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生の声で、自分の言葉で、話すこと

1週間ほど休暇を取って、小笠原諸島へ旅をしていたニシダ(理事長)です。

先日、韮崎文化ホールで開かれた、国際的な昔話研究者である小澤俊夫さんの講演会に参加してきました。(元国内外のドイツ語の教授でもあり、ミュージシャン小沢健二さんのお父さんでもあります。)

今回は、その話の内容や、それを聞いて考えたことなどを少し書いてみようと思います。

92歳になっても知的でエネルギッシュな小澤先生

昔話はどこにあるのか

先生いわく「昔話は、語られている時間のあいだにだけ存在する」です。

言葉は、もともと「音」なのだから、人は文字で物語を楽しむ前に、まず耳で物語を聴き、物語を楽しむのだと。

だから、お話を子ども達は耳で一生懸命に聞く。
そして、語ってくれた人に自分は愛されていることを感じるし、その感覚や情景をずっと記憶しているというのです。

これは子ども(私たちの普段関わっている中高生でも)と向き合う上で、とても大事なことを示唆している気がします。

いろんなものの情報がSNSで流れて来たり、ネットで簡単に検索し得ることができるようになった今。LINEで頻繁に文字を送り合い続けている今。

それでも、ユースセンターというリアルな場で生の声で、日々中高生同士や、スタッフと中高生がコミュニケーションを取り、いろんな話をすることがきっと必要だし、それはひょっとすると彼らの記憶に残り、自分をあたたかく守ってくれるなにかになるのかもしれません。

記憶に残るには

昔話のすごさは、その「再話性」にあると感じます。

再話とは、一度聞いた話を聴いた人がまた簡単に覚え、再び語ることを指します。そもそも昔話は口伝され継承されていくものだからこの再話性が無くては成り立たないわけです。

実際に自分も本に書かれている向かい話を語ってみて、聞いた人に「そのまま今の話を話してみて」といったところ、話の大枠とポイントとなるシーンは間違えず一回聞いただけでも再話できていました。

再話とは言い換えると、記憶に残ることなのだと思います。

つまり昔話の再話性を理解すると、それは昔話以外の、普段の話の中でも応用でき、結果的に記憶に残る話になるかもしれないということです。

ということで、小澤先生の著書で書かれていることをベースにしながらちょっと自分なりの考察も入れて、記憶に残る話のポイントをまとめてみます。

①シンプルに出来事を語る
 →細かい情景描写はしない(覚えられないし、何の話か分からなくなる)
②ストーリを分かりやすく
 →起承転結(時系列やシーンの転換によって印象に残りやすい)
③繰り返す
 →同じような場面が2回あって、3回目で転じるなどリズムが大事
④たんたんと語る
 →上手く語ろうとか演じようとか思わず、たんたんと

小澤先生からのメッセージ

お話を聴きながら、頭の中で場面を空想してみること。これは能動的な行動です。テレビやスマホに現れた場面を見て、受動的に楽しむのとは異なる、能動的な行動なのです。
そのこと自体が子どもにとって楽しいことです。
そして、教育的観点からしても、大変意義のあることなのです。
それぞれの場面を空想してみることは、脳を素早く働かせるということです。
耳に入った言葉を、絵に変換するのですから、否応なく脳を働かせます。
しかもその時、それぞれの言葉の内容を理解しなければなりません。
その力を養うことが大事なのです。
想像力や、日本語の力を育てることにもなるでしょう。
現代は、目で見る楽しみがあふれていますが、耳で聴いて話を理解することは、基本的な生きる力だと思います。

自分の言葉で直接語る

これらを踏まえて、やっぱり「自分の言葉で直接語る」ことがあらためて大事だなと感じています。

河原部社では「NPO×自分のなりわい」という複業スタイルを推奨しています。自分のなりわい(仕事以外の趣味でも活動でももちろんOK)をいくつか持つことで、その人はきっといろいろな実体験をしているだろうし、そこから生まれてくる自分の言葉を持っているはずです。

そういった経験や考えを持っている大人が、身近な地域の大人の一人として、日常的に気軽に中高生と話を直接する。そしてその中の少しでも中高生の記憶に残るようなものになってくれたらいいなと思います。

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