第１章　勝率の本質

この章では、勘違いされがちな勝率の考え方と、勝率の本質を学んでいきましょう。 

１.～FXトレーダーの勝率～

資金管理を学ぶ前に、まずは確率の本質を理解しないと適切なFXの資金管理をすることができません。

そこで、この章と次章では確率についてお話ししていきます。

あなたは、儲かっているプロトレーダーにどんなイメージをお持ちでしょうか？

おそらく、「すべてのトレードで勝って、常勝しているんだろうなぁ。」と思っているのではないでしょうか。

しかし、プロトレーダーの勝率はトレードスタイルにもよりますが、そこまで高くない、低勝率のFＸトレーダーも多くいます。

私が知り合った様々なFXトレーダーに勝率を聞いてみると、確かに短期取引をメインとするスキャルピングトレードを行っているトレーダーでは、90％～80％前後の勝率と高勝率を叩き出しているFXトレーダーも多くいました。

しかし、数時間から数日ポジションを持つ、デイトレードやスイングトレードを行っているFXトレーダーに聞いてみると、勝率は30％から60％ぐらいという答えが多く返ってきます。

あなたは、 cis氏(Twitter: @cissan_9984)という方をご存じでしょうか？私は会ったことはないですが、cis氏は株や仮想通貨(暗号資産)や先物などの取引で230億円を稼いだSNSで話題の凄腕のトレーダーです。

そんな有名な凄腕のトレーダーも、取材で「勝率は３割から４割ほど」と答えています。

このように、儲かっているトレーダー全員が、絶対に”高勝率”というわけではなく、トレードスタイルによって負けトレードのほうが多いというトレーダーも多くいるのです。

かくいう私も、勝率は60％～40％となっており、決して高いわけではありません。

ではなぜ、負けトレードのほうが多いのに儲けることができるのでしょうか？

それは、“損益比の管理”をキチンとしているからに他なりません。

１つ例を出してみましょう。

勝率が10％という低勝率の手法があったとします。

普通の人は「こんな低勝率の手法は使い物にならない。」と思うはずです。

しかし、このFX手法で、10回トレードを行って９回が10銭の損切り、１回が100銭の利益確定のトレードだったとすると、10銭の損切りが９回なので90銭の損失と、100銭の利益確定が１回なので、合計の利益は10銭の儲けとなります。

勝率10％の手法なのに合計すると、10銭の儲けになる。不思議ですよね。

これが”資金管理に秘められた力”です。

ちなみに注意してほしいのが、勝率90％～80％など、高勝率のFXトレード手法でも、10％～20％は負けトレードの回があるということです。

例えば、勝率80％の手法で、10回中10銭の利益確定が８回できたとしても、残り２回のトレードで45銭の損切りをしてしまえば合計の損益はマイナス10銭になってしまいます。

このように、どれだけ高勝率のFX手法であっても、損益比を管理していなければ負ける手法になるのです。

２.～高勝率の手法で連勝する確率～

　さて、突然ですが、ここであなたに質問です。

「勝率80％の手法で８回連勝する確率は何パーセントでしょう？」

「勝率80％の高勝率FX手法！」…そう言われたら「ほとんどのトレードで勝てる手法なんだな」と思うことでしょう。

しかし、実際に勝率80％の手法で８連勝する確率を計算してみると、８連勝する確率は、80％の８乗で約16.7％となります。

つまり、この手法で８連勝するトレーダーは、100人中わずか16人ほどしかいないということです。

この時に、100人全員が全ての取引に全財産を賭けていたのであれば、生き残る人はわずか16人で、残り84人はすべての財産を失ってしまい退場することになります。

勝率80％の高勝率FX手法なのに、８連勝する確率はわずか16.7％しかない…これが確率に隠れた性質です。

ちなみに、この勝率80％の手法で20連勝する確率は、わずか１％ほどしかありません。

100人に１人しか20連勝できないのです。

このように連勝する確率は、トレードをするたびに低くなる…これが確率に隠された側面です。

どんな高勝率の手法でも、連勝する確率はトレードするたびに低くなっていきます。
…ということは、資金管理を適切にしていないと、いつか負けトレードの回に当たり、資金を大きく減らすということになりかねません。

皆さんも「80％勝てる手法ならほぼ勝てるから」と、１回のトレードにほとんどの資金を入れていませんか？

それでは、近い将来に起こる負けトレードの回で、すべての資金を失ってしまいます。

このように、高勝率と言われて感じることと、実際に起こることには違いがあるのです。

そうなったときに資金が減ることを防ぐためにも、損切りを管理する資金管理がとても大切だということが分かるはずです。

３.～隠れたトレード回数～

本屋でFX関連の棚を見てみると、よく“勝率○○％の高勝率手法！”というサブタイトルが付いた書籍を多く見かけます。