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#046 読み返してみた「新・巨人の星」


30代になってから昔読んだ漫画が無性に読みたくなる瞬間がやたら来ます。漫画に限らずゲームもです。先日ドラクエ5をスマホでプレイしました。15歳のとき初めてプレイした時、迷わずフローラを選んだ記憶がありますが、31歳の自分は迷わずビアンカを選んでいました。自分の感性の変化に驚かされました。



という前置きは置いておいて、令和の時代に無性に昭和の漫画が読みたくなり、「新・巨人の星」という作品を一気読みしました。これは、熱血野球漫画に見せかけたコメディです。読み返してみると、まあ星飛雄馬が野球に心血を注ぐのですが、一線を超えた精神論も良いなととても良い刺激になりました。全部で11巻あり、読み切るには2日ほどかかりましたが、まあまあ爽快な読後感でした。文字が多いのが特徴的ですね。



「新・巨人の星」はいうまでもなく「巨人の星」の続編でして、熱血を通り越して狂気の野球漫画です。名台詞もたくさん収集してきました。今日は個人的に心に残った名台詞を紹介していきたいと思います。



「それ相応の相手の力量を認めた時初めて勲章も与えれば私的なコネも友情美談も発動する。」(花形)


これは、花形のセリフです。

長かったのでタイトルからは省きましたが、「球界に限らずこれ全て男の世界ビジネス戦場の鉄則たる力学システムだ!」と続きます。要するに、実力や結果がなければコネや友情美談は通用しないということです。ある程度の実力を示して初めて相手は動くということですね。

星飛雄馬は、左腕で巨人軍のV9に大いに貢献したエースでしたが、左腕が再起不能になり引退を余儀なくされていました。ところが右腕で投げるという荒技に出ており、巨人の入団テストを再度受けます。

姉の明子からすると、星は往年の投手なので入団テストなどスキップして温かく巨人軍は迎えるのではないかと考えますが、星は玉拾いなど惨めな扱いを受けながらテスト生として実力をテストされる方向でプロ野球選手の第二幕をスタートさせます。

現代風にいうならば、役員まで上り詰めた社会人が、同じ会社でもう一度新卒と同じ扱いでテレアポをするようなイメージでしょうか。「まずは結果を出す。すべてはそこから始まる」という熱血なメッセージをこの花形のセリフから受け取りました。




「俺は現役時代からせっかちのせいもあって何か不安があったらまずその不安に突進しぶち当たる主義だった」(長嶋監督)


これは長嶋監督のセリフです。星飛雄馬は、スクリュースピン・スライディングで一世を風靡(悪い意味で?)します。しかし、スクリュースピン・スライディングに対抗する練習を積んだ田淵に対して技を封じられるのではないか?と不安になります。しかし、そんな星に対して長嶋監督は「迷わず不安に突進せよ」とアドバイスを贈ります。

これは、現代にも通じる考え方だなと素直に受け取りました。不安の正体をいつ突き止めるか。早い方が良いに決まっています。不安な状態を先延ばしにしても、不安は消えません。「相手を傷つけてしまったかな?」と不安に思うのであれば早く謝るに越したことはありませんし、「あそこの処理に失敗しているかもしれない」と思ったのであれば早く修正する方が良いに決まっています。

長嶋監督のアドバイスは、素晴らしいと思いました。

しかし、終始「スクリュースピン・スライディングって何??」という疑問は解決しませんでした。コマのように回転しながら相手に刺さっていくような描写でした。どう考えても身体的に無理な動きですし、もし実現できたとしてもスパイクを真っ直ぐ相手に着地させるのは非人道的な行為に違いありません。スパイクは凶器ですから。




番外編:明子泣かせすぎ問題


飛雄馬の姉、明子のことをどうしても書きたいです。「明子を誰か幸せにしてやってくれ」と思わずにはいられません。作品中明子は、常に泣いています。ここで、明子の生涯を振り返ってみましょう。令和から見た書きっぷりであえて表現してみたいと思います。

  • 父は弟星飛雄馬をすぐに引っ叩く(ちゃぶ台の食事がばら撒かれる)

  • 父は弟星飛雄馬を虐待する(大リーグ養成ギプスを強制する)

  • 父は弟星飛雄馬のプロ入り後、敵チームヤクルトのコートとなって星飛雄馬の魔球をぶちのめす

  • 弟星飛雄馬は、魔球の投げすぎで左腕を複雑骨折し、消息が不明となる

  • 明子はプロ引退後の花形とめでたく結婚する(明子の人生史で唯一の喜ばしい出来事)

  • 弟星飛雄馬と明子は5年の月日を経て花形の家にて再会するが、泊まっていくのかと思いきや謎に夜逃げされる

  • 星飛雄馬が右腕でプロの世界を挑戦する

  • 花形(夫)が再びプロの世界を挑戦する(明子とは一切の相談無し)

これらの場面で、ほとんどすべて明子は泣いています。明子は花形と結婚して金銭的な不自由さからは解放されますが、どう考えても生まれる家を間違えたとしか言いようがありませんね。




まとめ


巨人の星を読んでみて印象的だったのが、「俗っぽい人がいない」ところです。登場人物それぞれ哲学(アイデンティティ)を持っており、それを貫きます。

星飛雄馬は、プロ入り後に高級取りになりますが、銀座で遊んだりしません。巨人の星となった後もストイックにトレーニングに取り組んだり魔球の開発に勤しみます。

星一徹はさらに輪をかけてストイックです。正月に家族に顔も見せず、野球のことばかり考えています。花形という超大富豪の義理の父になり、金銭的不自由からは解放されたはずですが、相変わらず古いアパートに住み銭湯通いです。

現実世界の「俗っぽい」人であれば、野球で成功し、高級車や豪邸に住みだし、モデルやアナウンサと恋愛するある意味野球ドリーム的生活を送るような気がしますが、この「巨人の星」の登場人物にはそういった面が一才ありません。一貫性を感じるからこそ、キャラクターへの愛着もわきます。「自分のアイデンティティを大事にする」そこから習慣や結果、周囲から見たパーソナリティが生まれるということがわかった気がします。


おしまい!

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