小学校のヤバい先生と信念の話

※一部フィクションです


小学校6年の時の先生はやばかった。

縄文時代は女は男に全員レイプされていた話をずっとしたり、優等生の自由研究に「早く完成して良かったですね」とコメントしたりする人だった。

おれはその先生が大嫌いだったが、子どもは先生を嫌っているとは当時自覚できない。

不思議なもので、仲良く話をした記憶も沢山残っているものだ。


話は少し変わり、6年生の時に転入生が来た。

今考えれば6年時に転校してくるのは事情がやんごとないのだが、それはそうとして、転校してきたハマジは明るい陰キャだった。

ナード感があるものの、人当たりがよく、ひょうきんだった。ただそれ以上の評価はなく、いわゆる「子どもたちが仲良くしたがる中心人物」ではなかった。


うちのクラスの男子の中では、大きく派閥が二つあった。

その二つは割と対立しており、よくピリついた空気になってしまうこともよくあった。表立った喧嘩はないが、なにかと悪口を言い合っていた感じである。

そんな状況で、先述のヤバい担任の先生が解決に身を乗り出したのだ。

方法は「学級会を開き、双方の派閥を対峙させ、一人一人の良くないところをクラス全員(同派閥も含む)で挙げていく」というもの。

もう派閥とか関係ないじゃん。

完全に狂気の沙汰だが、当時の先生の力は絶対であり、無事に開催されてしまった。しかも、事前に知らせずにゲリラ開催されたのだ。

始まったらすぐわかったが、これは非常に精神に来る拷問である。敵も味方も重い空気の中人格を否定する言葉を捻り出し、受け止めていた。当たり前だが泣いてる子もいた。おれは大人になった今でも、あんなにきつい会を体験したことがない。

おれの番も勿論きつく、ダメージはデカかった。何を言われたのかよく覚えてないほどである。

ただそこで気付いた、そういえばハマジがいない。ハマジは転校生なので派閥に属してなかったのでそこまで気を取られなかったが、タイミングの良い日に休んだものだ。

と思っていたら、終わり際に先生が口を開いた。

「有意義な会でしたね。ちなみにハマジくんは、今日の会みたいなものには出たくないと言ってお休みしています。」

おれは衝撃を受けた。

自分のスタイルに合わないことに出席しないというスタンスを表明するために、学校すら休める男がいるのか、と。

と同時に、派閥以外の人間にこの会を開くことを伝えていたヤバ教師に、本気でこいつどうかしてんなと思った覚えがある。

小学生に「こんな会出たくない」と言われても決行するメンタリティ。泣いてる小学生を目の前にして有意義だと言う視野の狭さ。ハマジの決意をおれたちに言う無神経さ。いまだにあれを超えるヤバい人には会ってない。

ちなみに、その会の後に「みんなで後腐れが無いように殴り合いましょう!」と屋上に連れて行かれた。通報すればよかった。

結果的にそのヤバい事件を通じて双派閥が仲良くなったのは、まあいい事だった。


とにかく、その一連の流れで聡明さとは、勇気とは、色んな物を学んだ。

小学生が自分の信念を通すため学校を休む判断をする、そんな勇気があるだろうか。それで休ませるハマジの両親も今考えるとかっこいい。いつかおれの息子がそんなこと言ってきたら即号泣する可能性がある(かっこいいから)


小学生の頃に学んだものなど何も覚えていないが、あれだけは鮮烈に覚えているし、今も大事にしている感覚である。

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