2018年11月27日 8回目のこんにちは
土屋さんの裁判で、2審(=控訴審。東京高等裁判所)代理人を務めたわたなべ先生の取材を終えた後、私はその足で拘置所に向かい、土屋さんと面会を果たした。
4番面会室
どんな格好をしていたか、すっかり忘れてしまった。今日は少し表情が明るい気がしたのだ。それに気を取られてか、もしくはいつものラフな格好が馴染みすぎてか、どんな服装だったか覚えていない。
そんなことより、土屋さんは入室して立ったまま着席せず、その様子に私は少し戸惑った。何か言いたげなのだ。私は言葉を待った。
「メッセージカード届きました。ありがとうございます。」
私が送ったバースデーカードのことだ。11月の彼の誕生日に合わせて送付していた。
連休を挟んでいたこともあり、誕生日の翌日か翌々日に手元に届いたと報告してくれた。遅れてしまったことを詫びると、土屋さんは
「当日届かなかったですけど、嬉しかったです。」
と笑みを見せた。
土屋さんは続けた。
「入れ違いましたけど、昨日、絵を送りました」
夏の終わり頃から依頼していた、桜の絵が完成したそうだ。
「見本にしたものに比べると見劣るものがある」と、不安げな表情を浮かべた。出来上がるまでの過程や、完成までの苦労を聞かせてくれた。
私は絵の到着を楽しみにしていることを伝えた。
取材報告
話題はこの日の取材報告へ。
事務所の雰囲気や、わたなべ先生の印象などを簡単に話した。土屋さんは静かに聞いていた。
「次は最高裁の先生の事務所を訪ねてみます」という旨を伝え、面会を終えた。
※12月に突入してから、私は年末の引越しに向けて身の回りの片付けに追われ、加えて、かなり私事だが家族内で喧嘩が絶えず、その日々に疲弊してしまい、この日の取材を最後に心忙しない時を過ごしていた。そのため当時の詳細が思いだせず、これ以上の事が書けなかったことを申し添える。
ひとりごと
バースデーカードを受け取った土屋さんは、
「嬉しかったです」と微笑んだ。
彼の笑顔を見たのは、7月11日の面会時に見せたとき以来、2回目である。初めて対面した時より随分、表情が自然と柔らかくなってきた気がする。
無表情を貫き、冷たい視線を向けてきた始めの頃の土屋さんとはまるで別人だ。
ただ、「はじめまして」を交わしてから今までも、ずっと変わらないのは、土屋さんは極悪人でもモンスターでもなく、ひとりの血の通った人間だということである。
なぜ私の目の前に居る彼が、凶悪でもなく残忍でもないのか。凶悪で残忍でいてくれたなら、人の命を奪う死刑制度に対する考えや意見は、私の中で既に固まっていたはずだ。こんなにも、人の命を奪うことに対して逡巡し、悶々とすることなどなかっただろうに。
土屋さん。私は、あなたが凶悪で残忍で、更生の余地のない程の極悪人であってほしかった。
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