カンヌライオンズ 2022速報 by 銀河ライター【2日目】
エンタメ系とクラフト・デザイン系の部門が発表に! 審査員・佐藤カズー氏によるコメントも。
現地から、その日のうちにお届けする「カンヌライオンズ2022速報」2日目です。
今日はエンタテインメント・ライオンやデザイン、クラフト系ライオンを中心に計7つの部門が発表になっています。
まずは審査を終えたばかりの日本代表ジュリーのコメントを。
「エンタテインメント・ライオン・フォー・ミュージック」の審査員を務めた佐藤カズーさん(TBWA\HAKUHODO・TBWA Asia/チーフ・クリエイティブ・サステナビリティ・オフィサー)は、今回の審査をこう振り返りました。
「カンヌ・ライオンズの審査は3回目ですが、いままでで一番楽しく充実した審査でしたね。『音楽の力ってなんだろう?』というテーマを、この機会にもう一度審査メンバーと共に掘り下げてみたいと思って臨みました。
個人的には"マイナス・ミュージック"という視点から審査しています。つまり、音楽を抜いた状態で成立するクリエイティブは不十分。あくまで音楽を主役に据えて、ブランド、社会、カルチャーを"ムーブ・フォワード(前進)"させているものを評価しようというスタンスです。
グランプリをはじめ今年の受賞作を見渡すと、ブランドが音楽カルチャーにブレンドインしてユーザーに新しいナラティブを生んでいる作品や、アーティストとブランドが単なるタイアップ出なく共犯者として社会にインパクトを作っていく作品が目立ちました。
パワーオブミュージックがフルに発揮されている作品群となったのではないでしょうか」
というわけで、早速「エンタテインメント・ライオン・フォー・ミュージック」のグランプリから紹介していきましょう。
クレジットは以下の順です。
タイトル
企業名(ブランド)/商品名
アイデア&企画+制作会社
エントリー国
エンタテインメント・ライオン・フォー・ミュージック部門
This is not America ft.IBEY
Resident
Doomsday Entertainment,Los Angeles他
USA
佐藤カズーさんはこのMVを次のように読み解く。
Residente(レジデンテ)はプエルトリコのラッパー・シンガーソングライター。2019年カンヌの同部門でグランプリを受賞した"This is America"(チャイルディッシュ・ガンビーノ)への"返歌(オマージュ)"も映像内に散りばめている。見比べるのも興味深い。
参考:This Is America
エンタテインメント・ライオン・フォー・スポーツ部門
※詳細は以下のサイトで。
Nikesync
Nike/Nikesync App
R/GA,London
United Kingdom
月経周期に合わせて、ユーザーのコンディションに適したトレーニングメニューを提案してくれるナイキのアプリ。
エンタテインメント・ライオン部門
Eat a Swede
Swedish Food Federation/Eat a Swede
McCANN,Stockholm+Colony ,Stockholm他
Sweden
「スウェーデン人を食べよう」。そんな衝撃的タイトルのプロジェクト。
2050年、世界の人口は100億人になると言われている。地球環境を破壊することなく、それだけの人口が暮らせるだけの食料を生産することができるのか? 科学者の中には「もはや人を食べるしか気候変動への解決策はない」と提案する人までいるようだ。
食料のサステナブル化がもっとも進んでいると言われるスェーデンの食品連合会は、この提案にあえて"乗っかる"ことにした。
研究室で人工培養された"人肉"を、各界のキーパーソンに試食してもらおうとする一部始終をドキュメント映像化。食料問題への社会的関心を高めようとしている。
デジタルクラフト部門
Back up Ukraine
Polycom+Unesco/Preserve Regional and cultural History, and promote cultural diversity
Virtue worldwide,New York
USA
市民とテクノロジーの力で、ウクライナの文化遺産と歴史を戦火による破壊から守ろう(3Dモデル化してバックアップしよう)と呼びかける参加型プロジェクト。オフィシャルサイトは以下。
デザイン部門
Portuguese
penguin books
FCB,Lisbon
Portgal
1933年、ポルトガルではファシストが政権を奪取し、全体主義的価値観を肯定する憲法が施行され、その体制は1974年の民主化(カーネーション革命)まで続いた。
このプロジェクトでは、同国の詩人や画家たちが、過去の非民主的憲法を記した本を「ブラックアウト・ポエトリー」という手法で再構成。表現と言論の自由の意味をいま一度考えようと呼びかける。
※ブラックアウト・ポエトリー:既存のテキストから一部の文や文字をピックアップし、別の文脈やメッセージを浮かび上がらせる表現手法。
ポルトガルによるカンヌライオンズの初グランプリとのこと。
インダストリークラフト部門
Hope Reef
Mars Pet Food/Sheba pet
AMV BBDO,London
United Kingdom
海はペットフードの原料となる海産物を育む場所でもある。
「シーバ」は2018年からサンゴ礁の回復イニシアチブに取り組んでおり、世界中で185,000平方メートル以上のサンゴ礁を再生する計画だ。プロジェクト関連のYouTube配信などで得られた収益は、同プロジェクトにすべて還元するという。
プロジェクトを広く知ってもらうフックにするため、インドネシア・スペルモンド群島にある世界最大級のサンゴ礁(プロジェクトのスタート地点)では、「HOPE」のワードの形になるようにサンゴを植えた。ワードはGoogle earthからも確認できる。
フィルムクラフト部門
The Wish
Penny
Service Plan Germany,Munich+Iconoclast,Berlin
Germany
ドイツのスーパーマーケット「ペニー」によるクリスマスCM。「クリスマスに本当にほしいものは何?」。そう尋ねる息子に母は過去を振り返りながら、「あなたに若者らしさを取り戻してほしい」と語る。そのわけとは? パンデミックで失われたものが何かを考えさせる。
今日発表のグランプリは以上です。
「みんなの銀行」セミナーに行ってみました
セミナーのほうも相変わらず盛り沢山。
すべてを見るのは「到底不可能!」ですが、今日参加できたもので言うと、「みんなの銀行」チームによるセッションなど面白く聞きました。和気藹々と雰囲気もよく。
「ビジネスが体験をリードするのではなく、体験がビジネスをリードする」
ビジネストランスフォーメーション周りは、昨今のカンヌで注目を集める領域です。今年新設された「Creative BtoB部門」の結果も気になるところ。
「みんなの銀行」のクリエイティブに関しては、もうすぐ刊行される『広告白書2022』の中で、「THE FIRST TAKE」などの事例とともに、幾分こってり目に分析させていただいてます(宣伝です)。
今日はこんなところで。
(追記)
カンヌに来られているみなさまへ
6月23日(木)21:30頃〜の現地勉強会@キラメキハウスの募集を開始しました(無料)。感染対策のため、人数把握をしたいと思います。ご希望の方は以下のFBイベントページよりお申し込みください。
https://www.facebook.com/events/376858094327519
※会場への入り方なども上に記載しています。
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