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『月刊 岩ときもの』きまぐれエッセイ~国際ロマンス詐欺に遭ったら~

 先日、『月刊 岩ときもの』(※)の編集長のインスタグラムのダイレクトメッセージに、ロシア人宇宙飛行士を名乗る方からメッセージが届きました。その会話について、日を追っての記録を以下に記します。

DAY 1 Ariukaという名前について

 その方のプロフィールを見てみると、つい最近ソユーズでISSに送られた、実在する宇宙飛行士の名前と写真が上がっています。フォロワーがなんと!日本人だけなのです。とっても不思議な宇宙飛行士さんではありませんか(*‘∀‘)(ネットでダウンロードできる写真ばかりでしたし、新しい写真の更新がなかったのですが、それはとりあえず気にしないこととして)
「ISSからこんにちは」
とメッセージが来るので、ロシア語で挨拶してみたら、
「ロシア語が話せるんですか?」
と日本語で返ってきました。

以前、モンゴルのロシアとの国境そばの町に住んでいたので、市場に買い物に行くとよくブリヤート人(アジア系の顔立ちでロシア東部に暮らす民族。)に間違えられてロシア語で挨拶されていたから、「こんにちは」と「ありがとう」はロシア語で話せます。
ところで、私はAriuka(アリョーカ)というロシア語由来のモンゴル名があるのですが、この単語はロシア語で「清い」という意味があるとモンゴル人に聞きました。それは本当ですか?
とお尋ねしてみたら、少し間を置き、
「あなたは美しい名前を持っています」と日本語で返ってきました。
そして、
「あなたは結婚していて子供がいますか?」
と尋ねられました。そして私は返します。
「私は仕事に戻ります。」と。

DAY 2 バイカル湖に行くのが夢です

日が変わって、会話再開。
「あなたはどうして日本に興味があるのですか?」と編集長がそのロシア人宇宙飛行士と名乗る方にお尋ねしてみます。すると、
「日本人の文化と食べ物が好きだからです。地球に戻ったら、息子と一緒に日本に行きたいです。」と返ってきました。
「新型ウィルスが収まることを願っています!私もロシアのバイカル湖に、モンゴル人の友達と一緒に行くのが夢です。では、着物リメイクの展示即売会の準備をしますので、See you!」とお返事をしたら、
「あなたは結婚していますか?私は戻っていて、すぐに私の息子と一緒に日本を訪問したいと思います。」という内容のメッセージが送られてきました。
え?ISSにいるんじゃないの?ダイブして帰ってきたの?あの火球騒動はそういうことなの?(いや、そしたら消えちゃうから違うか(笑))そして、この状況で来られても困るし、世界のこの状況を見て行く行かないの判断が出来ないのに宇宙飛行士になれるのかしら?とか、いろいろ考えを巡らせながら仕事に戻ったため、この日の会話はこれにて終了。

DAY 3 カザフ人の結婚式の話

「おはようございます。日本は今、午前9時31分です。今回の打ち上げは、どこからですか?カザフスタン?今日は私はbookkeepingの勉強をするのですが、先生が遅刻してまだ来ていません。」
と、簿記の先生の到着を待っている間の隙間時間に、このロシア人宇宙飛行士(と名乗る方)にメッセージを送ってみた。すると、すぐにお返事が!
「はい、カザフスタンから」
「私はカザフスタン人の友達の結婚式のカメラマンをしたことがあります。」と返事を書きながら、2011年にカザフスタン人の友人の結婚式の動画を撮ったことを懐かしく思い出しました。すると、
「簿記の先生はいつ来ますか?あなたは結婚して子供がいますか?」と宇宙飛行士と名乗る方からのお返事。
ここで簿記の先生が到着したので授業に入り、この日の会話は終了。

DAY 4 サイバー窃盗を怖がっています

「こんにちは、親愛なる友人」と、宇宙飛行士と名乗る方からこの日もメッセージが来ました。
宇宙飛行士の仕事はとても忙しいと思うので、個人宛にメッセージが送られる人ということは、きっとものすごい情報処理能力の高い方なのでしょう!これは是非とも『月刊 岩ときもの』にご登場いただき、パフォーマンスをして全世界に広めていただきたい!出来たら参加費も払ってほしい❤という前提で、お尋ねしてみました。
「あなたは、ISSでなんの仕事をしていますか?インスタグラムでメッセージのやり取りは許可されていますか?」
すると、宇宙飛行士と名乗る方は、こう返してきました。
「グローブボックスを使用して・・・飛行機の着陸装置の構築につながる研究をしています。インスタグラムは、ISSでの私の仕事に安全ではありません。」
なんかよくわからんけど、難しい研究をしている割には頻繁にメッセージが来るので、「ISSでは自由な時間がたくさんあるのですか?」と尋ねてみました。すると・・・
「私はたまたまNASAのコンピュータを制御しています。ISSでの仕事のため、ここにいる時間はめったにありません。インスタグラムでのやり取りは許可されていません。サイバー窃盗を怖がっています。」
えぇ!?サイバー窃盗??それは私も怖いわ!!ということと、
「あなたとは、ここ数日、毎日やり取りをしています。不思議です。」という疑問をぶつけてみたら、
「私は一般の人とコミュニケーションを取ります。それぞれの注文をもっとよく知ることが出来ると感じていました。私は人生のパートナーを探しているからです。」と返ってきました。
ISSから送られるインスタグラムのメッセージのやり取りだけで結婚を取り付けようとすること自体、なかなかの無謀な計画であります!そして、そんな薄いつながりで愛を育む自信は、私にはないのであります。
「だからあなたは結婚しているかどうかを何度も聞くのですね。私はご期待には応えられないです。」と丁重にお断りいたしました。ごきげんよう。宇宙飛行士と名乗る、フルーツポンチがお好きな殿方・・・(初日にフルーツポンチを食べた、という会話があったことを書き忘れていたので、ここに記しておきます。)

「はい、そういうわけで私はあなたが結婚しているかどうか何度も尋ねます。」
「わかりません。あなたの期待に任せて・・・」
「私は理解していません」
「しかし、あなたは結婚していますか?」

しばらくこの殿方のメッセージが続いたのですが、これ以上はお返しできずそのままにして、私は仕事に専念することに。

DAY7 インスタグラマー

丁重にお断りしてもなおも続く「あなたは結婚していますか?」攻撃に辟易して、しばらく放置。そして久しぶりにその宇宙飛行士と名乗る方のインスタグラムを開いてみたら、そのアカウント名はインスタグラマーとなっており、写真が全て消されて、アイコンもデフォルトの人型イラストに戻っていました。
その宇宙飛行士なる方からの、「あなたは結婚していますか」という質問に対して、
「しています」と言ったらどういう展開となったのか、
「独身です」と答えればどうなったのか、
わからないまま、のDAY7にて、『月刊 岩ときもの』夢の宇宙飛行士の回はお蔵入りとなったのでした。

(おわり)

※ 『月刊 岩ときもの』とは、着物を着て岩場に行き写真を撮り、それを雑誌の表紙風に加工してインターネット上にアップするという活動です。紙媒体はなく、インターネット上でしか見られない雑誌で(しかも表紙ばかりがたくさん!)、コアなファンの方々からは「幻のエア雑誌」と呼ばれています。
『月刊 岩ときもの』facebookページ
https://www.facebook.com/iwatokimono/


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