ブルーベリー

子供の頃。幼稚園児だったかはたまた小学校低学年の頃であったかは失念してしまったが
「ブルーベリージャム」
という食べ物に並々ならぬ憧れを抱いていた時代があった。

何で知ったかも朧気で、当時NHK教育で放送していた「ひとりでできるもん」という子供向け料理番組であったように記憶している。

ジャムといえばいちごかマーマレードしか知らず、ブルーベリーも生で見たことがない。
未知の食べ物に対する憧れは膨らむばかりであった。

そんなある日、母親がブルーベリージャムを買ってきてくれた。
あれが欲しい、とねだっても滅多に買ってもらえることなどなかった三人姉弟の長女にとって、それはそれは食卓を揺るがす大事件であった。

翌日の朝食、トーストした食パンにマーガリンとブルーベリージャムが塗られたものが出された。 小さなBB弾ほどの果肉が、スプーンで潰され損なって隅に固まっているのも嬉しかった。
宝石の図鑑で見た、アメシストのようだとも思った。
口に広がる甘酸っぱさは、今まで心待ちにしていた時間に値する美味しさだった。

だがしかし、約1週間に渡り朝食が同じメニューとなってしまったことが引き金となり、私のブルーベリージャムブームはあっけなく幕を閉じた。
子供が気に入ったからと同じものを出し続けるのは、母の悪い癖であった。
(幼子を3人抱えての朝食の仕度は大変であっただろうな、と今なら思えるが)

それでも、あの幼い頃のブルーベリーへの憧憬は私の中に深く刻み込まれているらしく、今でも何かしらのスイーツを食べるときはついついブルーベリー味のものを選んでしまうのである。

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