ミート・グッバイ/別れの矜持/長嶋茂雄
ミスターベースボールこと長嶋茂雄。
ミスターと略され親しまれるプロ野球の偉人だ。
今日は長嶋茂雄の当意即妙を語る上で外せない逸話を紹介しよう。
徹底マーク
ミスターは鳴物入りで読売巨人軍に入団し、その力を余すところなく発揮。
1年目から、セカンドベースを踏み忘れホームラン取り消しにならなかったらば三冠独占という奇業を成し遂げた。
当然、それだけの打棒であるからして相手チームからのマークも苛烈を極めた。
アクシデント
ある試合でそれは起こった。
徹底マークにつぐ徹底マーク、あたかも次々と虎の穴から送られてくる刺客のように、凄まじいラフプレーが長嶋選手に襲いかかり続けていたのだ。
ついに、
長嶋選手の体が悲鳴をあげた。
それまでの疲労と疲弊、そして隠していた傷が一気に噴出したのだ。
グラウンドに膝から崩れ落ちるミスターベースボール。
苦悶の表情を浮かべ、足を引き摺りながら何とかベンチに下がっていくミスター。
その光景を、球場が固唾を飲んで見守った。
だが球場の願い虚しく、ミスターベースボールはその試合に帰って来ることはなかった。
メディアの内在的論理
試合後、ミスターの状態をかぎつけるべくメディアは総出で巨人のベンチを取り囲んだ。
ミスターベースボールは既にプロ野球の至宝であり、今でいうレジェンドの地位を若くして確固たるものにしていたのだ。
メディアという虎の穴
ベンチから出てきたミスターはやはり足を引き摺っている。
それを見た記者連中は、鬼の首取ったりという気持ちを表向きはかき消しながら、
ミスターにフラッシュもろとも問いを光らせた。
「ミスター、、、怪我の具合はどうですか????」
最大公約数的な問いはこうであった。
苦悶の表情で、ミスターは足を運ぶ。
あたかもモーゼのように記者たちの間に道が拓け、ミスターはそこを威風堂々と歩む。
「ミスター、怪我の具合はどうですか????」
「何か一言、云ってくれ?????」
情け容赦のない問いが、日本プロ野球のモーゼに浴びせられる。
Meat Goodbye
ベンチ裏に入る寸前、
フト、天を仰ぎ、、ミスターが立ち止まる。
そして、、背中でこう云った、、、、
「ミート・グッバイ」
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