見出し画像

幼なじみと一緒に成長って、良いもんだな~

 幼なじみの「おさな」ってどのくらいでしょ。
 中学生からの友人はいる。でも子供にとっては中学生って「幼い」って感じがしない。
 小学生からの友人も、一人、細々と続いているけど……。そんなに親しく続いているわけでもなく。遠いから時々会えるわけでもなく。

      *

 息子が1歳半くらいで今の土地に引っ越してきた。
 2歳代、同じアパートに、息子と同じ年頃の男の子を見つけた。

 ベトナム人の彼を、息子は好きではないらしかった。でも彼は息子が大好きみたいで。抱きつかれたり追いかけられたりして、息子は嫌がって泣いていた。

 幼稚園も一緒だったけど、園内で特に仲良かったわけではない。でも近所だったし、幼稚園帰りによく彼とも遊んでいた。車で送迎していた頃は園庭で。バス通園になると、バスを降りてから。

 小学生になってから本が好きで、特に彼は本を多く読むので、休み時間になると二人でよく本を読んだらしい。登校班は違ったけど、下校では一緒。お喋りな二人は、アパートの下で話が止まらずに長い間、立ち話して、帰宅時間がよく遅くなっていた。
 時にはウチを行き来し、その後、私たち一家はアパートから引っ越した。彼が遊びに来る日もあったけど、遠くなったため、又、息子が友達と過ごすのをいやがるので、来なくなった。

 そのうち息子が中学受験をしたいと言い出し、塾に通い始めると、同じ塾に入ってきた。
 彼のお母さんは働いていたので、私はよく二人の送り迎えをしたものだった。車の中で交わされる会話を、笑いながら「可愛いなあ」と聞いていたのは、私の楽しい思い出の一つ。

 同じ中学校に揃って入り、それぞれに友達ができた。息子はずっと彼を、一線引いて見ていた。客観的な意見を聞く度に、ものすごく好きとか合うとかそういった感じではないんだなと思っていた。
 でも気心が知れているのは間違いない。
 「あの子が、こんな時どういう風に感じているか、僕にはわかっているし、あの子が喋ると、アイツらしい発言だと思うんだ」
と言っているのを聞いて、ちょっと羨ましいと思った。

 私にだって、「あの子なら、こんな時どういう風に感じているか、私にはわかっているし、あの子が喋ると、あの子らしい発言だと思う」友達は何人かいる。でもそれは、私にとってすごく親しい友達。

 息子は「大好き」なわけでも「めっちゃ気が合ってる!」わけでもない。
 幼なじみ、なだけだ。
 なのにその感覚があるんだ。私にはわからない感覚で、それはなんだかとっても大事そうな関係に思える。幼なじみってどんな風なのかな。

 私はニュージャージーで大好きだった友達たちと、帰国時に別れてきた。すごく会いたい。ても連絡の取り方すらわからない。
 帰国後も、市内で小学校を変わり、転校先でも仲良しは遠くへ引っ越し、私は別の女の子たちにいじめられた。いじめから脱しても、いじめる側に回るのがいやで孤独を選んだ。かばってくれたり、喋ったり、一緒に笑ってくれたりしたのは、大人びた子たち。幼稚な私はその輪には入らなかった。
 6年生でようやく仲の良い子ができたけど、私は中学受験に向かって激走中でもあった。卒業と同時に彼女も引っ越した。
 祖父母との同居のためもあり、私たちもさらに引っ越しをした。

 「このおばさん、昔から知ってる」って顔も全然ない。
 
 私は息子の幼なじみと、今会っても「○○くん、お母さんどこ?」とか普通に喋れる。しかもその「○○」は、今や周りの人たちはほとんど知らない、赤ちゃんの時からのニックネーム。(※ベトナムでは、妊娠中に、お腹の子に可愛いニックネームを付ける文化があるそう。それが本名と違っても、親や親戚は、そのまま呼び続ける場合もあるらしい。)「かわせみさんも、呼びたければそのまま呼んで良いのよ」と、そこのお母さんに言われ、そのまま。

 そう言えば、何度か彼を本気で叱った時もあった。息子に対してと同じように、会話も真正面から。
 2歳から知っている彼の身長が私を超えても、「○○くん」と気軽に話しかける。声が変わっても。髪型にこだわりを見せ始めても。ぬふふ。髪型にこだわり……。可愛い。

 息子には、幼なじみがいるんだな……。

 それは特別に親しくなくたって、分かり合える友人。
 近くに住んだまま、お互いを見ながら成長してきた友人。

 そして気軽に会話できる友人のお母さん、いわゆる「顔見知りのおばさん」が近くにいる。
 

 彼も、どうしようもなく泣き虫だった息子を、よく知っている。その上で二人ともお互いを受け入れあい、それぞれに仲良しもいて、それでもなんだかんだ親しい。
 
 「いつかベトナムを案内してもらおうかな」
 息子が最近言っていた。


#エッセイ #幼なじみ #友達 #気心知れている #知っているおばさん #友達のお母さん


読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。