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人はなぜ「ガシャ」を回すのか?


日本はソシャゲ大国!

日常生活にスマートフォンが普及するとともに、スマートフォン上で遊ぶことができるゲームも普及しています。

日本のモバイルゲーム市場規模は世界で3番目に大きく、ゲーム内課金もすでに一般化しています。
消費者庁が2022年3月に開催したインターネット消費者取引連絡会での資料「オンラインゲームの動向整理」で示された調査結果では、

1か月あたりの平均課金額は1,000円未満が42.1%、1,000円~5,000円未満が34.8%。1万円以上は10.8%。
最も多くの金額を課金したゲームでの課金総額は1,000円未満が17.1%、 1,000円~5,000円未満が27.1%、1万円~10万円未満が29.0%、10万円以上が10.6%。

と、毎月数千円を使うユーザーが大半ですが、約1割のユーザーは、毎月1万円以上をゲームへの課金に使っているようです。
一体、なぜ人々は、多額のお金を回してまで「ガシャ」を回すのでしょうか?課金する人としない人は何が違うのでしょうか。

「ガシャ」への課金をする理由を研究している事例について、国内1件、国外3件の研究を紹介し考察を行った論文、加地雄一『課金ガチャの心理学』,教育学論集62号,(2020)*から、紹介します。

★事例1 最初は少額だけだったのに気づけば・・・

1つ目の事例は「少額取引」、「サンクコスト」です。

「少額取引」について、ガシャ1回の金額は300円程度であり、1回くらいなら少額だし引いてもいいかなという気持ちにさせます。少額で課金できる仕掛けが、課金のハードルを低くしているのかもしれません。

また、「サンクコスト」とは、投資すると後に引けなくなる現象のことで、課金しても欲しいアイテムやキャラクターが出ない場合、これだけ投資したからもう少し引けばでるかもしれないという後には引けない心理が働きます。

最初は少ししかガシャを回さないつもりが、あと少し引けば出るかもしれないという気持ちや流石にこれだけ回したのだから出さなければ、という気持ちが湧いて、欲しいアイテムやキャラクターが出るまでガシャに課金するケースです。
ちょっとだけの繰り返しで身を持ち崩すほど賭け事に嵌ってしまう心理と同じですね。

★事例2 スリルやコレクション、ガシャを回したい!

もう一つ、課金する動機があってガシャをするパターンです。
論文内では、海外で行われた研究から、動機として、

  • ゲームを有利にプレイするため

  • 特定のアイテムやキャラクターを獲得したり、コレクションしたりするため

  • ガシャを回すことそれ自体の楽しさ、興奮、スリルのため

  • キャラクターなどの外見をよくするため

が挙げられています。ゲームを有利に進めたり、キャラクターやアイテムをコレクションするためにガシャを引いている人が多いことがわかります。

そして、「ガシャ」を回すことそのものが目的=動機となっているパターンもあります。
何が当たるかわからないワクワクや、ドキドキを求めてガシャを回す人もいます。高レアが当たった時の演出が出た時の高揚感や何が引けたのか期待する気持ちを一度味わってしまうともう一度同じ気持ちを味わいたくなり何度もガシャを回してしまう気持ちは、よく判ります。

また、ゲーマー間での社会的な承認が課金の動機となっていると考察もあります。

画像は「ソーシャルゲームでオンラインガシャを回す日本のコミュニケーション」
というプロンプトでAI生成したものです

SNSでのガシャ結果報告がうれしい!「おはガチャ」とか

実際に、ガシャ結果をTwitter(Xというけど、私は、こう呼びます。)などのSNSにアップする人も多いです。
ガシャをまわす目的には、お目当てのキャラクターやアイテムを手に入れるという本来の目的のほかにもその結果をSNSで投稿し反応をもらうことも楽しみの一つになっています。

私の使っているソーシャルゲームでは、1日1回だけ楽しめるガシャが人気です。
毎日お得に回せるガシャがあり、ほとんどの人がその日の運をかけて朝に回すことから、おはようのガシャ、略して「おはガシャ」と呼ばれています。

朝、ソーシャルゲームで「おはガシャを回してみた」と自分がプレイしたことをSNSで伝えて、楽しみ「おはガシャでこんなキャラクターがでた!」と画像を添えて趣味仲間に報告します。
「ガシャ」がコミュニケーションツールになっているんですね。

節度をもって楽しく推し活!

ガシャを回す理由には、少額でまわせたり、あるいはキャンペーンで 無料で回せたりするゲームの仕組みによって、もっともっとと、「ガシャ」をまわしたくなる消費者の心理が大きく存在しています。

また、ただ好きなキャラクターやアイテムを手に入れるだけではなく、先述したように、ガシャ結果によるSNSでの交流も楽しみにしている人も多いと思います。  
私も、推しである「あんさんぶるスターズ」の天城一彩が「ガシャ」の中に、レア度が高いカードで登場したらすぐに引いてしまいます。さすがに課金しすぎると破産してしまうので、楽しめる範囲で節度を持って”推し活”していこうと思います! 

*加地雄一『課金ガチャの心理学』2020は、中央大学の学術リポジトリ(リンクはこちら)から読むことができます。


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