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福崎文吾 大盤解説も感覚破壊

福崎文吾
日本将棋連盟は関西所属の棋士でありタイトル2期経験者であることはあまり知られていない。
1959年生まれの福崎は十段、王座のタイトル獲得歴があるがあまり知られていない。

だが、
大盤解説で喋り倒してときおり一線を超えてしまうのは公然の秘密である。

それでは今日はあの谷川浩司永世名人をして「感覚を破壊された」と云わしめた福崎文吾九段について語ってみよう。

解説しない大盤解説

おりからの将棋ブームに便乗して、順位戦の大盤解説も東西の将棋会館にて頻繁に行われるようになった。
当然、お客さんは「苛烈な順位戦の行方」を目当てに将棋会館に足を運ぶ。
だがしかし、そこで待っているものは「それ以外だがそれ以上の何か」であった。

百聞は一見に如かずというから、上記動画を再生しながら読み進めてもらうことを推奨したい。

 若手棋士、女流棋士の登竜門

この日は関西将棋会館において棋士4人による大盤解説会。
個性溢れる福崎と3人の若手棋士が一堂に会して、様々な角度からA級順位戦の経過を検討するというのが本来の趣旨である。
だが福崎文吾の解説は標準仕様からして角度が130°ほど破壊されているのだ。

まずA級順位戦について触れることはほぼほぼ皆無だ。
次に若手をいじることに主眼がおかれている。
聞き手が女流棋士だった場合にはこの傾向に拍車がかかる。
セクハラ、パワハラ、何それ??知るかっっっという風情だ。
この福崎の聞き手をつとめられるようになれば、どこに行っても通用する立派な女流棋士に巣立つことができる。
はっきりいってABEMAトーナメントの聞き手なんぞはぬるま湯もぬるま湯、18℃ぐらいの井戸水である。

 1/4の福崎文吾が3/4をしゃべり倒す

この日の「大盤解説会」も福崎文吾は絶舌調。
昔話を皮切りに「公益社団法人」された日本将棋連盟について語る、語る、、語る、、、

若手へもときおり会話のパスを出すが、そのパスにはあらかじめ自分に戻ってくる猛烈スピンがかかっており会話のイニシアティブは絶対に手放さない。
4人のうちの1人であるはずの福崎が全会話の3/4以上を生産しているのだから、1人パレートの法則を地で行く展開である。



 会話は踊るされど進まず

では肝心のA級順位戦解説はどうかと言えば・・・
12分間の動画において、なんと5秒だけチラッと触れただけだ。
つまり全体の0.8パーセントが解説であり「99.2%はそれ以外」というありよう。

これが福崎文吾の感覚破壊大盤解説である。




感想戦でも逆コース

福崎文吾のサービス精神はテレビ棋戦の感想戦でも如何なく発揮される。
大方の棋士がブツブツと自分の精神世界に閉じこもり、ファンからの視点を忘却の彼方に起き忘れている。
特に負けた方は盤上の通夜状態になりがちだ。
はっきりいって、あれで給料分の仕事をしているとは言い難い。
あんな陰気臭いことをやってきたから、将棋が待てど暮らせど人気にならない。


だが、福崎文吾は違う。

負けた時こそ福崎文吾の本領は発揮される。


 石田流を指しこなす本【相振り飛車編】の奴隷

こんなことがあった。

あれは銀河戦というテレビ棋戦での話し。
若手に対し福崎九段は序盤でうまくやって優勢から勝勢を築いた。

だが終盤でポカが出て急転直下の大敗北を喫してしまう。
普通ならば落胆し通夜モードの感想戦に突入するところだ。
しかし福崎文吾は気丈に軽妙洒脱に振舞ってみせた。


「本に書いてあったから、優勢だと思った」



確かに将棋書籍に同一局面があって「先手優勢疑いなし」と書いてある。
この「本に書いてあるから、優勢だと思った」はアマチュアの常套思考停止ポイントであり、負けた時の自虐ネタの王様でもある。
それをプロが率先して使ってくれる。
こうしたところにも福崎文吾のサービス精神ないしノブレスオブリージュ意識の高さが窺える。



四間飛車穴熊 中興の祖


福崎文吾は全盛期の谷川浩司からタイトルを奪取した。
この時の得意戦法が振り飛車穴熊であり、わけても「四間飛車穴熊」を好んで用いていた。
「感覚を破壊された」
タイトルを奪われた谷川浩司が嘆いたように、福崎の穴熊感覚は当時としては独特であり、「固い・攻めてる・切れない」という穴熊の特性を早くから余すことなく活用していた。
振り飛車穴熊といえば菅井竜也、鈴木大介師匠などの名前が上がるかもしれないが、そこに至るまでの振り穴不遇の時期を支えて、振り穴の火を灯して絶やさなかった大功労者が福崎文吾なのだ。

振り飛車穴熊戦法: 軽快にバランスよく攻める 福崎文吾
2002年11月、創元社、ISBN 4-422-75084-4


このように福崎文吾は振り穴の戦術指南書も上梓している。
これが福崎九段唯一の出版物であり、
これこそ「あまり知られていないこと」の最たるものかもしれない。



名誉王座の趣味はゲームとバイクと女流棋士いじり


機会があれば関西将棋会館の大盤解説会にいってみればいい。
きっと福崎文吾が若手女流棋士をコレデモカトいじり倒しているから。
福崎だけはセクハラコンプライアンスが適用されない大盤前治外法権だといっても過言ではない。

ほぼほぼ将棋の解説はしないから、「観る将」にとってもきっと有意義な時間になるはずだ。

福崎九段は、
「王座」という言葉に過敏に反応するから、会話タグとして「王座」を忍ばせて関西将棋会館に出向いてはどうだろうか。

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