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【報告】社寺林の観察会、キノコの観察会、虫の観察会(自然環境部会)

社寺林の観察会(6月18日)

日時:6月18日(土)9:30-12:00、参加者:16名、講師:稗島英憲氏・山中和郎氏

 喜多院、中院は寺院として古刹で由緒ある立派なものですが、樹木や草本など自然に目を向けると、またすばらしいものがあります。喜多院には歴史を彷彿とさせる樹木があり、中院は「花の寺」といわれるほど多様な花木があります。コロナ禍の中、参加者人数を少なくして、感染対策を講じたうえで実施いたしました。2つのグループに分かれ、Aグループは喜多院から出発です。ここで有名な木は天海僧正お手植えといわれるコウヤマキでしょうか。樹齢は300年を超えます。川越では珍しいと言われるアカガシが数本、幹の中が空洞になりながらも懸命に葉を広げています。講師の山中氏が空洞になったわけを参加者に聞きます。雷か、虫食いか、中心部が欠落しても側の維管束で樹木は生きていける。樹木の組織の話を聞く。アカガシは準絶滅危惧(NT)で、樹木のRD種は川越ではとても少ないです。

空洞になったアカガシ(喜多院)

 社寺林には仏教に縁のある木もありますが、ケヤキ、ムクノキ、クスノキ、アラカシ、スダジイ等古くから生育してきた大径木もあります。森林性や樹洞を利用するチョウゲンボウ、アオバズクなどの生物も、それにより守られてきているのだと改めて喜多院の「鎮守の森」のすばらしさを認識しました。

 次は中院です。アカマツの変異種である多行松のユニークな樹形と磨かれた幹の赤さに感心しながら歩を進めると、足元に黄色いじゅうたんが拡がります。見上げてみると楽しみにしていたモクゲンジの花が樹木全体を覆うように咲き、梅雨空の下ひときわ黄色く鮮やかです。この観察会を6月に行うのは、モクゲンジの鮮やかな花を見ていただきたいためです。秋には黒い実ができて数珠に使われるそうで、お寺によく植えてある理由かもしれません。島崎藤村由来の茶室「不染亭」、「狭山茶発祥の地」の石碑などがあり、寺院とは別の顔も見られます。

モクゲンジの花を 見上げる(中院)

キノコの観察会(7月10日)

日時:7月10日(日)9:30-12:00、場所:「(仮称) 川越市森林公園」計画地、川越南文化会館(ジョイフル)、参加者:19名・スタッフ4名、講師:稗島英憲氏・高杉茂氏

 この夏は6月25日ころから連日35℃以上の猛暑が続き、6月27日には観測史上最短の梅雨明けとなりました。このような異常気象の中で水分の欲しいキノコは大変です。下見に行ってもキノコはほとんど出ていません。観察会当日もお日様がまぶしいほどの好天で、小さなお子さんもみんなで目を皿のようにして探しました。そうすると少しずつ草の下から見つかり始めます。チチタケはきずをつけると乳液が出てきます。「いい匂い、きのこの匂いがする」と見つけた方、これが旨みの成分です。ツルタケ、ツチカブリ、アミスギタケなどが見つかりましたが、イグチの仲間は例年たくさんあるのにほとんど出ていませんでした。「変なものがある!」と女性の声。行ってみるとコナラの幹に肉まんを張り付けたようなキノコが大小4個も。講師の方も初めて見たとのことで宿題になりました(後日、専門家の鑑定でヒラフスベらしいと)。

このキノコ、 何ですか?
肉まんが張り付いたようなキノコ

 別の場所に移動すると、マツに栗のようなキノコがついています。ヒトクチタケで、中に特定の昆虫が入り込んで胞子を拡散します。サワフタギタケが、枯れた木にもこもこと発生しています。弱った樹木にキノコが付き、木を徐々に分解していき、やがて自然に還します。このようなキノコは腐生菌と呼ばれ、自然界で最終分解者の役目をしています。

 ひとしきり森の中でキノコ探しをして、室内に持ち帰り鑑定です。例年の半分くらいでしたが、じっくり見ることができました。また、変形菌(粘菌とも)を採取してきた方がおられ、こちらもルーペで見て自然界の不思議な世界に話が盛り上がりました。この日はキノコだけでない植物や虫たちとの出会いも多くありました。小さなお子さん方も飽きることなく、動き回って楽しんでいた様子です。

今日見つけたキノコ

虫の観察会(7月30日)

日時:7月30日(土)9:30-12:00、場所:「(仮称) 川越市森林公園」計画地、参加者:応募参加者22名・スタッフ8名、講師:佐々木英世氏(埼玉昆虫談話会)

 今年の夏は例年にも増して「異常」が際立っていました。6月下旬に早々と梅雨明けして猛暑の日々が続き、やがて戻り梅雨のような蒸し暑い日々の7月。そして新型コロナウイルス感染者数の急増です。このような中での開催でしたが、応募した方が全員出席され、最年少はママにおぶわれた1歳の坊やから70代の方まで、家族連れの方が多かったです。室内で課長の挨拶や講師の紹介の後、網や虫かごをもって林に向かいます。

 最初に草原でバッタの仲間をたくさん見つけました。ショウリョウバッタ、カマキリなどは小さくて、まだ子どもです。アカハネナガウンカもいて、「えーっ、おもしろい顔!」とみなさん感動の様子。次いで、林の中に入るとちょっと涼しくて風も通り「気持ちいい。」の声が。樹林の中では甲虫の仲間が見つかります。シラカシにカブトムシがいました。カブトムシやクワガタの頭だけになったのがたくさん残されています。どうやらカラスの仕業らしいです。それを触っていた小学生の女の子が「アーッ!」と声をあげ、周りに人が集まってきました。ノコギリクワガタの頭だけになったのを触ったら指を挟まれたのです。腹や胸を食われても、頭部はまだ生きていたのです。講師の説明では「昆虫は脳を3か所にもっている。」とのこと。これは参加者のみなさんにも衝撃的な現象だったみたいです。

アカハネナガウンカ

 ちびっ子たちも虫を捕まえては講師、スタッフに問いかけ、親御さんたちも積極的に参加されて、集中力の切れない観察会でした。この日、観察した種は甲虫15種、カメムシ9種、チョウ6種、バッタ9種、トンボ2種、ハチ4種 その他クモ類、トカゲの類など45種ほどでした。

これ、なんですか?

(3題ともに報告 賀登環)

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