1stEPよりセルフライナーノーツ「荒野に向かう途中」

お久しぶりです。カワサキウチュウです。

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曲解説


さて、1stEPのセルフライナーノーツ最後となります「荒野に向かう途中」について語っていきたいと思います。

突然ですが、皆さんは防災用のヘルメットが割れたところを見たことがありますか?私はあります。今回の曲の成り立ちをお話しするうえで、その瞬間に至るまでとそれからの私の思いを語る必要があります。正直順序立てて説明できる自信がありませんし、かなり長くなるかもしれませんが、ここからはしばしお付き合い願います。

バイトからハローワーク、そして面接へ

遡ること数年前、私はとある工場でバイトをしておりました。バンドマンとバイトはある時期までは切っても切れない関係といえますが、それが途端に別れを告げる時が来ました。
様々な理由がありますが、やはり収入の問題が一番大きく影響しており、「これ就職するしかないんか…?」と追い込まれておりました。就職活動から逃げに逃げてのらりくらり生きていたこともあり、今までに感じたことのない重圧を感じていました。しかしこのままで一生暮らすのはやめたほうがいいと直感的に感じていたため、しぶしぶハローワーク訪問を決意しました。

ハローワークではとにかくできそうな仕事を探すことにしましたが、パソコンを使ったり、営業をかけたりなどのコミュニケーション能力を問われそうな仕事は特に苦手なので、それらは一切省いて黙々と一人で働ける場所を探しました。
そのうちの一つに"金属を仕分ける仕事"というのがありまして「これならいけるやん!」と思い、ハロワのおじさんに紹介状を書いてもらうことになりました。

ハロワのおじさん「君、これは名前はなんてよむんだい?」
ウチュウ「これ宇宙って書いてヒロシって読むんです…」
ハロワのおじさん「へぇーひどい名前だねぇ」

後日紹介された勤務先の面接に向かうと、なんとマイクタイソンほどの大男が対応してくれましたが、その方が社長だと聞いていろいろと嫌な予感がしたのを覚えています。

タイソン「君は営業のほうが向いてそうやけどねぇ…」
ウチュウ「げ、現場でもできます…!!」
タイソン「ほな体験入社3日あるからおいで」

となりましてバイトを休んで体験入社に行くことになりました。

体験入社1日目(9:00~15:00)

嫌な予感は的中しました。

まず最初に現場で働くおじさんA、B、Cの3人が紹介されましたが、一番ペーペーのおじさんCが私に仕事を教えることになりました。
そして時間があるときは社長も一緒に働くのですが…
おじさんCの働き方が気に入らなかったのか、今となっては理由はわかりませんが、社長はおじさんCに暴力を振るっていました。
その後、社長はおじさんAにも暴力を振るっていました。

直感的にこれはまずいと思いましたが、ここからあと2日、なんとか乗り切らないといけないと思い社長やおじさん達から受けた仕事をできるだけ間違えないように過ごしました。

私は気になったので、おじさん達にこっそり「なんでこんなところでずっと働いてるんですか?」と聞くと

"ここでしか働けへんのや"

と言われ、若い頃にやったことのつけや、不遇な話を聞くこととなりました。

14:30に一度休憩がありましてその時に営業部門の方が「新人かえ?」と話しかけてきたので「はい。よろしくお願いいたします。」というと「身長高い奴はなぁ…どっか抜けてるからなぁ…」と意味の分からない理論を語りだされました。

そうこうしているうちに社長が「今日は15時であがっていいよ」と言ってきたので帰宅しました。

体験入社2日目(9:00~18:00)

午前中は社長がいないとのことで、のびのび仕事ができると一安心しているところ、13時あたりに急遽社長が現場に戻ってきました。そこから十数分が一つの地獄でした。

もともと耳の悪い私は、人の言ったことがうまく聞き取れないことが良くあります。それで相手を不快にさせることも少なくありません。
社長がショベルカーに乗りながら

社長「おい!〇〇せぇ!」
ウチュウ「…すいませんもう一度お願いします!」
社長「〇〇せぇ!」
ウチュウ「…すいません聞こえないです!」
社長「だから○○せぇって言ってるやろ!」

と最後は怒鳴りながらバールを投げられましたが、ギリギリのところでよけると気づいたころには安全ヘルメット越しに2発ほどパンチをお見舞いされました。今思えばこの時にハローワーク側に相談すべきだったかもしれません。

そこからはおじさんBがやってきて一緒に作業することとなりました。この時、社長の態度は何故かおじさんBに対してのみ軟化していることに気づいたので私は常におじさんBから指導を受けるように立ち回ることにしました。

この予感は正しかったのか、今までが嘘のように何事もなく18時を迎え、気持ちよく挨拶をして帰宅することとなりました。

体験入社3日目(9:00~14:15?)

昨日のヒーローおじさんBはなんとダンプカーに乗って早々にどこかへ行ってしまわれたので、朝からおじさんCの下で作業していました。昼までは何事もなく、このまま1日を乗り切れば終わると思っていた矢先でした。

現場に届けられた金属を仕分ける場所を私が間違えたしまい、それを見たおじさんCが「やばい!社長に見られたら殺される!」と叫んだので、間違って仕分けた金属を籠から持ち上げている瞬間に社長に見つかったのです。

社長「こらぁ!お前またか!」

と歩いてきて前頭葉に3発のパンチを喰らい

社長「お前使えへんのじゃ!もう帰れ!」
ウチュウ「すいません!気を付けますので続けさせてください!」
社長「もうええわ!帰れ!」
ウチュウ「すいません!今度はちゃんとやりますので…!」
社長「そんなんええねん!ホンマに帰れいうてんねん!」
ウチュウ「(え、ホンマに…?)」

ウチュウ「…すいません帰ります…」
社長「おう帰れ!後で給料だけ取りに来い!」
ウチュウ「(金もらえても行きたくねぇ…)」

人生史上最大の敗北感をもってロッカーに退散し、着替えているときに気が付きました。

安全ヘルメットがバキバキに割れていました。

"就職活動ってこんな思いしないといけないのか"と思うととても暗い気持ちになり、どう表現してよいのかわからないまま帰宅しました。

帰宅後

その日は帰宅してしばらく無心のまま数時間を過ごしました。そしてこれからの予定を確認すると数週間後に元バンドメンバーを再会してしまうイベントがあることを思い出しました。なんとも情けない気持ちでとても誰かに会って明るい顔をするなどできる気持ちではありませんでした。

それと同時に当時の私は自分と周囲を比較し"自分は上手くいっていなくて、周囲の人はみな上手くいっており楽しそうにしている"ように見えていました。そしてその幻覚を見た私は「自分一人だとしてもすべてをつかみ取ってやる」ことを固く決意しました。

とにかくこの負の感情をぶちまけてやりたいと思い、アコースティックギターをもって15分、サビらしい進行とそこからのA、Bと歌詞と曲を同時に構成していきました。ほとんど自分に溜まった毒をそのまま吐き出すような感覚に近かったと認識しています。

そこから思い切り叫びながら転調しようとして、半音上、全音上、短三度上のいずれかで15分悩み、最終的に短三度上に転調することにしました。

これが「荒野に向かう途中」を作成した経緯となります。
作曲には、技術よりも感情が伴った場合に上手くいくこともあると勉強させられたケースでした。

最後

以上となります。長い割につまらない上に気持ちが落ち込む話で申し訳ありません。ですがあの日の決意は、私の中でも未だ強く残っていますし、これからもその火は消えないと思います。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。
次回は、5/29に出演するカワサキウチュウバンドセットのメンバーを紹介しようと思います。

ではまた会いましょう。

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