カンタンなビートにしなきゃ踊れないのかおれたちは

最近、自分のやっているバンド、THIS IS JAPANのことをいつもの呼び名「ジャパン」と呼ばずに公式略称の「ディスジャパ」とちゃんと呼んでいる。

誰も呼ばないあだ名を付けるのが好きなおれは、変な名前で呼んでいたのだが、ちゃんと略称を統一しようという話になったのだ。定着しないから。

皆さん、ディスイズジャパンはディスジャパです。


「カンタンなビートにしなきゃ踊れないのかおれたちは」


某月某所。

経緯は省くが、ディスジャパ達は新曲を3ヶ月で30曲作ることに決めた。

省きすぎかもしれないが、簡潔に言うと今までの曲じゃ色々厳しくない?という結論に達し、打開する方法がそれだったのだ。

オルタナティブを標榜して自らを鼓舞し、8ビートにこだわった期間はとても楽しかった。だが、とても楽しかったが故に、途中で段々とこう思うようになった。「本質はこれか?」と。

ビート、音像、どちらの部分でも自らが掲げた言葉に縛られてはいないか。作曲も良い意味でも悪い意味でも準じてしまっていないか。

そして色んな人に言われる「オルタナティブじゃない」「オルタナティブは口に出すものじゃない」

そんなの知ってる。おれたちだって、音楽が好きでバンドをやっている。おれたちの好きなオルタナティブロックと、おれたちのやっている音楽の違いがわかっていないはずないだろう。でもそんくらい好きに言わせろよ、度量の狭いオルタナだな、とは思ったけど。

まあ暗い話はなし。とりあえずそんなこんなで、いっぺん好きな音楽、主に海外のバンドをベースにアプローチを一新したかった。

これは解決策ではなく、おれたちの希望だったのだろう。行き詰まってからの選択ではなく、今後の意志を選択した瞬間だったと思う。

そしてそこからギター小山の暴走が始まった。

ボーカル杉森はまあ、所謂現実的な我々の音像というものが頭の中にあるらしく、うんうん、こういうのかっこいいよなあーと今までやってこなかったアプローチを模索しながらデモを作っていた。

その一方小山は、ディスジャパがオルタナを掲げていた時も音楽を聴き続けていた。友達が少ない彼は時々その話をバンドメンバーであるおれたちにしてくるものの、入ってくる音楽の情報量とそれを共有できる人間の数が釣り合っていなかった。オルタナ聴かずにずっとブラジルの音楽とクラブミュージックを聴いていたらしい。

結果、音楽が詰め込まれたけどアウトプットする場所を失っていたギチギチ状態の小山が解き放たれた結果、謎の集中力を発揮し、曲を量産した。

量産された曲達はいずれもオルタナとは違うアプローチと言っては聞こえはいいが、ダンスビートを軸にしたシンプルでミニマルなものが多数。はまっていた打ち込みを取り入れまくり、サンプリングされた人の声みたいなのが肝になっている曲もあった気がする。怖すぎてよく覚えてないけど。

ただその時オルタナ疲れに陥った我々はこう結論を出した。「こっちで行こう!」

それに感化され、杉森は「ブンブンサテライツみたいな音楽がやりたい」と言い始めたり(杉森の技術力により実現は叶わなかった)、まさに混沌とした3ヶ月、30曲無事に作り終えたのだった。

ただここで、その曲達をデモから実際の演奏に移行させた結果わかったことがある。

オルタナ時代にフォーマットを限定して音作りを徹底したため、基本的な音像はある程度固まった形のものが出来ていたのだ。それは純粋な資産になっていた。

そして小山が基本的にギター1本で最小限の構造でサウンドを重視した上で、コード感の美味しいところの要点は変えなかったので、所謂杉森発信の美味しいところを生かしたまま、違和感なく現在の我々の理想となりそうな「シンプルなディスイズジャパン」としてのサウンドが実現できている、と感じている。

ちなみに杉森は定期的にギターを破壊するので小山の想定する音像には計算されない。実質クビである。

かくして、「カンタンなビートにしたディスイズジャパン」が生まれた。

11月27日に発売される新譜「WEEKENDER」はそういったものの結晶であると思っている。

昔のディスジャパが好きな人にはちゃんと美味しいところが届き、そしてそれをよりソリッドに普遍的なビートで没入して聴ける、ダンサブルなサウンドに載せた曲達である。

メロディ歌詞はほぼおれが作ったのだけど、その辺はまた次回にでも。需要があればだけど。

是非ともよろしくお願いいたします。


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