【令和4(2022)年6月21日 加筆版】
ごきげんよう。
今回は、以前に投稿した記事の続編的なお話をしようと思います。
こちらの記事は、神社参拝時における電子マネー使用に関するお話でしたが、今回はインターネットを利用したオンライン上での電子マネー問題。
神社とは無関係の神社情報系新設ウェブサイトによるオンラインお賽銭代行騒動についてのお話をしようと思います。
【追記(令和4(2022)年1月)】
令和4(2022)年1月現在。
神社情報系ウェブサイト「カミムスビ」は閉鎖。
同Twitterアカウントも削除されています。
あらかじめサイト閉鎖・リンク切れを見越して内容の写真・サイト内記事文をコピペして掲載しておりますので、当時の騒動の内容は把握できると思います。よろしければご一読くださいませ。
はじめに
昨年から、各々の神社様でも新型コロナ禍中の臨時対応として、インターネット上でのオンライン御祈祷(おはらい)や、祭典(お祭)のライブ配信などが全国的に実施されていくなか、今月に入りまして「一般社団法人 神社を守る会」が今年5月に開設しました、神社情報系ウェブサイト「カミムスビ」にて、サイトが紹介している各神社様の項目にて、お賽銭をクレジットカード決済で入金する機能を設けた事案が発生して一騒動起きました。
神社で助勤奉仕をしている者としては、見過ごすことのできない問題なので、この件についてまとめてみる事といたしました。
こちらの騒動については、7月にネット内で騒がれたばかりの出来事なので、ご存知な方は多いかと思います。
ご存知ない方もいらっしゃるかと思いますので、まずは「ねとらぼ」Webサイトによる、こちらの記事を添附いたします。
この件で何が問題なのかを申しあげますと、
カミムスビサイト運営側が事前に神社本庁に相談をした際、本庁側から金銭の収受を伴う機能は控える(やめる)よう回答されていたにも関わらず、後日に運営側が各神社へお賽銭を奉納しに行くという宣伝をした代行システムを設け、全国各神社に許可を取ること無く、掲載した各神社にオンライン上で、クレジットカード決済で入金できる「お賽銭」と称する機能を無断で設けたこと。
また、SNS上で炎上騒動が起きた後に、問題となった「カミムスビ」Webサイトを運営する一般社団法人の登記上の住所が、団体側が無関係者だと主張する家屋で、登記先住所を訪問しても対応することができないとの告知後、家主に迷惑が掛かると言う理由で登記変更手続きを行い、次の登記変更先住所についてもバーチャルオフィスと称していることが明らかとなったことから、より疑惑を深める結果となってしまっております。
騒動後日、サイト運営団体は、神社本庁へ訪問して謝罪と説明をしたのち、サイト内にて今回の経緯についての説明されました。現在もサイトは存続していることから、今後サイト運営をどのようにされていくのか、というところが注目されていくのだと思います。
そして、令和3(2021)年7月26日付の「神社新報」新聞にて、論説「 賽銭の電子決済 杜撰な運営と今後の課題」記事が掲載されました。
サイト運営の流れ
「カミムスビ」Webサイト運営の流れについて整理をしようと思います。
【写真はパソコン画面より(撮影:筆者)】
(『カミムスビ』Webサイトの「お知らせ欄」を撮影)
顛末を時系列で並べてみました。
↓
令和3(2021)年7日14日以降サイト沈黙。
↓
7月26日
「神社新報」新聞 論説を掲載。
という流れで、オンラインお賽銭を開始して17日後には停止となりました。
「神社を守る会」の活動プロジェクトについて
一般社団法人 神社を守る会は、「カミムスビプロジェクト」と称するオンラインプロジェクトのPDFを公開しております。リンク
その内容の一部を以下に添附します。
現在多く神社が経済的に苦しい状況に立たされいるので、日本全国にある神社を守っていくテクノロジーによって繋がる新しい神社のカタチとして「カミムスビプロジェクト」を立ち上げ、公益社団法人認定を推進して寄付控除対象となることで、寄進・奉納の拡大に尽力。神社を取り巻く問題の具体的解決策を提供する。
「カミムスビ プロジェクト」PDF より引用(コピペ)
と以上のような説明がなされております。
また、カミムスビサイト内の説明を拝見しますと
と述べられております。
お賽銭について
ここで、お賽銭についてのご説明をしようと思います。
まずは、『神道事典』より、お賽銭についての引用をいたします。
昔のお賽銭は、お米を撒く(散米)・お供えをしていたとのことですが、この散米とはどういう意味合いでなされていたのでしょうか。
以上を踏まえますと、個々人が祈願した内容が成就した際に、その御礼としてお供え物を献じたことからはじまり、そのお供え物は、お米からはじまって、のちに貨幣経済へと変化したことにより貨幣へと変わり、現在では祈願・崇敬の表現として、参拝時に金銭を納めるようになっていったことがわかります。
そういった意味では、お賽銭とは、神仏と個人との間において生じる行為であり、他者が間を介してお賽銭を斡旋するという行為はタブーであるといえると思います。
また、お賽銭を納める行為は、神社や寺院に直接参拝をして当人が納めるということが常識であるため、インターネット上における電子マネー決済のお賽銭奉納については、各宗教法人が慎重になっていることが理解できると思いますし、オンライン上におけるバーチャル参拝を設けている前衛的な神社においても、電子マネー決済によるお賽銭システムは設けられてはおりません。
【追記(令和4(2022)年6月21日)】
令和4(2022)年6月現在、ごく一部の神社公式ホームページにて、
J-Coin Payを利用してお賽銭の奉納ができる機能を設けられているところがございます。
また、クレジットカード決済にてオンラインによる御祈祷のお申し込み、
オンライン授与所が開設されまして、おふだ・お守りなどの授与がなされております。
さいごに
さいごに、以上を踏まえての個人的意見を申し上げます。
多く神社様が経済的に苦しい状況に立たされているというお話は事実でありますし、おっしゃられている内容も理解できますが、神道系大卒・有神職資格の元神社助勤奉仕者からすると、文言が一定していない、お賽銭など奉納金が絡む行為の本義について理解されているようには見受けられない点、神社本庁側の回答を無視・強行してオンラインお賽銭機能を無断で設けたことなどから、神社神道の内情、宗教法人・宗教法人法については明るくなく、一般的ベンチャー企業ビジネス的視点による計画であることは否めず、問題点・実現不能点は多く、こちらでは述べませんが、指摘点は多々あります。
また、神社界と民間とでは常識が異なる点がありますので、神社界とは直接の関係がない一社団法人のみでこれらを実行することは至難なプロジェクトであると思いますし、聞こえはよいけれど、収益目的なのではないかという邪推をすることも出来てしまいます。
また、神社本庁との話し合いの席にて、今後の活動において、代理斡旋、金銭受け渡しなどが絡む機能については、実装しないこととする約束をされたとのことですが、以下のプロジェクト説明書PDFを拝見しますと「月額会員制」とクラウドファウンディングを利用しての「クラウド奉納」と称するシステムは、現時点においても進めていくと考えられているように見受けられるのですが、こちらについては、今後どのようにされていくおつもりなのか、気になるところでございます。
また、これらのことを本気で非営利で実現させようとするのであれば、神社本庁、全国各神社庁との連携を密にして、全国各神社への連絡網を設けなければ、実現不能なプロジェクトであることは断言できます。言うは易し行うは難しです。
ですが、今回の騒動により、神社界からの信用を失う結果となってしまったので、今後の活動は難しいと思っております。
また、こちらの「ねとらぼ」の記事によると「今回サイトが話題になってから2件だけ利用があったとのこと」と述べられておりますが、この2件の奉納金についてはどのようにされたのかについては、今のところ説明がなされていないので、どうされたのかが気になるところです。
とにかく、重大事になる前に停止になってよかったと思っております。
【追記2 (令和4(2022)年1月)】
雑誌『宗教問題 36』(合同会社宗教問題、2021年11月30日発行)
令和3(2021)年秋季号での、ルポライター・古川 琢也氏による記事「宗教界を浸食するIT企業たち ― ルポ・葬儀費公開、デジタル賽銭、お焚き上げ代行の“騒動現場”」によると、古川氏は令和3(2021)年10月下旬に「神社を守る会」の理事の1人(登記簿では理事は3名)の自宅を訪問して取材。その数日後には『カミムスビ』サイトは完全に消滅していた。とのことです。
また、上記で述べた2件の奉納金については、奉納金が1万円に達した段階で実施する計画だったので、実際に神社に届けられなかったとのことです。
その後、神社側の許可なく一方的に郵送してお焚き上げしてもらう。という宣伝をする「株式会社ハッピーズ」が運営していた『あんしんお焚き上げ』ウェブサイトも発見されて炎上直後、なんの説明も謝罪もなく閉鎖するの現象が起きたのを拝見すると、「神社を守る会」運営の『カミムスビ』サイトは、逃げずにキチンと説明と謝罪をされており、神社を守りたいという明確な目的を掲げて法人を立ち上げて、神社本庁とコンタクトを取って話を進めておりましたので、開設を急がず慎重かつ丁寧に神社本庁と連携しながら事業を進めていれば、新しい支援ネットワークが構築ができたのではないだろうか…と個人的に思うので、とても残念に思います…
お話は以上となります。
ご拝読ありがとうございました。拝