行って、そのような目で見てみると、確かにファミレスの店員に見えてきた。

 ……うまいこと言う。

 感心してしまった。

 でも感心してからも、気に入っていたので、しばらく「ファミレスの店員だよ~」と言って着ていた。

 ある日は、私のお気に入りの、カジュアルなラグランセーターをじっと見て「可愛いねそのセーター」と言った。左胸の辺りに、親指大の白いクマが両手をバンザイしている。夫は「白いザリガニ?」と、両手をはさみのポーズまで取って言った。「わはは!! クマだよ~!」と言ったが、「ええ! ……ザリガニにしか見えない」とまじまじ眺める。
 可愛いクマは、ザリガニにされてしまった。

 それでもこういった例は、夫がそのように見えるだけで、私は気に入ったままだから構わない。ただどうしてもちょっと意識してしまう。そう見えているのだろうか……と。

 他にも今年、ショックだったのは、一昨年だったか買った白いブラウス。両袖がふっくらしていて七分丈。袖には黒の花模様が入っている。とても気に入っていたはずだ。昨年も。
 ところが今年着て鏡の前に立ってみると。「はっ! これではまるで……!」。

 ……マラカス持って踊り出しそうではないか。

 さらには昨年の夏のはじめに買った無地のVネックTシャツ。気に入って何度も何度も着ていたのに、夏も終わろうとするある日、鏡で見ると。「あれっっ? これはまるで……!」。

 ……オペ??

 医師が着そうなユニフォームではないか。
 病院感を失くそうとして、カジュアルな大きめのペンダントを合わせてみた。

 ……ネックストラップみたいになった。名札つけたスタッフみたいになっている。ますます病院のユニフォーム感。
 あ~あ。気が付かなければ良かった。安いから色違いで二枚も買っちゃったよ。

 どれも着ないのはもったいないから仕方なく今年も着て、ファミレスの店員になったり、医師になったりしてみている。マラカス持っていないので残念ながら踊ってはいないけど。残念だなあ~踊りたかったなあ~!

 いや、服の好みって変わっちゃうもんだな。って話です。


#エッセイ #服の好み #ファミレスの店員 #マラカス #ネックストラップ


読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。