バンドは山に勝たなければいけない

先日フジロックに出演した。

出演自体も、ライブも、見てくれた人の気持ちも全て宝物になるような1日になったと思っている。

ただ、フジロックでどんなバンドを見てどんなライブをして…という話をしたい訳ではない。フジロックによって思い知らされたことをここに残しておこうと思った次第です。


「バンドは山に勝たなければいけない」


バンドはライブをする際、必ず入場というシーンがある。

別に出囃子が無くても、ステージに出るタイミングは存在する。その時にわかるのである。

そのバンドが、ちゃんと山と対峙しているか。ということが。


我々THIS IS JAPANというバンドは、苗場食堂というステージで演奏させて頂いた。

とてつもない豪雨、本当にとてつもなかったし、10時間くらい降り続く地獄の滝の中、足元も最悪、その状況で沢山の人が見に来てくれたし、足を止めて見てくれた人もいた。我々を見に、と言ってフジロックに来てくれた人もいる。これは奇跡みたいなことである。

そこで我々は彼らに向かって最大限の気持ちを込めて演奏をした。そこまでは最高だ。

ただ一つだけ、忘れていることがあったことを除けば。

それはつまり、「山への感謝の気持ち」である。

というが正直あの滝雨の中で山に感謝など不可能である。会場にいるすべての人の頭の中の8割が「雨死ね」になっていた状況で、自然に感謝など出来るはずもなかろう。

だが、去年サチモスのヨンスさんは「木々よ…」というMCをしたと聞く。

まさにその言葉が表すことこそが、山への感謝なのだ。

実際のところ、それがわかったのは晴天の3日目、Superflyを見ていた時だった。

フジロックで見たバンドはとにかく素晴らしく、おれが次にやれることは何なのだろうと考えていた。

曲だろうか、セットリストだろうか、演奏だろうか、立ち振る舞いだろうか。

どれもまだやれることはあるだろうが…と考えていた時に歌っているSuperflyを見てこう思った。「でかい」と。

そういえばその日見たドミコや勝井さんとユザーンさんもそうだったが、とにかくでかい。ステージ上の姿は。

そう、簡単に言うと彼らは山と対峙するために、山と同じ大きさになっているのだ。

山に勝とうとしているということである。

我々は豪雨の中、山に勝とうとはしていなかったのではないか。大きな舞台、集まってくれた人に対して、自分の演奏をぶつける事に必死で、強いて言えば雨に勝とうとしていた。雨は無敵だ、形がないから。

雨が降るフロアではなく、雨が降ってくる雲やその先を見上げたことはあっただろうか。いやない、そんな余裕はなかった。

フジロックで演奏するということは、大いなる山の麓で演奏出来るという感謝と対抗心で集まってくれた人と、そして山と向き合うということだったのだ。

Superflyはとてつもない声量が大きなこだまとなり、愛を込めて花束を振り回していた。

なんてデカいんだ…

そこでおれのフジロックの記憶は途切れている。そして強い気付きだけが残った。


そこから先のライブ、どんな小さなライブハウスであろうと、山と対峙しようと思っている。

人がいない、音響が悪い、なにもかも関係なく、そこにいる人のためにライブを行い、その先には常に山があることを想像する。

音楽は山を超えなければいけない。

唯一救いとなることは、日本には富士山という、象徴的なデカいライバルがいてくれることだ。

THIS IS JAPAN、富士山と対峙するのだ!



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コメント1件

場慣れと気持ち的な余裕もあるんでしょうけどね。昔、和田アキ子さんが1998年台49回紅白で、マイクを下ろして生歌で歌いだしたことがありました。和田アキ子さんのファンというわけではなかったのですが、会場の奥まで声をとどかせようとする彼女とその覚悟には打ちのめされました。「和田アキ子 マイク下ろしてうたう」で検索できます。
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