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若者へのあざっすの気持ちが、肉に化ける話

ちょっと前に地元の観光名所に行く機会があった。駐車場に停めて車を下りると、ほとんど同じタイミングで別の車がやって来た。

そこから降りて来たのは、20代とおぼしき4人の女の子。
視力0.01の人が10メートル離れたところから裸眼で見ても「インスタグラマーですね」と、即答しそうなほど、インスタばえガチ勢オーラ全開の4人。

車から降りるとさっそく、メンバーの1人であるハイトーンの髪をゆるっと巻いたショートパンツの女の子が、自撮り棒にセットしたスマホを取り出す。
そして、4人集まってインカメで、「うぇーい」とパシャパシャやっている。

#オシャレさんとつながりたい
ってか?知らんけど。

その観光名所の情緒に、ぶっちぎりで溶け込まない4人の姿は、お好み焼きにトッピングでイチゴ乗っけましたみたいな、アンバランスさを僕に感じさせたけど、それはそれ。

楽しそうにしている若い女の子のグループってだけで、見ていてグッとくるものがある。
なんていうか、「あっちで肉でもご馳走しよか?」くらい言いたくなってくる。
もちろん、実際にはそんなこと言わないのだけれど。

これは、女の子に限った話ではなく男の子にしてもそう。
美容室のお客さん(僕は美容師)に、今高校生のご兄弟がいらっしゃる。
数年前から見ているけど、背も伸びて随分がっしりとしてきた体格。部活で焼けたというテッカテカの肌。

見るからに健康的で、僕の中では育ち盛りオブジイヤーのその兄弟を見ていると、なんだか「あっちで肉でもご馳走しよか?」と言いたくなってくる。
もちろんこれも、言わないけれども。

10年ほど前のある日、僕が勤めていた会社の上司がこんなことを聞いてきた。
「お年寄りが1番好きなものってなんだと思う?」
「うーん、なんでしょう、健康関連の情報とかですか?」
「いや、そうじゃないんよ」

少しタメを効かせた後で、
「若い人なんよ。お年寄りはとにかく若者が好きなんよ」
と、上司は言った。
当時まだ30歳になっていなかった僕は、そんなもんかなぁ、と上司の言葉を大して真に受けてなかった。

しかし、あれからたかだか10年しか過ぎてない今にして思う。
あのときの上司の言葉、あながちマジかもしれんな、と。
40歳を手前にもう既に、若者ってだけで無条件に応援したいとか、飯奢りたい、とか思っちゃう僕が、現にここにいるから。
これは、上から目線じゃなくて。

若者だけが持つ特別な輝きってある。
昨今よく言われる、陰キャとか陽キャとかそんなの関係なく。
その輝きで、この世界を明るく照らしてくれることへの、「あざっす」みたいな気持ちが、僕ら上の世代の「あっちで肉でもご馳走しよか?」の気持ちに化けるのかもしれない。

そんなことを、インスタグラマーぽい4人組を思い出したついでに思った。

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