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内見と確認ポイント(開業8ヶ月前)

こんにちは、瓦.Tokyoの西田です。

税理士の方のアドバイス頂き、物件探しの条件を見直しまして、10坪で家賃20万円くらいの物件を中心に情報を集め、良さそうだと思った物件については、内見の申し込みをしていく作業に取り掛かりました。


物件の立地条件

実際に見に行った物件は、神保町・浅草橋・水天宮前・神田などですが、立地の条件としては、遅くまで営業して終電がなくなっても、自転車などの手段で、比較的帰りやすい場所にしようという事で、自宅が江東区だったことから、「新宿より東」という感じで探していました。
お店をやっていると、「なぜ茅場町なの?」と聞かれる事が多いのですが、「自宅になるべく近いところで、良い物件が見つかった」というだけで、茅場町に縁があった訳ではありません。

ただ、改めて振り返ってみると、幾つか候補物件を内見した中でも、一番自宅に近く、20分程度で自転車で帰れるので、結果的にはとても良い物件に出会えたと思っています。
創業当初は昼飯、晩飯を食べる余裕すらなかった中で、例えば、通勤に往復1時間以上かかるとなると、体が悲鳴を上げていたかもしれません。
前職の職場にも近いので、元同僚の方にも遊びに来てもらいやすいし、ビジネス街なので、土日は営業しないという決断もしやすかった為、週末は家族との時間も作れる事を思えば、色々と結果オーライだったと思っています。
(私の性格上、全部結果オーライ側に倒してしまっているだけで、
 色々と機会損はあるかもしれませんが)

候補物件について

ちなみに他の候補について、少しだけご紹介します。
水天宮前の物件は、内装は普通の居酒屋、10坪程度の5階店舗、賃料は20万円台でしたが、同じビル内に既に蕎麦居酒屋が入居しており、競合するかもしれなかった為、その後の検討を見送りました。

神田の物件も、内装は普通のバーで、地下店舗で10坪程度、賃料は同じく20万円台でしたが、蕎麦屋にするには大掛かりな内装工事が必要なのと、騒がしい周囲の雰囲気が好きになれず、検討を見送りました。

浅草橋の店舗は、10坪程度の居抜きで家賃が30万円代、ランニングのコストで予算オーバーでしたが、リノベーション済で、以下写真の様に内装は全て新品。とても綺麗でした。造作譲渡費用は300万円程度でしたが、ゼロから作るよりは安い気がしたので、もう少し踏み込んで検討をしました。

既に出来上がっている内装
厨房設備も、一通り用意されている

最終的には、周囲の交通量調査をした結果、(家賃の割に)人通りがそれほど多くなく、飛び込みのお客さんがそれほど見込めないのでは、という懸念を持ち、検討を中止しています。

神保町の店舗は、大手カラオケ店の入っているビルの地下で、20坪で家賃が10万円台という破格の条件ではありましたが、居抜きではなくスケルトン物件で、地面下の配管図等の情報がありませんでした。

地下のテナント。上は全フロアカラオケ

情報不足のまま、いざ工事をしてみたときに、想定外の壁にぶつかり、コストが跳ね上がったりする懸念があったこと、また定期借家契約で、2023年くらいには、ビルを取り壊すという話だった事から、検討を中止しました。
※2024年時点で、まだこのビルは存在しています。とにかく家賃が安いのと、駅前で人通りが多い場所なので、今なら契約したかもしれない・・!

こうしてワガママを言い続けて、何年も物件探しをしている飲食店開業を目指している方が多いと聞きます。やはりどこかで妥協して、まずは1店舗目をオープンさせる事が先決かな、、と思い始めた頃に、茅場町の店舗に出会うのですが、その話はまた今度。

以降は、物件の内見をする中で、当時チェックしていたポイントや、逆にお店を始めてみてから痛感している、チェックしておくべきだったと思うポイントについて、ご紹介しようと思います。

メインとなる確認ポイントについて

①立地

マクドナルドのビジネスは、飲食業ではなく不動産業だという見方をする人がいます。それくらい立地は重要で、近隣の市場調査は言うまでもなく必須でしょう。

朝、昼、夜の時間別、晴れ、雨などの天気別、平日と週末の曜日別などで、交通量(車、自転車、人など)の調査をしたり、近隣のオフィス、商業施設、住宅の分布や人口統計を入手し、動線を推察したりすると、幾つか物件を比較する中で、相対的に集客に有利そうな物件、不利そうな物件は色分けが出来ます。

人通りが多く、視認性の高い物件は人気が高く、その分家賃も高くなるのが普通ですが、同じ家賃帯で物件を探しても、物件によってかなり交通量に違いがありますので、よく比較してみた方が良いです。

立地だけは、開業後に変更がききませんので。

ちなみに、瓦.Tokyoは所謂、二等立地に開業しました。駅とオフィス街を繋ぐ人通りの多い道路から、1本横に入った路地で、あまり人は歩いてませんし、視認性も高くありません。
開業当初は夜の営業時間に、お客さんが1人も来なかった日もあり、そんな日は外でチラシ配りをしながら、一等立地に開業しなかった事を悔いた時期もありました。
お客さんが来ない間は、アルバイトの人件費や家賃、電気代も垂れ流しです。ひたすらお金が出て行く感覚は、かなり精神的に追い込まれます。

ただ、この辺は結局、お店のコンセプトと戦略次第です。私の場合は、
①瓦そばというニッチな商品で広い商圏から薄く集客する(近隣人口に依存しない)
②ディナータイムにアルコールの販売を含めて売上を確保する(回転率よりも客単価重視)
と言う戦略で、物件自体の集客力には期待しない前提で事業を設計しています。

なので元々、フリーのお客さんが何組もご来店されるような場所ではないのだし、結局は瓦そばの味が世の中に受け入れられるか?と言う単純なゲームだと思って、当時は立地について弱音を吐かないように、自らを奮い立たせていたように思います。

また、立地条件には、階数やエレベータの有無なども含まれますが、これらも集客に大きく影響します。

2階以上(空中)の物件は、1階店舗に比べて外からどんなお店か分かりにくい為、新規のお客様に来店頂くまでの心理的ハードルが相対的に高くなります。(当然、家賃は安価になる傾向にあります。)

例えば、サイゼリヤやスシローなど、名前を見れば店内の雰囲気や料理、価格のイメージがわくような店舗であれば、空中であっても消費者側の心理的ハードルは殆どありませんから、家賃を抑える方向で積極的に空中テナントに入居する事もあるでしょう。

逆に、個人が飲食店を開業するにあたって、もし空中テナントに出店する場合は、隠れ家的な雰囲気を付加価値にするとか、上手く工夫しないと、どうしても集客力の面で1階店舗に劣後します。

お店の入口前でメニューを見て、店内の雰囲気を伺ってる”見込み顧客”は、本当に大勢います。そこへのアプローチが、1階店舗だと容易なのです。その日は無理でも、「チラシだけでもお持ち帰り下さい」と会話出来るだけで、空中店舗には出来ない顧客とのコミュニケーションが可能です。

②電気、ガス、水道周り

家賃が安い物件は、建物が古い事が多いです。そうなると、色々な情報が十分に入手できない場合があります。
例えば、水道の配管図や、電気容量などの情報が不足している場合があります。
床下を、どのように水道が通っているか?また建物外にどのように出ているか?テナントとしてどの程度まで電気を使って大丈夫なのか?など、内装のレイアウトや厨房機器の選定に必要な情報が、どれだけ揃っているか?については、要確認です。

また、どんな情報があれば良いか、素人には分からない部分が多い為、有力な候補物件の内見には、内装業者にも同行して貰った方が良いです。
私の場合はネットで内装業者を探して、内見の都度、ご同行頂きましたが、幾つもの物件を見てきているプロの立場から、色々なアドバイスを頂く事ができますし、参考意見は多いに越したことはないと思います。

※内見後の動きとしては、内装工事をした場合の概算見積を依頼し、予算にはまれば、融資の申請/物件の仮押さえ、という流れになる為、どちらにせよ近いうちに、内装業者には見積依頼が必要になります。

③どこまで工事出来るか

内装は、現状回復する前提であれば、好きにして良いという物件は多いと思いますが、外装は、大家・管理会社と都度交渉となるケースが多いかもしれません。
物件を契約して、いざ自分の思い描くお店にしようとしたら、大家からストップがかかった!というような事がないように、事前にイメージを先方に伝えて、工事内容に問題は無さそうか、合意しておいた方が安全です。

その為にも、自分がどんなイメージのお店にしたいのか、しっかり固めておく必要がありますし、それを事前に内装業者と共有し、不動産屋・大家さんとの交渉に臨めるようにしておけるとベストです。

競争率の高い物件であればあるほど、早く契約を迫られると思います。工事費用の見積もりとあわせて、この辺の合意が契約前に出来るように、内装業者と二人三脚で不動産業者との交渉は進められると良いと思います。
※この段階で、複数の内装業者に声をかける必要はないと思います、あくまで概算の費用を把握して、工事に関して不動産屋と会話出来れば良いので。

開業後、この辺も確認しておけば良かったと思ったポイント

④換気扇のパワー

居抜きで引き継いだ既存設備の一つですが、換気扇が、家庭用の換気扇のようなもので、パワーがかなり貧弱でした。
少しでも厨房で煙を出そうものなら、すぐに客席にまで煙が蔓延してしまい、オープン当初、お客さんから『換気扇、回ってる?』とよく聞かれたものです。

これについては、オープン3ヶ月後には、強力な換気扇にリプレースしていますが、設置予定の厨房機器がどの程度の熱量を出すか?が、一つの指標になるようです、内装業者・設備業者とはよく相談しましょう。

⑤ゴミ置場

ゴミについては、自店舗のゴミ置き場というよりも、近隣の他店舗・他事務所の出すゴミの置き場所について、確認はしておきたい所です。
私が物件を契約した時点では、ビルから離れた場所にゴミ集積所があり、同じビルの他テナントのゴミは、そこに出されていたのですが、オープン直前に、(ゴミの不法投棄が頻繁にあったようです)近所のルールが変わり、ビル単位でビルの前にゴミを出すルールになりました。

1階店舗である瓦.Tokyoの立場で言えば、営業時間中に店舗前のゴミが積み上がってる状態は非常に見た目も悪く、出来れば離れた場所に集められていた方が良かったのですが、こればかりは地域のルールでどうしようもなく。

ゴミについては、ネズミや害虫問題も絡みますから、あまりにも営業に影響がありそうであれば、契約前に不動産屋と交渉も必要でしょう。

⑥業務用スーパー

茅場町本店・神田店ともに、徒歩圏内に「肉のハナマサ」があるのですが、これは本当に助かっています。野菜は八百屋に配達してもらうよりも安いし、調味料なども一通り揃っていて、冷蔵庫などの食材の保存スペースが大きくない小規模店にとっては、とにかく毎日通って日々の食材を仕入れたりしています。

レモンやネギなど、つい八百屋への発注を漏らしてしまった時も、すぐに買いに行けるというのは、本当に心強いです。

別に業務用スーパーである必要はないですが、近所のどこにスーパーがあるか?これは必須チェック項目です

⑦駐車場、駐輪場

通勤手段次第ですが、私は開業当初は自転車、その後バイクでの通勤をしています。創業当初は終電近くまで営業していましたので、お客さまが終電まで滞在されると、我々は終電では帰れない。そうなると、必然的に自転車やバイクでの通勤を迫られた訳ですが、店舗付近で駐輪場、もしくは駐車場を借りるのが意外と大変だったりします。特にバイクは難しいです。

駐輪場が近くにないから、この物件は借りない!
というようなクリティカルな要素ではないと思いますが、意外と私は困っているので、チェック項目としてあげておきます。

⑧トランクルーム

瓦.Tokyoは本当に小さな店舗で、極力客席と厨房のスペースを確保した結果、従業員用のスペースが皆無の状態でスタートしました。

正直、設計ミスだなと思います。
女性スタッフが着替える場所もなく、結局徒歩5分程度の場所のトランクルームを借りて、そこに着替えや備品などを置いているという状況です。従業員には面倒な思いをさせてしまっていたなと反省しています。
次また店舗設計をする際は、必ず従業員用のスペースを確保すると思いますが、既存店舗はそう簡単に改装工事などは出来ないので、別の場所を確保するしかありません。

最初から完璧に店舗設計ができれば、こうした余計なコストをかけずに済んだと思いますが、これが業界未経験者のウィークポイントでしょうね、でも当時はたまたま近くに、それほど高くない(月額1万円強)トランクルームが空いていて、助かりました。

保険的に、こういう施設が近くにあるか?チェックしておくと、安心材料にはなるかもしれません。

→これについては、オープン10ヶ月後、売上が安定してきた時期に、同じビル内の別の部屋を契約し、トランクルームは解約しています。

⑨使えるもの、使えないもの

居抜きで契約するという事は、店舗にある厨房機器、備品などを買い取って使うのだと思いますが、このうち、使い物になるもの、ならないものを見極める事が重要です。

決して紙ベースの情報だけで判断してはいけません、動かしてみて、使ってみて、判断すべきです。

上記で換気扇の件を書きましたが、実際に調理をしてどれだけの煙を吸ってくれるか?そこまでのチェックをしなかった事で、工事が二度手間になってしまいました。

他にも、ワインセラーは故障していて、処分に余計な費用がかかったり、冷蔵庫は動くものの、私の店舗設計上、大き過ぎてどこにも設置出来ず、結局廃棄したという事もありました。

以上の9つ以外にも、思いついたら随時更新しますが、取り急ぎこの辺りはチェックしておいた方が良いのではというポイントについて、お伝えしました。
※冒頭の写真は、居抜きで入居した時点の店内写真です。

瓦.Tokyo 西田