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『あなたが好きなあなたになる』には能動的に行動しなければならないプレッシャーがついてくるのか。

コミュニティに関わり、自分が運営をするようになって5年以上が経とうとしています。メインで活動をしているのは『コルクラボ』というコミュニティで、そこではコミュニティ運営のノウハウについて考えているのですが、最近、考え方に変化が起こりそうな出来事があったのでメモしておきます。

コミュニティ運営の指針『あなたが好きなあなたになる』について

こちらはコルクラボのキャッチコピーです。メンバーと何回もワークショップを重ねて、自分たちの居場所のありたい姿について考えて生まれた言葉なのですが、僕、これ大好きなんです。自分のことがもっと好きになれる、そのためのきっかけをもらう場としてサードプレイスを作っていけたら良いなと思っているんですね。

過去には『あなたが好きなあなたになる』ためにどんな要素があるといいか、整理もしてました。

しかしですねぇ、ここんとこ仲間と話をしていて指摘をもらうんですよ。『学び』というワードへの違和感。あなたが好きなあなたになるためには、学ばなければならないのかぁ…』『私は学びたくて所属し続けているわけではない』という声。なんだかわかる。そりゃ動いたり挑戦したりという経験は少なからず自身への刺激を与えるきっかけにはなるのだけれど、能動的に行わなければならないのであれば、心理的負担が発生しそうです。

お勉強コミュニティと言われたらちょっと違うよなぁ、気づきコミュニティと言われても気持ち悪いよなぁ、所属しているひとは何か行動しなければならない、というのも違うしなぁと感じていたんですね。

そこで僕の組織運営研究テーマには、能動性・受動性の壁を明らかにしようというものがあるのですが、ここからは最近得られたヒントについて書いていきます。

ヒント①世界最高の学習環境、ミネルバの学びに関する概念

僕は、学び、気づき、について考えを深めたいと思い、学問の世界にヒントを求めたのですが、ミネルバ大学コスリン教授の『学習の科学(2017)』の論文に出会うことができました。英語で書かれているので細かいニュアンスはこれから深めたいのですが、ここにヒントがありました。

論文によると、学ぶこと(learning)は単なる情報の獲得と定義し、覚えること(memory)を記憶から取り出して活用するプロセスと位置付けて、セットで考えるように述べられています。また学習には科学的な原則(principals)があり、うまく使うことで「学生が意図しなくても学びは生まれる」「経験によってより深く身につけられる」「異なる文脈や場面で使うことができるようになる」とも述べられていました。

学習への科学的な原則については機会があれば改めて触れますが、大事なのは学びは本人の能動性に関係なく、仕組みで生み出すことが可能だというんですね。であれば運営する側の工夫で、メンバーは学んでいる実感がなくても何かに気づき、知識を得て、行動することができるということです。学びという言葉自体の使い方や意味も見直していくきっかけになりました。

それらを踏まえて考えると『あなたが好きなあなたになる』の『なる』に含まれる能動性プレッシャーみたいなものは、本来感じる必要がないのかもしれないということです。無理して何かをやろうと思わなくても、この場にいて乗っかっていればあなたが好きなあなたでいられる、そんな場づくりが可能だと思ったのでした。とはいえ、言葉の持つ意味を揃えていくことはもっと難しいな。整理するのはこれからかな…。

そういえば、オーガニックラーニングという言葉もあった。関係するので合わせて考えていきたいところ。

ヒント②『あなたが好きなあなたで『いる』』という考えはどうか?という一言

改めて、仲間とディスカッションをしたのですが、そこでたまたま出た意見があって、『あなたが好きなあなたでいる』でもいいのでは?というもの。自分は行動しなくても、自分の内側に好きな自分がいるのではないか、それを掘り起こしていこうと考えることができます。『なる』から感じられる能動性プレッシャーが取り除かれそうですよね。もしかしたら居心地の良い言葉かもなぁと思ったのです。

『いる』については場に対するベースの信頼関係があってこそのものなので、ひとによっては不安定な状態だと感じられる可能性もあります。これは考え出すと固有の難しさもありますが、キャッチコピーを更新する議論のきっかけになるかもしれません。

外からきっかけをもらうことも内からきっかけをもらうことも、実は裏表でつながっているような気もします。こうやってひとつずつ言葉を掘りながら、場づくりについて考えていくことを続けていきたいと思ったのでした。

今回は結論ぽい結論はなく、気づいたことのメモになってしまいましたが、また思考の整理が進んだら更新しようと思います。

読んで下さりありがとうございました!
(写真は、インド。デリーにて)

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