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世界遺産厳島神社のある宮島を訪れると税金をいただきます。

「皆さんのご意見をいただきたいです」by廿日市市

ローカルな話題であまり知る人はいないかもしれませんが、厳島神社を擁する廿日市市では、宮島を訪れると100円程度の税金を徴収するという条例を来春制定しようとしています。

#そんな議論をこのコロナで観光客が激減している時期にやってるの

「宮島訪問税」というそうです。宮島を訪問すると100円税金がかかるよ、ということです。専門的には、「法定外普通税」というのだそうで、地方税法という法律で定めた「住民税」や「固定資産税」などの地方公共団体の標準的な税とは異なる廿日市市独自の税金です。

今後、市として全国的にパブリックコメントを募集するそうですので、皆さんのご意見も是非寄せていただきたいと思います。

税金を取る理由

宮島には昨年まで400万人を超える観光客が訪れています。宮島は、人口1,500人程度の小さな島です。この島に400万人の観光客が訪れることによって、ゴミとか自然環境保護とか市がやらなきゃいけない仕事が増えてお金がかかるので、その原因である観光客の皆さんに原因者として税を負担してくださいという、というのが税金を取る理由、理屈です。

要するに、ゴミとか環境保全とかは、市の税金で行う仕事ですが、市の税金は通常では、その市に住む人から徴収するので、多くの観光客の来訪によって生ずる宮島の行政に対する需要(仕事)は市に住む人の税金ですべて賄うのは不合理でしょ、だから、原因者である訪問する人から税金をいただきます、ということらしいです。

ま、何となく理屈があっているような気もします。また、宮島という観光地の維持にお金がかかることは事実です。廿日市市の税収も人口11万人の160億円程度で、面積が490㎢もあるので、街全体の経営にもお金がかかり、決して潤沢な財源があるわけではないので、財源として色々と思案するのは分かります。

税金は取れるところから取る

まあ、税金は取りやすいところから、負担感を感じないようにとることが、政治的には肝要です。税は政治権力の本質的なもので、一方的に課すものですから、本来不人気なものです。

この点「訪問税」は良くできています。観光客は市民ではありませんから、市長、議員の地位を脅かす人たちが負担するわけではありません。

徴収の方法も、そのほとんどがフェリー代に上乗せする形で課せられるので、税とは知らずに観光客は支払います。ちなみに宮島へ渡るフェリー代は170円ですからこれを270円にするということかと思いますが、観光客が顔をしかめるような料金ではありません。

これで、毎年4億円の税収が入ると、小さな街の廿日市市にとっては貴重な財源です。

市長も議会の多数ももろ手を挙げて推進しています。一部の議員は反対していますが。

「訪問税」は、野卑である

私は、こう思います。もっと分かりやすく言うと下品です。

税に上品も下品もないと言えばそれまでで、否応なしに取り立てると言えば、取られる方からすれば、これは全て税は下品となります。

しかし、税が下品とは言われないのは、公平に負担し、きちんと還元されて納得性があるからです。

観光は、歴史や文物、自然を観て得るものが多い地を訪れることを言います。そのような地では、観光に訪れる人が欲するままに、人が休むために宿ができ、食を楽しむために食堂ができ、お土産が生れます。これらは、観光地をより楽しんでもらう営みとも言えます。

その結果として、お金も落ち、その地は豊かになります。豊かになると、今度は、その地の営み(観光事業)は、観光地の歴史や文物、自然に加えて楽しみを産み、更に人を呼びこみ、その地はさらに豊かになります。これを観光産業というのではないでしょうか。

だから、観光で栄える地域も増えるわけです。栄えた結果、観光客が心地よく過ごせるようにゴミがなくきれいにするなどの生活基盤を整えるのは当たり前のことです。

しかし、訪問客が来るせいで行政需要が増えるので税金をかけるというのなら、それは、観光が産業として成立していないということを世間に公言するようなものです。

宮島は、観光客が来るけれど稼げていないので、観光客の皆さんは、税金を直接払ってくださいと、廿日市市は世間に訴えようとしているわけです。同じような大社がある伊勢市や出雲市ではやらないことですし、地続きでこれをやろうとしたら関所を作って、税金を徴収しなきゃいけません。そんなことをやったら観光客は来なくなります。

この点、「島」ということに乗じて税金を徴収しようとしているところも、野卑です。

もっと観光客に喜んでもらって、満足してもらってお金を使ってもらって、その一部を税金としていただき、観光客に還元していくという観光産業の循環で行政の仕事を行っていくというのが正道です。

宮島の観光事業者さんらは自らすべき努力を捨てて、役所に税金を取れと言っているのでしょうか。そうだとしたら、これを野卑と言わずとしてなんというのでしょう。もちろん、反対している宮島の観光事業者さんも多いですが。

トン税を応用して頻繁に通う訪問者には割引

もう一つ野卑な点があります。

訪問する人は観光客ばかりではありません。宮島に仕事で通う人も訪問者ですので、これらの人にも税はかかります。しかし、毎日のことになりますから負担は馬鹿になりません。

そこで、「とん税」の徴収方法を応用するというのです。「とん税」は、港湾を使う船が入港するときに、その船の「トン数」に応じて課せられる税金ですが、頻繁に入港する船には一時納付の割引制度があるので、それを応用して、この訪問税も何回も「訪問」する人は1月500円程度で済むようにするそうです。

これも下品です。

だって、頻繁に訪れる人の方が宮島で行政サービスを余計に受けるはずなのに、税を割り引くのです。理に合わない理屈です。ただただ、「訪問税」を導入したいがためのなりふり構わぬ屁理屈です。

本来、観光産業振興によって賄うべき行政の需要(仕事)の財源を観光客に直接求め、理に合わない割引制度をとる、世間から後ろ指を指されかねない「訪問税」をつくることは廿日市市の恥になるのでやめた方がいいと、私は思います。

皆さんはどう思います?

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