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風情、佇まい、そしてサラジェシカ再び

    And Just like thatのポスティングをしたら、知り合いの人にSex and the Cityも勧められ、第一話から見始めています。まずは俳優達が別人のように若くてびっくり、90年代のNYに住むシングル達の色んな意味でアクティブなライフスタイル、そしてなぜかどの男子も今と比べてマッチョぎみでなんだかダサい。リビングルームで見てるので、いつローティーンの娘が来るかわからず別の意味でドキドキしながら緊張して見てます。

 Sex and the Cityのイントロの音楽が始まる、スカイスクレイパーを背景にピンクのタンクトップに白いチュチュ姿のCarrieが歩く。豊かなカーリーブロンドの髪が揺れる。自信たっぷりに歩いている時に通り過ぎるバスからの泥水しぶきを浴びてしまい、バスを振り返ると自分の広告が。このシーンだけでも大都会の空気感が溢れ出てきます。

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 昨日オーダーしていたWickett and Craig社の茶色のヌメ革が届きました。表面に凹凸のある加工が施してあり、色が完全に均一でなく、ナチュラルな雰囲気があるウイスキー色、柔らかでぽってりとして何とも言えない風情がある革です。オーダーするときに厚さを表すOzを選べるのですが、あまりヘビーでないものにしたので重すぎなく、それなりに肉厚なのにどこか軽やかです。大きな革を購入し、アトリエの床に広げてみると、いつもその革が皮膚であった時のことに思いを馳せます。どういう牛さんだったのかな・・・。こうやって美しい革へと生まれ変わり、私の元へやってきた。その命に感謝します。

 風情や佇まいという言葉に惹かれます。改めて意味を調べてみると風情の意味は情緒、独特の趣、味わい、気配、様子、ありさま、とあり、佇まいの意味は立っている姿、ものの姿、ありさま、人の生き方、暮らし方、また転じて生業、とありました。
 英語で風情はstyleとあり、佇まいは英語でappearanceだそうです。うぬぬ、絶句・・・。これら日本語が表す意味合いが英語に全然置き換えられていません。これらは英語にはない表現なのかもしれません。
 私が考える風情はたなびく風の中から立ち現れるようなイメージ、佇まいには静けさの中でくっきりと輪郭をあらわにするようなイメージがあります。これら自分の感覚に訴えかける、曖昧などうやっても掴みようがない事が色々なものを選ぶ時の判断基準になっています。面白いなと思うのが、西洋の社会にこういった言葉がなくてもそれらを想起させるものや人、ファッション、音楽、アートなどといったものは存在するということ。例えば先日クリスマス時に自分へのプレゼントで購入した、grandma (おばあちゃん)という名前がついたアルパカのセーター。アメリカ人の女性がデザインしているブランドなのですが、薄いモカ色で、しっとりした風情があり、その名前の通り、おばあちゃんになっても着たくなるような佇まいがあります。ちょっと前に知り合いの人も大好きだというのがわかって話が盛り上がり、お互いに60代になっても着られることが服を選ぶ基準になっていること等を語り合いました。人それぞれの感覚によって見える世界は違いますが、身につけるものによって趣味を表現すること、それによってコミュニケーションが生まれることもある。これらはとても主観性が高いのに、誰かと共有できるところが面白いと思います。
 ものづくりをしていて一番難しいと感じるのが、こういう自分の表現したいイメージを形にすることです。こんな曖昧模糊たるものに思いを馳せつつ、ものづくりを進めています。

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 サラジェシカパーカーがSATC(Sex and the Cityの略です。長年のファン風。)の撮影で着た衣装を中心に、自身のファッションを語る内容のヴォーグのYouTube動画を見ました。撮影時の感想と共にファッション変遷を語る、ファンには必見の内容だと思います。そのどれもがハイファッションで私のテイストとは全然違うのですが、そのかっこよさ、贅沢さ、非日常性は見ていて気持ちが良い。そこで彼女は自身が思うCarrieのスタイルについて、「Carrieは私自身よりファッションに対してもっと大胆で、熱くその世界に浸りきったような感じ。私はむしろ傍観者的なところがあってたまにCarrieのような世界に足を踏み入れてみる」と話しています。でも彼女が自分のスタイリングで見せてくれた最後の柄x柄のコーディネートは本当に可愛くて、ファッションをこよなく愛し、自分のセンスに自信がないとできないコーディネートだと思いました。ちなみに私の好きなCarrieはやっぱり50代のCarrie。これはジョークのコーディネートですが、本当に大変だったパンデミックの最中のNYという設定で、タバコを吸うのを見られたくないと変装し、変な形のサングラス、ほっかむりのようにしたスカーフ、ヴィンテージ風ピンク色のチェックのドレスに同系色のキッチンのグローブをして隠れるようにして近所をぐるぐる回ってタバコを吸うイタい様子(余計に目立っている)は爆笑ものでした。ちなみにこの動画のコメント欄は愛に溢れたサラジェシカファンで埋まっていました。あなたはアイコンです、こんな動画を待っていました、あなたがファッションについて語るのをずっと聴いていたい・・・。などなど。自身のファッションを語るサラジェシカを見て、彼女はこんな風に、さまざまな変遷を経て大輪の花が咲き切った感のある女性になっていったのか・・・、と感心する私。彼女は既に悟りの境地に向かう人になりつつあるかもしれん・・・(全ては勝手な想像の世界)。私は今のあなたの美しい佇まいが好きです。

 おまけ。前回のポスティングの後で例の東京で働く友人が、聞いて嫌だな〜って思っていた「マジか〜?」という表現を最近クライアントがいる場所で言ってしまい焦った、と言っていました。どうやらこれは以前の「マジで?」とは違うよう。本当に言葉は生き物ですね。私もネットの見過ぎで「無理ゲー」とか言ってしまいそうです。(嘘)

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