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モノマネを競い合う家庭のムード

 大泉洋が、よく福山雅治のモノマネをする。
 たいてい大泉洋に呼びかけながらの、導入部分からマネするので「ようちゃんさあ~」で始まる。
 これがそっくりそのままじゃないはずなのに、すごく似ている。もうそこに福山雅治がいるかのようだ。取り上げる会話も、必ず笑わせてくれるので、福山雅治も公認らしい。
 あまりにも可笑しいから、夫も私も競うようにマネをする。よく私がする「〇〇のモノマネをする△□」のマネだ。
 夫が「ようちゃんさあ~」と言うと、私が訂正する。
 「もうちょっとねっとりしてるんだよ。ぃよおぅちゃんさあ~」
 「ぃよおぅちゃんさあ~」
 「そうそう、ぃよおぅちゃんさあ~」
 しばらく二人のねっとりした「ぃよおぅちゃん」の応酬が続く。

 夫が積極的に楽しんでくれるのはこれくらいだ。

 いったい私はいつからモノマネをするようになったのか。

 まだ物心つく前から、加藤茶の「アンタも好きね。ちょっとだけよ」と足をピンとあげて真似していたらしい。45年以上前の話だ。……書いていてちょっとビックリする。「45年以上」て。
 私のことだから、大人がそれを見て大笑いする様子が面白かったのだろう。

 小学生の頃はヒゲダンスとか、めちゃくちゃ真似した。
 友達のモノマネもした。

 気が付けば、息子が喋り始めた頃から、お笑い芸人のモノマネにダメ出しをし、友人に「かせみちゃんは、英才教育に感心なさそうやのに、お笑いだけは英才教育やね」と大笑いされた。
 3~4歳くらいの息子が、ザブングル加藤の「カッチカチやで~」とか、ザたっちの「ちょっと、ちょっとちょっと」とか真似していた。小島よしおももちろん。「そんなの関係ねえ」だけではない。「こっちより~うえ~い」の部分からだ。「発達しているぜ!」が「復活しているぜ!」って間違っていたのは可愛いのでそのままにしておいたけど。「ちんとんしゃんてんと~ん」のところも「ちんとんしゃんてんドーン!!」て言っていたのもそのままにしておいたけど。お風呂の時間で、少しずつ向きを変えて浴槽で一周してくれた時は、笑いっ放しでのぼせそうになった。

 以前も書いたことがあるのだけど、熱心にテレビの前でモノマネを繰り返していると、夫が「おれは、中西になるのか?」と言う。
 なすなかにしの中西の奥さんは、梅子鉢の高田。彼女は、菅野美穂や井森美幸のモノマネが上手! 家でモノマネの練習を始めると、1時間くらい同じフレーズを繰り返すと言う。

 さらに息子が最近、前後のフレーズをしっかり覚えて、真似をし、夫に褒められているのを見ると、私ももっと上手くやろうと妙な承認欲求が湧いてくる。

 「こうやって二人に競わせて、妻と息子のモノマネのレベルがどんどん上がっていくんだ!」夫は勝ち誇ったように、ふぁっふぁと高笑いしている。

 くそぅ。最近、ジャングルポケット斎藤の「ストレッチャーズ」の体操がうまくなってきてしまっているぞ私。
 屈辱のような誇らしいような気持ちで斎藤のモノマネをする私。
 なんのプレイだ。

 思うツボで悔しいから、夫の「福山雅治のマネをする大泉洋」のマネにダメ出しをしている。声の質は女である私より、圧倒的に夫が似ているのに。



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読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。