"Navigating Market Dynamics:VVIX and VIX Strategies"
investing is the intersection of economics and psychology
-Seth Klarman-
-投資は経済学と心理学の交差点である-
心理のバランスと市場ダイナミクス
金融市場では、さまざまな感情が交差し、それらの要素が作り出す複雑なパターンが、様々な投資機会を提供します。市場は、人間の心理が反映される場であり、その感情が市場の動きに大きな影響を与えます。感情と論理、恐怖と欲望のバランスを理解し、市場のダイナミクスに深い洞察力を向けることで、市場の変動に対応し、成果の高い投資の機会を見つけ出すことができるでしょう。
このような市場の複雑なダイナミクスを理解し、その中に潜む投資戦略を見つけ出すために、今回はVIXとVVIXと呼ばれる指標を活用して、市場心理と投資機会を探る方法を解説します。これらの指標は、市場の恐怖感と不安定性を捉えるために開発されたものであり、トレーダーにとって重要な洞察を提供できるでしょう。
まずはじめに、VIXとVVIXの基本的な理解が必要です。ここでは簡単な説明を行いますが、より深い理解が必要な場合は、他のウェブサイトなどを参考にして理解を深めることをお勧めします。
VIXとVVIXの基本概念
VIXの定義
VIXは、S&P500指数のオプション価格から予想される将来の株価変動幅を算出し、その値を指数化したものです。つまり、VIXが高い場合は、市場参加者たちが株価が大きく変動する可能性が高いと予想していることを示しています。例えば、VIXが20の場合は、市場参加者たちは、S&P500指数の将来の1年間の変動率が約20%程度になることを予想していると解釈できます。一方、VIXが10の場合は、市場参加者たちは、将来の変動幅が約10%程度であることを予想していると考えられます。VIXは、市場の不安定性や予測不可能性を示すため、しばしば「恐怖指数」と呼ばれています。また、VIXが高い場合には、株式市場は不安定であるため、投資家たちはリスクを回避するために、保有している株式を売却することがあります。そのため、VIXが上昇すると、株価が下落することがあるとされています。
VVIXの定義
VVIXは、VIXオプションのボラティリティ（価格変動）を測定する指標です。VIXと同様に、市場の不安やリスクの度合いを示すものですが、VVIXはVIX自体の変動を捉えるため、市場の恐怖指数の変動に注目しています。簡単に言うと、VVIXは「恐怖指数の恐怖指数」とも言えます。VVIXが高い場合、市場参加者がVIXの急激な変動を予想していることを意味し、VIX市場の不安定性やリスクが高いことを示します。逆に、VVIXが低い場合は、VIXの変動が小さく、VIX市場が安定していることを示します。
1. VIXは、S&P500指数のオプション価格から将来の株価変動幅を予想し、指数化したもので、「恐怖指数」とも呼ばれる。
2. VIXが高いと、市場参加者が株価の大きな変動を予想しており、株価が下落することがある。
3. VVIXは、VIXオプションのボラティリティ（価格変動）を測る指標で、「恐怖指数の恐怖指数」とも言われる。
4. VVIXが高い場合、市場参加者がVIXの急激な変動を予想し、VIX市場の不安定性やリスクが高いとされる。
5. VIXは株価の変動を示す指標であるのに対し、VVIXはVIX自体の変動を評価する指標で、VIX市場の不安定性やリスクを測る。
VVIX/VIXレシオによる市場心理の考察
それぞれの指数が持つ意味を理解したところで、チャートに表示させた実際の指標を確認しながら、当時のマクロ経済が取り巻く環境を考慮し、市場の動きに仮説を立てていきます。
このプロセスは特に重要で、指標の動きと株価の動き、「原因」と「結果」の間にある過程に筋道をたてて論理的に推論する事で、より合理的に投資判断を下すことができます。
チャートの一番上には、VVIXをVIXで割ったVVIX/VIXレシオが表示されています。このレシオを作成することで、両指標の相関関係やトレンドをより明確に特定できます。チャートにはVVIX（赤）、VIX（青）、(*1)BTCスポット価格、そして最下部にあるS&P 500の動きが描かれています。(*1)レシオがSP500の予測変動ボラティリティを基に作成していることに注意が必要です。
リスクオン期間
A6-30〜A′8-1
昨年の6月30日、マクロ環境は連邦準備制度（FED）による急な利上げに伴い、低調な経済指標が続いていた。リセッション（景気後退）が意識され始めると、長期金利が低下し始め、この「悪いニュースは良いニュース」という状況では、ネガティブなサプライズが生じると、FEDの金融引き締めが緩和されるという楽観的解釈が、売り疲れが見え始めた株価を押し上げる。
このような市場心理は、VIXとVVIXが共に低下していることから、市場の楽観を反映していると考えられる。一方、VVIX/VIXレシオが上昇しているのは、分母であるVIXが15～30程度で推移するのに対して、VVIXは約100前後の値で推移しているためだ。その結果、両指数が下がることでレシオは上昇している。
これは、相場全体がリスクオンの状態を示しており、そのような状況下でロングポジションを持つことは適切であると言えるだろう。
ディストリビューション（分配）
A′8-1〜B8-12
７月はFRBメンバーのハト派的な解釈や、ハイテク決算が想定していたほど暗い内容ではなかったことなどを背景に、リリーフラリーが続いた。市場は楽観の真っ只中だが、この時点でVVIXとVIXの関係に変化が始まる。
株価の上下に答えを見つけるのは難しいことだが、VVIXの上昇はこの先「VIXが上昇する」という思惑に対してヘッジコストを上積みし始めているという明確な答えである
相場の上昇に懸念を抱く投資家達がわずかに増え始めると市場心理のバランスは、静かに変わり始める。洞察力に長けたトレード達はこの市場の変化に気づき始め影響を広げていく。株価の上昇は着々と終焉に近づきつつある
一方で、まだ上昇すると信じている投資家たちは
、FOMO（Fear of Missing Out）と呼ばれる、価格に取り残される恐怖から、欲望に飛びつく投資家たちが市場に殺到する。この時点で十分な利益を得た優れたプロのトレーダーたちは、この心理を利用するように、「欲望から恐怖」へと感情をシフトさせ、「恐怖から欲望」へ群がる投資家たちの売り手に回る。それぞれの心理が交差し市場全体のダイナミクスが変わり始める。そして、市場は新たな局面に突入し、トレードたちに新たな機会やチャレンジをもたらすことになる。
リスクオフ期間
B8-12〜B′10-5
まもなく市場の楽観を反映したVIXの低下がいずれ横ばいになり、VVIX/VIXレシオが反転に転じると、約2ヶ月続いたリスクオン相場は終焉を迎える。そして、VIXは「恐怖指数」と呼ばれる所以を誇示するかのように、市場をリスクオフへと誘導していく
ボラティリティの習性
このように、人間の心理が市場ダイナミクスを形成する過程を検討してきましたが、「なぜVVIXがVIXの変動を予測できたのか？」と疑問に思うでしょう。今回紹介する戦略では、確実な統計的傾向に従って売買判断を下します。それが、ボラティリティの平均回帰性です。ボラティリティの平均回帰性とは、ボラティリティの変動性が一定の平均値に戻ろうとする傾向があるという現象です。これは市場の動きが非常に激しい時期や、逆に非常に穏やかな時期があるにせよ、最終的には中間の状態に戻ろうとする力が働くということです。
VVIX and VIX Strategies
この平均回帰性を利用すれば、ボラティリティが極端に高い時や低い時に売買のタイミングを見極められる可能性があります。この戦略の核心は、VVIX/VIXレシオの平均回帰を統計的に判断し、相場の転換点を捉えることです。
まず、VVIX/VIXレシオにボリンジャーバンドを表示させます。ボリンジャーバンドはこのレシオのn期間の（10〜20日程度が効果的）移動平均を算出し、その上下に標準偏差を用いたバンドを引くことで作られます。
標準偏差は、値のばらつき具合を示す指標で、大きいほど平均から離れた値が存在することを示します。これにより、指数の変動範囲を視覚的に把握しやすくなります。ボリンジャーバンドは、ボラティリティの平均回帰性を捉えるのに非常に有効なツールです。なぜなら、ボリンジャーバンドの中心線が移動平均線であり、価格が中心線に向かって戻ろうとする力が働くからです。また、ボリンジャーバンドの上下のバンドは、指数の過去の変動範囲を示し、価格がバンドの外側にある場合は、過去の統計的な範囲から外れていることを意味します。これが、相場の転換点を見つける手がかりとなります。例えば、VVIX/VIXレシオがボリンジャーバンドの上限を超えた場合、ボラティリティが過去の統計的な範囲から外れており、リスクが高まっていると判断できます。このタイミングで、相場のリスクを回避するためにポジションを減らすなどの対策が取れます。逆に、VVIX/VIXレシオがボリンジャーバンドの下限を割り込んだ場合、ボラティリティが過去の統計的な範囲よりも低く、リスクが低いと判断できます。このタイミングで、ポジションを増やすなどの戦略が取れます。
VVIX/VIXレシオを用いた平均回帰ストラテジーは、市場の転換点を見極める助けとなる有益な手法です。ただし、この手法はあくまで統計的なものであり、必ずしもすべての転換点を的確に捉えることができるわけではありません。投資判断を行う際には、このストラテジーだけに頼らず、他の要因や情報も考慮することが重要です。
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