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出身在住者・出身非在住者・UIJターン者・移住検討者の若者450人の本音。


韮崎の子ども・若者支援やまちづくりに取り組んでいるNPO法人河原部社(本社:山梨県韮崎市、理事長:西田遙)は、韮崎在住・韮崎出身・移住検討者の10代~30代を対象にした「韮崎若者調査」を実施しました。(詳しい調査概要等は下記リンク参照)

さらに、韮崎若者調査回答者の方々にお声かけをし「韮崎若者座談会」も実施しました。

2023年12月実施@韮崎市内の若者が営むお店にて

それらの結果をまとめたのがこの記事「韮崎若者白書」となります!

移住・結婚・子育て・働く・まちづくり― ―
若者たちの本音から、はたして何が見えてくるのでしょうか?

※本調査は休眠預金等活用事業の一環で実施しました

【韮崎在住者&韮崎出身者の本音】(n=144人)

①居住形態について

・現在は持ち家と賃貸の比率は概ね1:1
・これからの希望は持ち家に住みたいは48.6%で最も高い
 →空き家をリノベーションして住みたいは18.8%
 →多拠点居住をしたいは11.1%
 →いまのままがいいは38.2%

📣座談会での声
「とりあえず賃貸で暮らしながら家を建てるのにいい土地探しをしている」
「正直居住形態ににそこまでこだわりはない」
空き家バンクの物件には欲しいものがない
人づてに紹介をしてもらって物件を見つけた
「多拠点で考えていて駅近で手ごろな価格のものがあれば購入して拠点として運用したい」
「高機能な賃貸住宅に住みたい」

②働き方/仕事について

・現在は会社員56.9%、自営業14.0%、その他29.1%
・これからの希望はいまのままがいい(43.1%)を除くとリモートワークをしたいの35.4%が最も高い
 →複業をしたいは31.9%(男女ともに30代が最も高い)
 →転職をしたいは28.5%
 →起業をしたいは18.1%(特に20代30代男性は約30%)
 →ソーシャルビジネスをして地域に貢献したいは26.4%

📣座談会での声
「子育てと仕事の両立が不安」
「韮崎で起業するとなった場合は仲間集めが大変だなと思っている」
「物価高で収入が不安、複業での収入を考えている」
「賃金が上がりにくく、慢性的な人員不足を感じている」
「地方の賃金は低いので東京の仕事をリモートでやっている」
「特急の本数が少なく東京通いが大変」
「いまだに女性が働きにくい企業が多いと感じている」
「仕事の選択肢が少なく感じている」

③結婚/子育てについて

結婚意向があるのは86.8%(すでに結婚しているを含む)
 →結婚を望まないは5.6%
 →分からないは7.6%
・未婚で結婚意向ありと答えた人が求めているのは、もっと出会いが欲しいが39.2%で最も高い
 →行政の婚活支援を活用したい9.8%
 →婚活支援をもっと充実してほしい7.8%
 →ちなみにマッチングアプリを活用しているのは19.6%
子どもを望んでいるのは76.4%
 →子どもを望まないのは8.3%
 →分からないは15.3%
・子どもの数としては2人欲しいが48.2%で最も高い
 →3人欲しいは38.2%
 →1人欲しいは6.4%
働きながらでも子育てができるようにしてほしいは42.7%と高い
 →不妊治療支援をもっと充実して欲しいは19.1%

📣座談会での声
核家族での子育て疲れが深刻
「移住した際に起こる実家や地域との関係性の希薄化が不安」
「出会いの場がとにかく少ない」
「結婚/子育てにかかる経済的負担が心配
ネットで情報を調べても出会いも子育てもあまりヒットせず孤独を感じている
「子育てに関してはイメージが湧かない」
「学校の先生によって子に及ぶ影響にかなりの差があるのは問題だと思っている」
「子ども達の進む未来が見えないのに、子どもを産むことは無責任だと感じて産むのを考えてしまう」
結婚できるか、また結婚しても妊娠できるかが不安
「不妊治療の専門機関がなく、都会との差を感じてしまう」
「女性の社会復帰が難しことが心配」
「男性の育休が徐々に広まってきてはいるが、会社としては働き盛りの年齢(30代)に抜けられるのは正直困る雰囲気があり、長期で休みを取りにくい。代替の職員も良い人材がいるわけでもなく、財源的にも厳しい地方では仕事が属人的になりやすいと感じている。」

④韮崎について

韮崎に住み続けたいは41.7%
韮崎へのUターン意向は26.5%
 →韮崎に帰る気はないは5.6%
・新しいお店が増え盛り上がりを感じているは62.5%
 →商店街にもっとお店が増えて欲しいは56.9%
人口減少が心配は46.5%
・子育て支援が充実していると思うは28.5%
・若者支援が充実していると思うは11.8%
・家を建てられる土地が欲しいは17.4%
・若者の政治参加を推進して欲しいは25%
まちづくりに若者の意見をもっと反映して欲しいは32.6%
・公園をもっと充実させて欲しいは37.5%
・学校教育をもっと充実させて欲しいは30.6%
・保育をもっと充実させて欲しいは31.3%
・韮崎のPR(情報発信)をもっとして欲しいは33.3%
同世代とのつながりがもっと欲しいは36.8%
 →多世代とのつながりがもっと欲しいは21.5%

📣座談会での声
「高齢者や地域のキーパーソンが亡くなり、地域や近所の繋がりや地域行事が消滅し、アイデンティティーのないゴーストタウンにならないか心配」
高齢化が推進しているので若者を積極的に誘致する政策をしていってほしい。そして移住者にとっても住みやすい街づくりにしてほしい。」
「甲斐市にはラザウォークがあり、南アルプス市にはコストコができることで相対的に韮崎市の魅力が低下することが懸念される。 なにか目玉になるような施設、企業が誘致できるといいと思う。」
関係性の固定化が進んで、何かをやる人がいつも同じなのは気になる。」
「とにかく雇用を生むことが大事だと思う。特に新興ベンチャーや飲食、観光産業が起こしやすい街づくり、環境づくりが必要」
「特定の人しか街づくりに関与していないイメージなので他人事になってしまう。」
「もうニーラのグッズは増やさないでいいと思う。もう充分だと思う。グッズを作るなら税金取らないでくれと…」
移住促進に使ったお金と移住してきた人でバランス取れてるのかなと気になる。個人の誘致より既に住んでる人の満足やわくわくを増やした方が結果いいと思う。」
「行きたい場所や店があるのと同時に 住みたい場所である。という事が 大切な事なんじゃないかなと思う。」
「釜無川を越えた南側のエリアにもスーパーが欲しい。生活用品を買うために毎度橋を渡る必要があり、少し不便」
「ドッグランがほしい!」
「いろんな政策に一貫性がないからメインとなる押しポイントを明確にするべき」
「地域活動の量や内容が、地区によって差が大きい。移住者がこんなつもりじゃなかった…とならないように、地区ごとにどんな地域活動を行っているかわかりやすくするか、地域活動がほとんどないエリアを作ることができたらいいと考えています。」

【山梨への移住意向がある若者の本音】(n=300人)

1都3県の若者の11%が山梨への移住意向あり!

・東京/神奈川/千葉/埼玉の若者(20代30代)10,000人を調査
・地方移住希望先は1位長野(15.6%)2位静岡(14.1%)3位山梨(11.1%)
・全体としては13.6%の若者が地方移住意向あり
・移住希望時期としてはすぐに3.7%、5年以内7.0%と現実的にすぐにという層は10%程度にとどまり、いずれ移住したい層がほとんど
・また起業意向は全体で12.1%

山梨への移住希望者300人を徹底調査!

・1都3県に住む若者の内山梨への移住意向がある20代男女75人ずつ、30代男女75人ずつ計300人を調査
・既婚未婚の割合は男女問わずほぼ半数ずつ
・現在の子どもがいるのは28.6%
子どもを希望しない若者は58.6%と半数を超えた
・全体と比較して子どもがいる人はすぐにでも移住したいの割合が高い
 →また子どもができたら移住したいの割合も高い

①移住する上で重要視するもの

・「保育/子育ての充実」を重視するのは59.3%
 →20代男性以外は特に重視度が高い
 →重視しないのは12.3%
 
・「魅力的な教育環境」を重視するのは60.4%
 →20代男性以外は特に重視度が高い
 →重視しないのは9.7%
 
「医療/福祉の質」を重視するのは74.7%
 →20代女性が80.0%と最も高い
 →重視しないのは3.0%
 
「自然災害の少なさ」を重視するのは73.4%
 →30代女性が84.0%と最も高い
 →重視しないのは3.3%

・「買い物のし易さ」を重視するのは80.7%
 →30代女性が89.3%と最も高い
 →重視しないのは3.0%

・「まちづくり計画への共感」を重視するのは63%
 →全体的に重視度が低い
 →重視しないのは6.7%

・「コミュニティの多様性」を重視するのは50.7%
 →20代男性が56.0%と最も高いが、全体としては重視度が低い
 →重視しないのは10.3%

・「便利なデジタル環境」を重視するのは63.3%
 →女性より男性の方が重視度が高い 
 →重視しないのは5.3%

・「職場へのアクセスなど交通の利便性」を重視するのは76.3%
 →20代男性以外は重視度が高い
 →重視しないのは2.3%

・「公共交通機関の発展」を重視するのは75.7%
 →20代男性以外は重視度が高い
 →重視しないのは4.3%

・「自然環境の豊かさ」を重視するのは69.3%
 →男女ともに20代よりも30代の方が重視度が高い
 →重視しないのは6.0%

・「公共施設の充実」を重視するのは71.7%
 →30代女性が78.7%と最も高い 
 →重視しないのは5.0%

・「地価や物価など」を重視するのは72.6%
 →30代女性が78.7%と最も高い
 →重視しないのは4.0%

「治安の良さ」を重視するのは84.0%
 →30代女性が92.0%と最も高い 
 →重視しないのは2.0%

・「行政サービスの水準の高さ」を重視するのは70%
 →男性よりも女性の方が重視度が高い
 →20代女性が80.0%と最も高い
 →重視しないのは4.3%

・「地域/まちのイメージの良さ」を重視するのは70.6%
 →男女共に20代よりも30代の方が重視度が高い
 →重視しないのは4.7%

②住む場所等の情報収集媒体について

・「インターネット」94.3%

・「SNS」70.0%
 →20代女性が80.0%と特に高い

・「WEB媒体」70.3%

・「TV」55.6%
 →活用しないの割合が15.0%

・「行政のサイト」55.7%
 →20代男性の割合が特に高い
 →活用しないの割合が16.3%

・「移住相談口」46.7%
 →20代男性の割合が特に高く、30代女性の割合が低い  
 →活用しないの割合32.7%

・「移住案内等イベント」41.3%
 →活用しないの割合34.0%

・「口コミ」50.3%
 →男女共に30代よりも20代の方が活用するの割合が高い

・「旅行」63.3%
 →30代の男性は特に活用するの割合が低い

・「新聞や雑誌」49.7%
 →20代男性の割合が特に高く、30代女性の割合が低い

③起業について(山梨移住希望の若者)

・若者全体の起業意向は35%
 →20代の女性で40%と最も高かった
 →全体の傾向としては子どもがいない若者の方が起業意向が高い
・地域コミュニティへの貢献意欲は全体で23.7%
・農業や産業を継承し盛り上げたいも全体で25.7%

④結婚/子どもについて(山梨移住希望の若者)

若者全体で結婚を望んでいるのは47.3%
 →男女ともに20代の方が30代よりも結婚を望む割合が高い
子どもを望んでいるのは41.3%
 →男女差や年齢差は特に無し
・子どもを望まないのは8%

⑤仕事/働き方について(山梨移住希望の若者)

・現在は会社員62.7%、フリーランス11.9%、その他25.4%
・今後働きたいのは大手企業39.3%、中小企業28.7%、ベンチャー企業17.3%
・社会課題の解決をしたい23.3%
 →30代男性が30.7%と最も高い
リモートワークをしたい41.7%
 →30代男性、20代女性が共に50.7%と最も高い
・複業をしたい37.3%
 →30代女性が42.7%と最も高い
・転職をしたい16.7%

⑤まちづくりについて(山梨移住希望者の若者)

・全体としては移住定住促進、人口減少対策、空き屋対策、イベント参画、子育て支援、若者支援に関わりたいという割合が30%前後と関心が高い
 →逆に関心が低いのは、自治会活動12.0%、地域愛醸成15.3%
・そもそもまちづくりに関心がないのは18.3%
 →特に30代女性は24.0と最も関心がない割合が高い

【まとめと提言】

いま韮崎に限らず全国の地方自治体で「人口減少」が大きな課題となっている。そしてその解決のためにさまざまな移住定住促進事業を行っている。
ただ、その事業を行うにあたって、きちんと主とする対象者(若い女性・子育て世代)の声を聴けているだろうか?という疑問が今回の調査を行った理由のひとつにある。なので、今回のまとめとしては若者への調査を行い見えてきたこと、そしてそこからどのような事業を行っていくべきなのかの提言をしたいと思う。(※実際に行政への事業提案も行った

①事業のつくり方へのへの提言

まず調査をする中で分かったのは、そもそもこれまで対象者を絞った調査をしていないということ。ではどうやって事業をつくっているかというと、現場の担当者が他自治体の前例等を研究したり、自力で考えて生み出しているということらしい。この状況をより良くするために「事業のつくり方」の提言をする。
・対象者を明確にして、今回のような調査を行う
 →中の人と外の人両者の意見を取る
・調査結果を元に、分析と考察を行う
・事業アイデアの案をいくつかつくる
 →行政職員だけでなく地域資源(特に人)を活用し多角的な視点を入れる
・試してみる
 →いきなり大きな予算で外部に委託とかはしない
・成果を検証して、毎年より良いものへとアップデートする 
 →辞める決断、変える決断、他のアイデアを実行する決断も大事

②要点の整理

今回の調査で見えてきたポイント、押さえておくべきこととしては、
・都心部から山梨へ移住意向のある若者は約11%程度
・その中で5年以内に移住したい層は約10%
 →なので都心部から山梨へ強い移住意向があるのは全体の1%くらいが妥当
・20代30代の女性が住む場所を決める上で重要度が高いのは「医療・福祉・災害・治安・買い物・交通機関・物価・公共サービス」
  →「教育・子育て・自然」といった地方が押し出しがちなものは重要度が必ずしも高いわけではない。
 →なので総合的に重要度が高いものが揃っている都心部の他自治体への移住意向が全体的には最も高くなる
 →逆に、現状移住してきているのは一部の地方にしかない環境をあえて求めてきている層だと推察される
・山梨移住意向者の起業意向はけっこうある20代の女性で40%と最も高かった
・結婚願望は30代よりも20代の方が高い
・リモートワークや複業をしたい割合も高い(約半数)
・持ち家に住みたい層は約半数
・結婚したい人が結婚を、子どもが欲しい人が子どもを得られるようにするための支援は大事

③提言

最後に、以上を踏まえ、以下の通りを提言する。

★情報発信
重要度が高いこと(医療・福祉・災害・治安・買い物・交通機関・物価・公共サービス)の情報が意外と自治体からは積極的に発信されていないので、そこをそもそも充実させる(定住にもつながる)と共に効果的に発信を行う。若い世代ほど口コミを重視する傾向にあるため、一次情報として住んでいる人、移住者の実際の声を元に情報発信をするしくみが良いと思う。

★複業の選択肢拡大
複業やリモートでの関りでもいいので、地域と関わりを生み出すきっかけを提供する。まずは複業で地方に関わる。その流れから知り合いができ、移住や創業につなげていく。そういったマッチングサービスも既に展開しているものがいくつかあるので提携をして効果的に進めることが対象者へリーチする近道だと思われる。創業意向も一定数あるためその層への支援策も他の自治体と差を出せるとよい。

★いまいる人の満足度を上げる
結局のところ、いま住んでいる若者の満足度が高くないまちに新たに人を呼び込んでも意味がない。なので移住支援よりも大事なのは定住支援(住み続けたいと思ってもらう)だと思う。結婚したい人が結婚できるようにする支援、子どもが欲しい人が子どもができるようにする支援は若者世代に向けて行政が取り組むべき重要な施策と言える。また暮らし方は都会との違いを生み出すことができるため、高気密高断熱賃貸やコンセプト型の分譲住宅等、新しい暮らしの提案を民間と協働する中で積極的に打ちだしていくとよい。


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