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うちはSEOじゃなくGEOですから

先日、ホームページのアクセス数を増やして収益を上げませんか?という電話がかかってきた。『月刊岩ときもの』(※1)の編集長 了孔が自ら起業した、着物アクティビティの案内のホームページ(※2)を見て電話がかかってきたのだ。

「着物のレンタルは、巣ごもりから解放された方々に魅力的なサービスだから、これから収益を上げる可能性がある大きな分野です」とか、「SEO対策をしっかりされた会社で、1カ月で1億を超えたところがある」などなど、とっても魅力的なことをおっしゃるので、「ふむふむ」と聞き入ってしまった。
うちの事業は、立ち上げてすぐに新型コロナウィルスの影響を受けたので、ホームページを積極的には広報していなかった。なのに、電話をかけてきた。一体どうやってうちのサイトまでたどり着いたのか?それを尋ねようとした瞬間、私のスマホが「ピピピ」と鳴り電池が切れてシャットダウン、電話が切れてしまった。金曜日の夕方のことで、営業のお電話だからわざわざ日を改めてかけてきたりはしないだろうと思っていたら、週明け、またかかってきた。

「ターゲット層を調べ、検索キーワードを絞り込み、それをホームページに反映させSEO対策を十分にされれば、多くの方々がサイトを訪れて、お客さんとしてご参加されますよ。当社のサービスは、キャンペーン価格で破格のお値段で提供していますから。好事例となった暁には当社のサイトでご紹介させていただきます!」と、またまたとっても魅力的なことをおっしゃるのである。ついつい「ふむふむ」と聞き入ってしまう。
20分くらいお話を聞いたところであろうか。前回の電話で聞いてみたかった質問をしてみた。

「どうやってこのサイトを見つけられたのですか?」と。すると比較的新しサイトで更新されており、個人事業主さんのサイトの中で、収益が見込める方を選んでお電話しています、とのことであった。そういうことならば、とまたまた聞きたくなった。

「うちの事業は、人気が出る可能性があると見込まれていらっしゃるのですか?」と聞いてみた。すると「巣篭りから解放されたい方々が参加されると思っています。着物を大切にしたいというお考えに賛同する方も多いと思い、私自身も身内の着物の活用を考えているところですから、必ず需要はあると思います。」とうれしいことを言ってくださるのである。

「一か月に1億を超えた会社さんがあるということですが、うちは1人でやってて、着物アクティビティの参加費が一人8,500円ですから、1カ月に1億円超えるのは少し難しいような気がします。もっと収益を上げるにはどうしたらいいでしょう?」と聞いてみた。すると、「それぞれの事業により収益は変わりますから、先ほどの事例はあくまでご参考の例として挙げたので、御社のサービス形態と異なるのですぐに1億円とはいかないとは思いますが、必要のありそうな検索キーワードだけをお調べしますから、それを聞いてからサービスを受けられるかどうか考えられても良いかと思います。」と魅力的なご提案をいただいた。検索キーワードを知りたい!と、前のめり気味になった時、お電話先のご担当者様の声のトーンが少し変わってきた。
「ご興味のある方は、30分ほどご説明させていただいて、お決めいただいています。この件に関するデータと共に、上の者から改めてご連絡差し上げます。」と丁寧におっしゃって、40分以上話し込んでいた電話をいったん切ることとなった。

しばらくして、再度電話がかかってきて、別の方(上司の方?)とお話することとなった。はじめにお電話をくださった方に説明した、着物アクティビティの事業について再度ご説明申し上げた。「着物を着て、ちくちくして出来た作品と一緒に地方の田舎を巡り、写真を撮って、ご希望の方には『月刊 岩ときもの』に出ていただくサービス」とお伝えしたのであるが、ちょっと間があったので、お尋ねしてみた。
「『月刊 岩ときもの』のサイトはご覧になりましたか?」と。すると相手の方は、「今見ています。これはなかなかニッチな需要ですね。コアなファンの方々に提供するサービスで、サブカル的な方々が参加されそうですが・・・場所は大分県の東の端なんですよね?こんなところに人が来るんですか?」と逆に尋ねられる。そして私はお返しする。
「大分県の地域課題解決型起業補助事業で起業した事業でして、田舎で着物を着て、その場所を歩くことで地域を盛り上げることがコンセプトなので、田舎で行います。とにかく、地方に人々に来ていただくことに主眼を置いているんです。オリンピック需要も見込んでいましたが、今回の新型コロナウィルスで事業をいったんストップさせて、今は着物のリメイクの方を動かしています(※3)」と。

お相手の方は質問の方向を変えてきた。「うちのサービスを受けることになったとしたら、月に何人のお客様がいらっしゃったら、広報費をお支払いできますか?」とお尋ねになるので、「月に10人以上の参加がないと、難しいですね」とお返事したところ・・・

「果たして大分の端にお客さんがたくさんいらしゃるんですかね?かなりニッチなサービスとお見受けします。今後、御社の事業にあったサービス内容がありましたら、改めてまたご案内させていただきます。」と先方からやんわりお断りされた。

なんということでしょうか。収益拡大のチャンスとうたっておきながら、最終的には、「ニッチでコアなファン向けのサブカルサービスに需要があるのか?」とか、「田舎にそんなに人が集まるんですか?」と言われ、二重三重にパンチを食らわされて煮え切らないのである。

次にまた同じ電話がかかってきたら、言ってやりたい。

あれからうちはSEO対策ではなくGEO(※4)対策をしたので、大分の端の田舎にどっと人が押し寄せ収益が10億円を超え、嬉しい悲鳴を上げているところなので、お宅のサービスは必要ありません。なんなら手伝いに来てください、と。

20200918号(記事-03)

※1 『月刊 岩ときもの』とは、着物を着て岩場に行きそれを写真に撮り、雑誌の表紙風に加工してインターネット上にアップする活動。紙媒体はなく、インターネット上でしか見ることが出来ないため、コアなファンの方々からは幻のエア雑誌と呼ばれている。
『月刊 岩ときもの』facebookページ
https://www.facebook.com/iwatokimono/

※2 着物アクティビティの案内のホームページ:「川道商店」
https://kawamichi-oita.com/

※3 編集長了孔の運営する着物リメイク作品販売サイト:
https://minne.com/@kawamichi344

※4 GEO:「地球、土地」の意味。又は、geology(地学)、geography(地理学)の頭文字の略。『月刊 岩ときもの』は岩ときものがテーマなので、GEO対策が必須。ちなみにSEO対策とは、自分のホームページをGoogle等の検索結果の上の方に表示させるテクニックのこと。


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