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カケアミを72時間描き続けた話

10/7~9に和歌山県立近代美術館・博物館の野外広場で開催された屋外イベント
「WAKAYAMA COFFEE MARKET 2023」でライブペイントをしました。


KAKEAMI.1 
撮影者:ぷよ

イベント前日の17時からイベントが終わる9日の17時まで、3m×5mのキャンバスにカケアミを描き続けました。

カケアミとは、主に漫画でよく使われる技法の一つです。背景などのトーンに細かくグラデーションをつけて、繊細な奥行きや立体感を表現できます。

「万物には背景が存在する」

前提として、僕が描く作品はすべて何らかの「装置」としての役割を担わせています。
僕の作品やコンセプトを通して、各々の鑑賞者が独自に持っている記憶や価値観、偏見などを再発見してもらう
それらを辿ったり、先へ深めたりして作品に対する思い入れを各々で重ねていくことで、やっと僕の作品は完成します。

ゆくゆくは僕自身が「気づけ」のアイコンになって、僕が何を描いても全て「装置」として鑑賞者に届いてほしいなと今は考えています。

そして今回ライブペイントで描いたカケアミの集合体では「他の背景の存在を認知するための装置」をコンセプトとしています。

人間は現実で起こっている表層部分を、概ね全てだと思い込んでしまう癖があります。特に理由もなく判断を急いだり、思考をできるだけ単純化させたくなる生き物です。
それと同時に、この世の全てには過去、背景が必ず存在しており、表層だけでは語れないことがほとんどであることも事実です。

目の前の人や頭を悩ませるような状況に、因果の繋がった背景が存在していることを意識すれば、見えてくる新しい現実があるかもしれません。
突破口となる糸口が思いのほか近くにあったり、何はともあれせっかく考えるための重い臓器が頭に乗っかっているんだから、使えるものはいっぱい使えば良いと思っています。

72時間描き続けた理由

頼まれたわけではないのに過酷なミッションを勝手に課した理由はいたってシンプルで、僕みたいなどうしようもない人間は72時間描き続けるくらいしないと価値が無いと考えたからです。

根性が〜〜〜とか、超絶すごいことを〜〜〜〜とかそういうのではなく、ただ単純にイベント内の「描く」という役割を全うしたかっただけです。主催に誠意くらいは伝わればいいなと願っています。

結果的にたくさんの方からリアクションがあったり、差し入れなんかも定期的にいただいて、ライブペイント中(真夜中に照明なしで1人の時以外)ずっと温かい気持ちでした。ありがたい限りです。

気づいたこと

このライブペイントを通して
・睡眠はとったほうが良い
・体は外からも中からも温めたほうが良い
・ひとりよがりに考えて動かないほうが良い

と強く感じました。
特に3つ目は描いている最中もずっと考えていました。
「そもそも、72時間描き続ける=誠意になるのか」
「完成を見て周りの人たちが全員がっかりしたらどうしよう」
とか、根っからネガティブな人間なので、これからもしばらく反省する予定です。

別に72時間描き続けなくても気づけるようなことばかりで、大抵のことは普通に生きていれば気づけるんだなと、改めて現実と向き合うことができました。

さいごに

僕のわがままを全部自由に最後までやらせてもらえました。
主催も、スタッフも会場も音楽も美味しいご飯もコーヒーも僕を許してくれて、本当にありがとうございました。最後までとても楽しかったです。幸せでした。

同じことはまじ二度とやりたくないですが、これからも不器用なりに、自分なりにでも一生懸命目の前のことを頑張るので、どうぞよろしくお願いします。

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