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2020年こころに残る旅

マチュ・ピチュへの旅

わたしは旅が好きです。武者修業よろしくバックパックで、若い頃から諸国を歩き回りました。

2020年の正月明けの三週間、次男とメキシコ、ペルーの旅に出かけたのは、今から思うと全くの好運でした。この二年越しの計画を実行に移せたのが、2020年の唯一の海外の旅となり、そしてこころに残る旅となりました。

伊丹ー成田ーメキシコシティーリマークスコと次々に飛行機を乗り継ぎ、途上の町々で道草を食いながらの旅を楽しみました。クスコからは、巨大な落石がときおりふさぐ道をタクシーがこれを避けながら進み、オリャンタイタンボへ。その後、乗り換えたディーゼル列車は谷あいをスイッチバックを繰り返してゆっくり走り、丸一日がかりでようやくマチュ・ピチュ村にたどり着きました。

マチュ・ピチュ遺跡で感動したもの。峠から眼下に見下ろす石積と水路の遺跡と棚田の景観。

つづれ折れの道をバスで1時間。遺跡の入口で登録を済ませて上りの道を歩き始めて峠に到ると突然視界が開け、遺跡が現れました。新聞やテレビ番組でしばしば目にする風景ですが、朝霧が太陽に照らされ、流れるように消え去ると、眼下に遺跡や周囲の山々が出現しました。

ワイナ・ピチュ山のインカ道

マチュ・ピチュ遺跡からワイナ・ピチュ山への登山は、雄大なアンデスの山並みを見ながらの道のりでした。けれども、大変ハードで危険な山登りでもありました。インカ帝国当時の見事なまでの石組みの道、勾配のきついインカ道が細く長く山頂まで続いているのです。足を滑らせて滑落、ケガする観光客が後を絶たないようです。死亡事故も頻繁に起こるようです。安全に配慮した対策が十分でないのはお国柄でしょうか。対照的に、わが国では、安全への配慮が過ぎて、景観が台無しになることもしばしばです。

わたしは高山病にかかったのか、地球の裏側まで旅した疲れか、風邪引きのためか、あるいはまた時差呆けかよくわかりませんが、息切れがひどく、呼吸困難に陥りました。背中の荷物を次男にまかせ、なんとか自力で登り切りましたが、なかなか厳しい登山でした。

帰国してほどなく中国武漢からの新型ウイルスの感染が世界に拡がっていることが伝えられると、コロナ、コロナ、コロナ一色となり、「袋の中のねずみ」の一年となりました。皮肉なことに、中国政府がもし昨年12月初旬に最初の発症が認められたとされる武漢でのコロナウイルスの感染をいち早く公表していれば、この想い出深い旅も実現していなかったかと思われるのです。


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