持ってる日本刀、もう使わないよな(いやそれまでも使ってなかったけど)と思って骨董屋に持ち込んだ時の話

十数年前に私の中で刀剣ブームがおきて(今の刀剣ブームより先だ、時代を先取りする男だ、いやモードは私のところから起きてるのだ、モードの御守は俺のところから出てるんだわ)、古道具屋で何本か購入したのだが、家に侵入してくる不埒な者どもを退治る場面も出てこないし、床下の忍者に気付いて刺すこともなかったし、長い草鞋を履いて逃亡することもなかったので、私の日本刀の出番はなかった。たまに刀をポンポンするくらいだったが、すぐに骨董屋から、「あのポンポンはあんまりしちゃだめです。刀身が曇ります、あのポンポンはしないように」といわれて、さらになにもすることがない。一大事があればこの刀をもって馳せ参じる覚悟とか言いたかったが現代の一大事に日本刀は全く役に立たない、散弾銃の方が役に立つし、馳せ参じる対象もない。散弾銃の免許、三十代でとっておけばよかった。いまならランクアップしてライフルを撃てたのにと思う。

購入した骨董屋は店主死去で閉店してしもうた

別の刀剣商に電話をかけアポをとり、持ち込む。車のうしろには日本刀を積んである。オマワリに停められたら絶対になんか言われる。そういうときのための刀剣商アポである。証人として重要だ。

店について見せる。想像した価格の半分だったので、そうですかあ、といいながら持ち帰る。バラバラに切断してナイフにした方がいい。ナイフ材料としてならかなりいい鋼材。

帰り道、腹が減ったのでファミレスによってランチを注文する。車の中に置きっぱなしにはできないので店に持ちこむ。日本刀を横にハンバーグランチを食べる。

この店の中に日本刀を持ち込んでるやつがいるとはだれも気付いていないのだろうな、と思いながら食べ終わる。もし大暴れしたら「刀のようなものを持った男」と報道されると思う。刀だけど刀のようなものだ。

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