見出し画像

人生を変えた一冊の本

今日とあるラジオを聴いていたら「人生を変えた本」について話していた。
色んな人が答えていて、挙げられる例としては『7つの習慣』とか『嫌われる勇気』とかの自己啓発系だったりビジネス本だったりが多かった。

はて、では我が身を振り返った時に人生を変えた本ってなんだろうと考えて、爆速で答えがでた。これだ。

那須正幹先生作『ズッコケ三人組』シリーズの一作である『ズッコケTV本番中』、これが筆者の人生を変えた本である。

人間は二種類に分かれる。本を読む人間と読まない人間だ。
これは習慣の話であって決して優劣ではないのだが、なんとなく本を読んでいる人に会うと嬉しくなってしまうし、「お、こいつはいいやつかもな」というバイアスが加わる。んで、実際話が合うことが多い。

昔働いていたブラック企業の社長が教科書通りのパワハラおじさんでめちゃくちゃ嫌いだったのだが、ある日社長のデスクに何冊も本が置いてあるのをみて(しかも歴史・小説・自伝・科学など多ジャンルにわたっていた)、少しだけ尊敬した。まあすぐ会社辞めたけど。

話がそれてしまった。というわけで筆者は本を読む人間なのだが、その魅力を教えてくれたのがこの『ズッコケTV本番中』なのだ。
5歳の誕生日に叔父にプレゼントされた。
小学生の話なので5歳児にとっては少し漢字が多く難しかった記憶もあるが、今まで読んでいた絵本でも詩集でもない、リアルな物語の世界を自分で読み進めていく経験が強烈に面白かったのだ。

学校の放送部に所属したズッコケ三人組(ハチベエ・ハカセ・モーちゃん)は、TV番組を作ろうと街で取材をしているうちに、連続放火事件の手がかりをつかんでしまう…という話。

もちろん子供向けの作品なんだけど、やたら放火の犯人像がリアルだったりして(いわゆる悪人ではなく、気弱そうなオタクタイプの男が犯人だった。)、今読んでも全然面白い。

ここから本の世界にハマった5歳児は『ズッコケ』シリーズを読み漁った。

特に印象に残っている作品をあと2つほど。

ズッコケ三人組の未来報告(1992年)

三人組が30代で同窓会に参加する話。
変死した同級生の謎と、デヴィッドボウイを思わせる来日中のロックスター、ジョン・スパイダーのストーリーが絡まってゆく。
これもミステリとして最高に面白かったし、やっぱりメイクしてるミュージシャンが好きなのはここに原体験があるのかもしれない。そういう意味でも人生を変えた本の一冊だ。


ズッコケ三人組と学校の怪談(1994年)

想像で作った妖怪や幽霊が実際に出現してゆく…という話なのだが、子供向けとは思えないほどの怖い描写が続く。
クライマックス、学校の階段(ダジャレではありません)を這いずり回る目玉のない赤ちゃんの群れは、人生変えたとかじゃなくてマジでトラウマだ。那須先生、なんでこんなの書いたんですか!

那須先生といえば、『さぎ師たちの空』という作品も子供の頃に読んで大いに影響をうけた。ハッピーエンドではない、切ない物語の終わりに初めて触れた経験だった。大人になって文庫を買い直し、たまに読んでいる。

『ズッコケ』ばっか紹介してしまったが、という風に一冊の本から世界は広がり、やっぱり犯人見つける話がおもろい!ということでミステリを追うようになっていく。となるとホームズ・ポワロ・果ては『長いお別れ』なんかの海外文学に手が伸び…と流れていった。
数字が苦手なので西村京太郎の時刻表トリックは理解できなかった。

最近はエッセイとかが多く、ミステリ読んでないので何かオススメがありましたら教えてください。

…そういえば一個、嫌なことを思い出した。
とある読書法の本を、途中まですごく楽しく読んでたんだけども、いきなり「幼いころに『ズッコケ三人組』とかを読んでるやつはサル並の知能だ」みたいな無根拠な記述が出てきて、比喩じゃなくその本をゴミ箱にぶん投げたことがある。

うるせー!ズッコケ読んでてもてめえの本にたどり着いたけどな!!サル語を用いたサル向けの執筆、おつかれっす!!!クソが!ばーかばーか!!(確かにズッコケ関係なく筆者はサル並の知能なのかもしれないですね)

ちなみに僕の人生をこんなにも豊かにしてくれた那須先生は、昨年亡くなっていたらしい。どうされているのかな、と今調べて初めて知った。普通にショック…。
ありがとうございました。ご冥福をお祈りします。

カワグチへのサポートはフォークデュオHONEBONEの活動費に使わせていただきます。