「カワイイ」は越境する。いつか世界を救うのは"カワイイ"という感情かもしれない。
朝起きると窓ガラスがしっとりと濡れていた。雨粒がべったりと張り付いてアメーバのような模様をつくる。窓越しの世界は薄暗くぼやけてよく見えない。
「はあ」
無意識のうちにため息が漏れた。今日は傘を差して出かけるのか……と気分もじんわり湿っていく。いつものように顔を洗い、歯を磨き、乾いた服に袖を通し、いつもの荷物に傘をくわえて家を出る。
ただ雨が降っているだけなのに足取りは重い。「傘を差す」という行為がくわわるだけで、なんて億劫で憂鬱な朝になってしまうのだろうか。
ーーそう